どうやら俺はメンヘラな女の子を好きになる星のもとで生まれてきたらしい。
というのも、今まで付き合ってきた子達はみんなメンヘラだったからだ。
現在付き合っている五十嵐五月だって、紆余曲折あって同棲する事になったメンヘラだし。
五月は五月で、別角度のヤバさを持っているよな。
「一樹くん、私はあなたを信用してますから」
そんな五月。最近はメンヘラ要素薄くなって、信用云々を言うようになった。なにかあったのだろうか?
◇
メンヘラといえば秋風三桜が脱獄したらしい。
秋風三桜。五月以上のメンヘラにして、ヤバい女。十人殺害している殺人鬼。さらに平気で人の急所を的確に突いてくるモンスター。以上。
警察はなんたる醜態を晒してるんだと、最初思った。警察が聞いて呆れる。
これで三桜は俺を再度、狙ってくるだろう。なにもなく捕まってくれればいいのだが……
「あっ」
「えっ」
「一樹!」
そう思ってたらばったり出くわしてしまった。誰だよフラグ立てた奴。
三桜は例の如く捲し立て始めた。
「私ね、たっくさん人殺してたからね、最低でも無期懲役でほぼほぼ死刑が確定してたの。だから逃げた。一樹と再会するために空き家に潜伏したり、金品奪いながら食い繋いできた。また会えて嬉しい。一樹、私と心中しよう!」
「お前、脱獄や窃盗まで罪を重ねて……死刑になるぞマジで」
「日本の司法だと複数人殺害は死刑か無期懲役なのだから、今さら罪を重ねても些細なことじゃない?」
「たしかに。それなら今さらか」
「納得しないでください! 流石にこの論理はおかしいですよ!」
◇
「私が捕まる前に心中しよう! 飛び降りか、入水か、練炭か。どれにする!」
やっかいなことになった。これからまた三桜に狙われる。また恐怖に怯えなきゃいけないのかと絶望した。
「あの方と随分仲がよろしいようですね」
しかも五月がジト目をしながら脇腹を強めに突いてくる。
「違う。コイツは五月以上のメンヘラにして、心中くるいのストーカーだ」
「一樹くんがそう言うならそうなのでしょう。信頼します」
今日の五月はなんか変だ。さっきから信用、信頼とか言ってくる。誰かに入知恵されたのかな?
「コイツは良くいうとサイコパス。悪く言うと連続殺人犯」
「昼ドラですか!?」
「誰かと思ったら今話題の五十嵐五月じゃん。猫被り女。ケッ!」
「猫被り……?」
三桜は五月を見て、どんどん言い募っていく。
「結局、男って五十嵐五月みたいにちょっと守りたい系の人が好きでしょ? あんまり自信が無いから、経験少なそうで自分のこと拒否しなさそうな女が好きじゃん? 色々教えてあげたーいとか、貢ぎたーいとか言って自分が努力もせずに上位に立てそうな感じのさぁ」
コイツ、刑務所生活経験したからか相当やさぐれてるなぁ。言ってること自体は否定出来んけど。
「ああ……そうなんですかね?」
今までの鬱憤を晴らすが如く、三桜は捲し立て始めた。
「女の子の間では嫌われてるよアンタ。嫌われるタイプでもあるし。はーっ、つっかえ。とりあえず一樹と別れてよ。アンタじゃ一樹を幸せに出来ないから」
「おい。確かに五月は、女の子に嫌われそうな貢がれ体質だし、おじさんとか五月親衛隊はべらせかせているみたいで、俺自身良い思いはしてないけど、あんまりな言い分なんじゃあないか三桜」
随分と言われた五月はズーンと落ち込んでいた。庇護欲が湧くなぁ。
ただ、三桜の言い分もまた事実なのだ。まあ、聖人君子でもアンチは湧くし気にしなくてもいいと思うが。
それを本人に気にしなくてもいいと言っても、絶対気にすると思うからなぁ。
どんな慰めをかければいいものかと思案していると、突如、三桜が逃亡しだした。
「サツ(警察)が来たからここらでお暇するわ。一樹、また会ったら心中しよう!」
「アイツ、言うだけ言って逃げやがった!」
「一樹くん……私、何を治したら良いのでしょうか……」
このあと、五月を慰めるのに一時間掛かった。
その過程で、五月親衛隊やおじさん達の取り巻きは彼女は一切関与してないことが分かった。それはそれでグロいなって思った。