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第53話 二俣に相談するやつ

 どうしようもない時は何事も相談に限る。てなわけでことの顛末を二俣に話すことにした。


「お前の彼女と付き合いたい女の子か。純愛主義者としてはNTRになるかグレーゾーンだし、いやしかし百合だしな」


「それよりもさ。なんで二俣が運転してんの?」


 現在、二俣が借りた車で高速道路を爆速している。


 免許持ってる俺とは違い。二俣は免許持ってなかったはずだ。


「限られた青春を謳歌するために決まってるだろ」


「もっとまともな青春を過ごしてほしい」


「おいおい一樹。無免許運転てのは、免許持ってたら出来ないんだぜ?」


「分かってるわ」


 しかもよりにもよって天気は雨模様。運転する側にとって一番の悪環境である。


 それを無免許運転の人がやるだぁ? 俺に死ねと言っているようなものじゃあないか。


「そう嫌悪感に満ちた表情を見せるな一樹。今日は高速道路貸切のレースだから運転免許要らないんだ」


「レース?」


『高速道路貸切って出来るんだ』と最初に思ったが、その次に出てきた感情は……


「運転やらせろ! レース、レース!」


 俺のレース参加したい意欲だった。こう言っちゃなんだが、俺は運転が好きだ。下手くそだけど好きなのだ。


 レースというのに出てみたい。それはずっと燻っていた想いだった。


「けどお前、すぐ事故するしな」


「事故なんかしないぞ! 俺を誰だと思ってる!」


「えっ? 公道を走ってる教習車をタクシーだと思って必死に手挙げて止めようとした人か?」


「うーむ正解! じゃない! 関係ないだろその話は!」


「いいか? このレースはアイテムのぶつけ合い。甲羅とかぶつかって来て事故は当たり前だ」


「んな某車レースみたいな……」


「アイテム無しで事故る、そして騙されたり勘違いする天然なお前にこのレースは任せられん」


 結構な言い草だなぁ二俣ぁ!


 隙を見て発勁で潰して、無理矢理この車を乗っ取ってやる!



◇五十嵐杯 高速ロード



◇一位 五月親衛隊 過激派


◇二位 五月親衛隊 穏健派


◇三位 二俣&小坂


◇四位 スットコ


◇五位 ティンコラス二世



 目の前に!マークが描かれている透明な球体が現れた。


「なんだこの!マークで透明な球体は?」


「これはアイテムボールだよ一樹。割ればアイテムが出てくるんだ」


 数秒ピロリンピロリンと音が鳴った後、バナナが天から降ってきた。


「ほらよ。二周目でも、三周目でも、いいからバナナでも踏んどけ」ポイッ


「バナナを捨てちゃうの!? 不法投棄じゃん!」


「甘いな一樹。バナナみたいに甘い。このバナナはな、相手が踏むと事故が起きるアイテムなんだよ」


 まんまだなぁ!? そういや原作にもあったわそれ!


 細かいところまで再現しなくていいんだよ。


「……もういいや。話変わるけど、誰とレースしてるん?」


「五月親衛隊過激派」


 話を聞くにどうやら、二俣と五月親衛隊の穏健派という奴らで同盟を結んでいるらしい。


 五月親衛隊に過激派とか穏健派とかあるのかって初めて知った。


「ふむふむ、なるほどねぇ。理解した。それ俺の敵だわ」


 こうしちゃおけない。俺は二俣に発勁を仕掛けて再起不能状態にさせた後、車の運転権限を奪い取った。



         ◇



「あら、小坂一樹に代ったのね。あたしにとって割とどうでもいいレースだけど、そう来るなら勝たせてもらうで候」


 車のスピーカーからオカマの声が聞こえてくる。


「あと、これやるわ」


 オカマの車両から何かが外に放り込まれた。なんだあれは……


「グフッ、あれはどっこいしょ弾……近づけば爆発するアイテムだ……」


「二俣解説ありがとう」


 ていうか、どっこいしょ弾って要は爆弾じゃね?


 その直後、周囲に大爆発が起きた。俺たちは命カラガラかわしたが、マトモに当たってたら多分死んでいた。


「クソッ、なんてレースだよ。命が軽い」


 車のスピーカーから一位、二位の会話が流れてくる。


「これに負けたら俺たち五月親衛隊はしばらく手を出さない。勝ったら俺たちの好きにさせてもらうぜ」


「精々過激派に負けんように頑張ってね。じゃあで候」


 雑な脅しだ。だが、レースに勝てばいいんだろう。俺の闘争本能を刺激する。


「そこまで言われたら、やるしかないっしょ」


「一樹お前、内心楽しんでないか?」


 二俣は腹を抱えて顔面蒼白になりながらそう呟いた。


◇現在2/3の終盤。もう少しで三周目突入。順位変動無し。運転手交代二俣→小坂。



 透明なアイテムボールを割ると、まいたけが出現した。


「まいたけってどう使うん?」


 俺の問いに二俣は苦しそうな声で答える。


「ま、まいたけは加速アイテムだ……」


 なるほどなるほど……ますます某なんとかカートじゃねえか!?


 ダメだろ訴えられるぞ? 名前出さんけど!


 ままええわ。こうなったらとことん付き合ってやるよ! 五月親衛隊の件もあるし、レースで一位になってやる!


「あそこの出っ張り部分、多分まいたけ使えばショートカットできるんでね。そこで二位に追いついてやるよ」


「追い抜かせよ」



         ◇



 最後のアイテムは、ハイパースピードまいたけ!


◇ ハイパースピードまいたけ。使うと一定時間スピードアップ。



「吹けよ風! 飛べよ雨あられ! 吹っ飛べー! 五月親衛隊! 寝取り野郎とカップルクラッシャーも!」


「いやアイツらこのレース参加してないから」


「俺の加速についてこれるか! 加速を活かした大胆不敵なショートカット! そして……」



◇一位 二俣&小坂


◇二位 五月親衛隊 過激派


◇三位 五月親衛隊 穏健派



「ごぼう抜き! よっしゃぁぁぁ! 何を一人で盛り上がってんだよ俺は!?」


 冷静になってレースってなんだよ。某車レースを連想するし、アウトだろ色々と。


「いいレースだったな。俺たちは手を出さない。ただ他の過激派は普通に手を出すから気をつけろよ」



◇おまけ


 話は最初に戻って、五月と付き合いたい女の子について議論が白熱していった。


「おい、五月親衛隊的にはこの関係どうなんよ」


 あちこちから『百合でも一向に構わん』やら『男に取られるくらいなら』やら『純愛は1人までだ!』やら『百合の間に男が入るな』が聞こえてくる。


「問題は保留って感じで……」

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