目次
ブックマーク
応援する
1
コメント
シェア
通報

第11話 第2戦

リッカが指揮官になってからの、ネームレス部隊初めての戦いは、無事勝利を収めた。


それから3日が経過し、リッカはネームレス部隊について城の書庫を漁っていた。


書庫といっても、ほとんどの人が使わない部屋になっており埃まみれで、一つ間違えれば本が雪崩の如く降ってきそうな部屋だ。



そんな部屋では、めぼしいものは特に見つからず情報収集は行き詰まっていた。


(何でこんなにもネームレスの情報だけが出てこないの?第1ー第9部隊の情報は古いものまで登録されているのに。シュウはどう考えても長い間ネームレスにいる、じゃないと周りからの信頼も、敵の対処も完璧にはできない。何で王国は、そんな必死になってネームレスの存在を隠すの?)


リッカの中で、ロア王国に対する不信感が徐々に募り始めていた。



だが、追求することが特徴のリッカは諦めずに資料を探していた。


本をかき分け、棚の上から下まで、蜘蛛の巣が張ってるところも気にせずに突き進んだ。


すると、


「おい、見習い。」

「え?ユン大尉!」


リッカは探し物を辞め敬礼する。


「こんなところで何をしているんだ?」

「ちょっと探し物をしておりました。」

「ふーん、そうか、あまり余計なことはしてくれるなよ。」

「大尉、それはどういうーー。」



2人が話していると、


リッカのビットに通信が入る。


「本部より見送り人アンダーテイカー、ネームレス部隊出動命令です、コントロールルームに向かってください。」


機械音声が、リッカに出動要請を伝える。


「もう次の襲撃が!?王国のモンスターだって、早くても1週間に1回なのに、やっぱりおかしい。いや、今はそんなことよりもシュウ達の指揮を!」



リッカはドアを弾くように開き、コントロールルームに全速力で向かう。


「せいぜい頑張れ、新入り。」



周りの将校達は、呑気におしゃべりをしている中、突風のようにリッカが過ぎていく。




そしてコントロールルームに入り、


領域解放テリトリーオープン!」


椅子に座り、通信状態に移行した。


見送り人アンダーテイカーより、ネームレス。聞こえますか?」


リッカの問いかけに、


「こちら死神隊長リーパーヘッド、聞こえています、見送り人アンダーテイカー。」

「ありがとうございます、死神隊長リーパーヘッド天使エンジュ案内人ローダー千里眼アイズも一緒ですか?」

「こちら天使エンジュ案内人ローダーと一緒に現場に向かっています。」

「こちら千里眼アイズ死神隊長リーパーヘッドに着いていってますよ。」

「ありがとうございます、皆さん。こちらからはまだ敵の姿をキャッチできていません、案内人ローダー、前回同様見つけ次第報告お願いしますね。」

案内人ローダー了解。」


4人は風を切り、颯爽と現場まで向かう。


途中、過去に倒したレイダーの残骸を目にし、


「今回の地形、少し厄介なところじゃねえか。」

「厄介とは?」

「ここは、廃屋以外に大きな岩で視界を遮られやすい。どこから狙われてもおかしくない地形なんですよ。」

「なるほど、情報ありがとうございます、案内人ローダー。」

「いちいち礼はいらないですよ、見送り人アンダーテイカー。おっと、敵視認!3時の方向に3体、今までの個体と変わらない奴らだ!」


ダイアが指で指し示す方角から、3体のレイダーが銃を構え砂煙をあげながら迫ってくる。


「俺が近接に入るーー。」

「待ってください、案内人ローダー!私に作戦があります。」

「あっ!?」

天使エンジュ千里眼アイズ、射撃準備!その地点から狙撃態勢!死神隊長リーパーヘッドはーー。」

「12時の方向から、混乱する敵を中距離射撃しつつ回り込んで近接で撃破、案内人ローダーは狙撃する2人の防御、ですね?」


シュウはリッカの指示しようとしたことを完全に言い当てる。


「そ、その通りです、いけますか?」

「いけるかじゃねえ、やるんだよ!天使エンジュ千里眼アイズ!頼むぜ!」

「了解!」



ミレイは地面に伏せライフルを構え、エメは右ひざをつき弓を構える。


敵までの距離、約50m。



「いくよ、千里眼アイズ!」

「さあて、うちらの力見せてあげようか!」



シュンッ!

タンッ!

1本の矢と1発の弾丸が、瓦礫や廃屋を避け、1体ずつのレイダーの足に直撃。


破片が飛び散り、2体とも地面に倒れる。



「よしっ!さすがうちら!」

「まだ油断は出来ねえぞ!次、5時の方角から5体!」

「じゃあ先に残り1体をーー。」

「いや、そっちは俺が後始末をする、2人は5体の方を抑えてくれ。」



忍のごとく静かに、狼のように素早く迫る。



そして、


ツムれ、覆霞ヘイズ。」


ダダダダダッ!

2丁拳銃から、複数の弾丸が射出され、レイダーが気づいたころには体中撃ち抜かれていた。


レイダーの目は霞み、その場に倒れる。



だが、地面に倒れたレイダーはその手に持つ銃でシュウ目掛け撃つ。


「寝てたら、上手く狙えるものも狙えねえだろ。」


さらにスピードを上げ、シュウに照準が合う前に、レイダーの弱点である赤い石が砕け散る音が響き渡る。


死神隊長リーパーヘッド、3体の殲滅を確認しました。至急、天使エンジュたちの援護をーー。」

「待ってください、まだ何か来ます。」


シュウが物音のする背後を向くと、


ビットの熱探知機能に、急に反応が。




その数、10体。


「嘘っ、こんな数が急に!?」


ダダダダダッ!

10体のレイダーが、シュウ目掛け弾丸を放つ。


「ちっ!」


シュウは岩の後ろに駆け込み、攻撃を避ける。


死神隊長リーパーヘッド!至急3人と合流を!」

「いえ、ここで足止めを行います。10体が進行してきては、こちらが全員無事でいられる保証がありません。見送り人アンダーテイカー、3人の指揮をお願いできますか?」

「ですが、その作戦は無茶です!」

「無茶ではありません、ここにいるのはネームレスです、自分たちを信じてください。」

「……分かりました、早急に援護に向かわせます、それまでの無茶は禁止します。これは、指揮官命令です。」


ピッ!

シュウとのビットの通信が遮断される。


「了解です、見送り人アンダーテイカー。」


銃をリロードし、防戦態勢をとるシュウ。


これが、ネームレスの戦い方なのだ。

この作品に、最初のコメントを書いてみませんか?