目次
ブックマーク
応援する
いいね!
コメント
シェア
通報

第30話 野菜動物園

 鈴木とは途中で別れて、俺たちはどうにかこうにか野菜動物園へたどり着くことができた。


 玉ねぎがウサギのように飛び回り、人みたいな名前をしている人参が荒野を駆けている。


 そんな様子を車の中で眺めていた。野菜版サファリパークである。


「平和ですねぇ」


「そうだなぁ……」


「僕、ブロッコリー。助けて」


 ブロッコリーがライオンに捕食されかけてる。平和とは……?


「ブロッコリーが喋りましたねぇ」


 前々から思っていたが、着眼点がおかしいだろ。普通捕食されてることにツッコミ入れるだろうに。


 いちいち指摘しててはこの世界じゃ生きられない。話合わせようと思った。


「人参に至っては人みたいな名前してるぞ」


「あっ、飛行機通りましたね!」


「そうだねぇ……」


 てかあれ? 会話が弾まないな? どうしてだろう。相槌しかしてないからか?


 こんな時、前の彼女とはどんな会話してたっけ。


 ていうか、五月と彼女彼氏な関係になったのにイチャイチャしてなくね?


 前までの関係とそれほど変わらない気がする。


 しまったかなぁ。野菜動物園行くべきじゃあなかったかもしれない。ていうか野菜動物園ってなんだよ。意味わかんねえよ。


「野菜を解放しろー!」


 野菜動物園の外ではホルモンを中心に野菜人権団体が抗議してるしよ。どうなってんだよこの世界。


 まあいい。俺は五月と付き合うことができた男だ。些細なことは水に流そう。


「この風景。チックロックに流せばバズりそうですねぇ」


 俺の敵はカップルクラッシャーと寝取り魔と純愛過激派と五月親衛隊だ。そいつらさえなんとかできればって。


 あれ、なんか身内ばっかり敵居るな。



         ◇



◇Qなぜ寝取り魔に?


「NTRしか味わえない栄養があるからっすかね」


◇NTRしたあとどうしますか?


「NTRしたあとの娘には興味ないんで、捨てますっすね」



 ……なんだあれは?


 ナレーションが質問して、田中がそれに答えている姿が見える。これは幻覚か?


 いや違う。現実だ!


 最悪だ。最もバレたくない奴がよりにもよって目の前にいる。


 アイツに彼女とデート中ということがバレたらいよいよ終わりだ。あっという間にカップルクラッシュされたあとNTRてしまうだろう。


 かくなる上は先手必勝。記憶を消してしまえば……


「お困りのようねいい身体をしている小坂一樹!」


 こいつはいつぞやの、侍風の格好をしたオカマ!


 しかも今回は裸体だぁぁぁ!


「テメェ、名前知らんけど汚ねえ汚物五月に向けるんじゃあねぇ!」


「あたしは五月親衛隊の穏健派、マリオ•重国。拙者は五月ちゃんのカップルを応援しているの。今度いい男紹介してほしいで候」


「キャラがブレブレです。せめて一人称統一しましょう?」


「あらやだあたし、五月ちゃんに認知されちゃったわ。あたしはいとおかし」


『あたし』で一人称統一するつもりだ。この侍風の裸体オカマ。


「二人の邪魔はさせないわ。行きなさい若者よ!」


 ええっ。なんなんコイツ。


「よく分からないですけど、ありがとうございます。裸族の人」


◇小坂一樹の戦いは始まったばかりだ。頑張れ小坂一樹!





この作品に、最初のコメントを書いてみませんか?