リッカが指揮官になってからの、ネームレス部隊初めての戦いは、無事勝利を収めた。
それから3日が経過し、リッカはネームレス部隊について城の書庫を漁っていた。
書庫といっても、ほとんどの人が使わない部屋になっており埃まみれで、一つ間違えれば本が雪崩の如く降ってきそうな部屋だ。
そんな部屋では、めぼしいものは特に見つからず情報収集は行き詰まっていた。
(何でこんなにもネームレスの情報だけが出てこないの?第1ー第9部隊の情報は古いものまで登録されているのに。シュウはどう考えても長い間ネームレスにいる、じゃないと周りからの信頼も、敵の対処も完璧にはできない。何で王国は、そんな必死になってネームレスの存在を隠すの?)
リッカの中で、ロア王国に対する不信感が徐々に募り始めていた。
だが、追求することが特徴のリッカは諦めずに資料を探していた。
本をかき分け、棚の上から下まで、蜘蛛の巣が張ってるところも気にせずに突き進んだ。
すると、
「おい、見習い。」
「え?ユン大尉!」
リッカは探し物を辞め敬礼する。
「こんなところで何をしているんだ?」
「ちょっと探し物をしておりました。」
「ふーん、そうか、あまり余計なことはしてくれるなよ。」
「大尉、それはどういうーー。」
2人が話していると、
リッカのビットに通信が入る。
「本部より
機械音声が、リッカに出動要請を伝える。
「もう次の襲撃が!?王国のモンスターだって、早くても1週間に1回なのに、やっぱりおかしい。いや、今はそんなことよりもシュウ達の指揮を!」
リッカはドアを弾くように開き、コントロールルームに全速力で向かう。
「せいぜい頑張れ、新入り。」
周りの将校達は、呑気におしゃべりをしている中、突風のようにリッカが過ぎていく。
そしてコントロールルームに入り、
「
椅子に座り、通信状態に移行した。
「
リッカの問いかけに、
「こちら
「ありがとうございます、
「こちら
「こちら
「ありがとうございます、皆さん。こちらからはまだ敵の姿をキャッチできていません、
「
4人は風を切り、颯爽と現場まで向かう。
途中、過去に倒したレイダーの残骸を目にし、
「今回の地形、少し厄介なところじゃねえか。」
「厄介とは?」
「ここは、廃屋以外に大きな岩で視界を遮られやすい。どこから狙われてもおかしくない地形なんですよ。」
「なるほど、情報ありがとうございます、
「いちいち礼はいらないですよ、
ダイアが指で指し示す方角から、3体のレイダーが銃を構え砂煙をあげながら迫ってくる。
「俺が近接に入るーー。」
「待ってください、
「あっ!?」
「
「12時の方向から、混乱する敵を中距離射撃しつつ回り込んで近接で撃破、
シュウはリッカの指示しようとしたことを完全に言い当てる。
「そ、その通りです、いけますか?」
「いけるかじゃねえ、やるんだよ!
「了解!」
ミレイは地面に伏せライフルを構え、エメは右ひざをつき弓を構える。
敵までの距離、約50m。
「いくよ、
「さあて、うちらの力見せてあげようか!」
シュンッ!
タンッ!
1本の矢と1発の弾丸が、瓦礫や廃屋を避け、1体ずつのレイダーの足に直撃。
破片が飛び散り、2体とも地面に倒れる。
「よしっ!さすがうちら!」
「まだ油断は出来ねえぞ!次、5時の方角から5体!」
「じゃあ先に残り1体をーー。」
「いや、そっちは俺が後始末をする、2人は5体の方を抑えてくれ。」
忍のごとく静かに、狼のように素早く迫る。
そして、
「
ダダダダダッ!
2丁拳銃から、複数の弾丸が射出され、レイダーが気づいたころには体中撃ち抜かれていた。
レイダーの目は霞み、その場に倒れる。
だが、地面に倒れたレイダーはその手に持つ銃でシュウ目掛け撃つ。
「寝てたら、上手く狙えるものも狙えねえだろ。」
さらにスピードを上げ、シュウに照準が合う前に、レイダーの弱点である赤い石が砕け散る音が響き渡る。
「
「待ってください、まだ何か来ます。」
シュウが物音のする背後を向くと、
ビットの熱探知機能に、急に反応が。
その数、10体。
「嘘っ、こんな数が急に!?」
ダダダダダッ!
10体のレイダーが、シュウ目掛け弾丸を放つ。
「ちっ!」
シュウは岩の後ろに駆け込み、攻撃を避ける。
「
「いえ、ここで足止めを行います。10体が進行してきては、こちらが全員無事でいられる保証がありません。
「ですが、その作戦は無茶です!」
「無茶ではありません、ここにいるのはネームレスです、自分たちを信じてください。」
「……分かりました、早急に援護に向かわせます、それまでの無茶は禁止します。これは、指揮官命令です。」
ピッ!
シュウとのビットの通信が遮断される。
「了解です、
銃をリロードし、防戦態勢をとるシュウ。
これが、ネームレスの戦い方なのだ。