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11・天才少女、努力を知る

01驚異的なスピード

 私、向水ミライは現在新設された迷宮攻略分隊として大規模ダンジョン攻略の為に遠征中である。


 学園というか札幌を出て三日。

 基本的に移動は縞島さんがミスリルゴーレムのダビンチを牽引式のキャンピングカーに変形させて、移動している。


 運転はダビンチが縞島さんの命令しか受け付けないため縞島さんしか行えないので、適度に休みを挟みながら日中に運転時間を長くても五時間程度に収めるように進んでいる。

 百一も運転が代われるように出来ないか試行錯誤を行っているみたい、なんか命令権の幅を広げるか構造的に他者でも癖のないマニュアル操作が出来るようにするとか縞島さんは色々と試してる。

 荷物は私と百一のマジックバッグを使って収納、みんな手荷物ぐらいの手軽さだ。


 現在は上磯郡知内町、つまり青函トンネル入口付近。

 旧道の駅しりうち駐車場にてキャンプ中だ。


 青函トンネルを通り本土へ向かう前に、トンネル内の線路が問題ないかとかモンスターが居ないかとか新たにダンジョンが生まれてないかとかを確認するために一度ここで停留することになった。


 早朝より百一と暗木さんと縞島さんで、トンネル内を確認中。

 問題ないなら縞島さんがダビンチを列車に変形させて進む予定だ。


 青函トンネルは燃料枯渇でフェリーを動かせない今、札幌と他の居住区を繋ぐ重要なラインではあるが……使用頻度が高いわけではない。

 管理のために攻略者を常駐させるのは、人手不足で不可能だ。

 半導体不足で貴重なカメラを設置するのは難しいし、定期的に攻略隊で見て回ってはいるけど……まあ見ておいた方がいいって思うくらいにはわりとモンスターが出る。


 青函トンネル利用のために、この辺りの小規模ダンジョンはあらかた消滅させたけど中規模ダンジョンは攻略しきれてないし消滅させてもまた誕生してしまいイタチごっこなのよね……。


 とにかく私は里々ちゃんと喜怒さんとお留守番。

 食事の準備とかはあるけど、基本的にはトレーニングに回そうと思う。


 ジャージに着替えて、とりあえず軽く走ることにした。


 ランニング前にストレッチをしていると。


「あら、おはようございます。向水先輩もランニングですか?」


 ジャージ姿の里里里々ちゃんが現れて声をかけてくる。


 里々ちゃんは一年生ながら先日の中規模攻略でCランクへと昇格した。

 最速で……いや百一が一気にAランク昇格してるから最速ではないか。


 それでも驚異的なスピード……一年生の前半でCランクは早すぎる。

 まあ百一は例外というか多分早い段階で人間やめてるからあれとして、私は過不足なく天才だからね。


 私と同じような天才は他にもいたってことなんだろう。


 …………まあ、おっぱいはだいぶ違うけど。ちょっとびっくりするくらいおっぱいが大きい。

 こないだ見た謎の弩級美人のおっぱいにも驚愕したけど里々ちゃんも負けてない。


 私は…………まあ別に私のおっぱいの話はおいといて。


「うん、おはよ。里々ちゃんもこれから? あ、一緒に走らない?」


 私は深く片脚屈伸で腿裏を伸ばしながら、ランニングに誘う。


 興味がある。

 私は私以外の天才となかなか出会う機会がなかった。だから感覚的なところの話とかをしてみたいと思ってた。

 百一はなんかもう話してて腹立つくらいに感覚が違うというか、価値観が遠い。


 だからもっと、気さくに話をしてみたかった。


「いえ、私は今から二セット目に入ります。向水先輩のペースに合わせられないと思いますので、有難いお誘いですが一人で走ります」


 軽くタオルで汗を拭いながら里々ちゃんは返す。


 に、二セット目? もう走ってきたの? っていうから朝からいくもんなの? 二セット目って。


「そっか、ちなみに……それ何キロつけてるの?」


 私は驚きつつも、会話を続けるべく里々ちゃんが手足に付けていたリストウェイトとアンクルウェイトについて尋ねる。


 私もやってたことあるけど、いつも通りの動きが出来ないからやんなくなっちゃったのよね。


「これは一つ三キロですね。それとさっき古タイヤを見つけたので、これを引いて行きます。とりあえず距離は考えずに……三十分くらいは走ろうかと思います」


 里々ちゃんは後ろに積まれてた古タイヤを二本抱えてながら答える。


 三キロ……三キロ? え、両手両足合わせて十二キロ? 古タイヤ一個を五キロって考えたら……二十キロ以上の負荷を乗っけて三十分って……。


 なんか今日は頑張る日なのかな。


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