見てるだけじゃよくわからないと思うしね。
私も学校にあった教習用の教科書だけじゃよく分からなかった。
こういうのは本当は触ってみた方がいい、まあ現存する動く車は限られているし電気自動車しかないからなかなか難しいけれど。
札幌でも移動の主流は電動スクーターや電気自動車だった。でもあんまり長距離走行には向いてない、市内の移動には便利だけど長距離移動には大型の戦闘ペットを用いた移動を行っていたりする。
「今は石油燃料が無いからダビンチ自体がエンジン部のピストンを動かして動力としているからイグニッションとかガソリンタンクとかは機能してなくて――――ごめん、退屈だったね」
運転方法から内部構造や燃焼機関の話になっていることに気づいて、私は素直に謝る。
いやはや里里さんは別に車を作りたいわけじゃあないのに……語りすぎてしまった。
「いえいえ! 退屈なんてことはないのですが……恥ずかしながら私には難しくて……車の運転はとても複雑なのですね」
話を聞いていた里々ちゃんが驚いた様子で返す。
「ご、ごめん! そんなに難しくないよ! 私は構造からどこを触ればどれだけ動くって覚え方をしちゃってるから! 普通乗用車ならもっと感覚的に操作できるから!」
私は慌てて否定する。
まずったぁ……小難しく話しすぎた。
せっかく興味持ってくれたのに……もっとカジュアルに伝えるべきだったぁ……。
「はい……、ありがとうございます。時間はかかるかもしれませんが、私も運転を覚えて攻略を手伝えたらと思っています」
里里さんは真摯にそう述べる。
「え? いやあの全然ありがたいし運転手が増えれば移動距離も伸びるから攻略効率も上がるけど……、里里さんは戦闘方面でかなり力になってるでしょ。あんまりやること増やしすぎて疲れて戦闘に影響が出ても良くないよ」
私は里里さんの言葉に心配を混ぜて返す。
まだ他者への運転譲渡は出来てないけど、出来るようになったら乃本さん以外にも運転出来る人がいてもいい。
ちょっとした移動とかもあるし、単純に私が怪我したり寝込んだりしたら進行が止まってしまうからね。
でも乃本さんもそうだけど、里里さんはこの分隊においてかなり戦闘要員だ。多分役割としてはサポート要員の喜怒さんや暗木さんが覚えた方がいいとは思うけど。
まあでも興味があるなら全然問題もない。私もさっさとダビンチをみんなが動かせるようにしないと……。
「戦闘方面……確かに私の役割はモンスター討伐や分隊の防衛……ですが。乃本君や向水先輩はもちろんのこと、暗木さんはまだ底が見えないし喜怒さんとの徒手格闘訓練では全敗しています……」
里里さんはやや苦い顔をしながら自己評価を語り出す。
うーん、うん……?
まあそりゃあ暗木さんも喜怒さんも先輩攻略者だし実力者だから当然だし、そもそも徒手格闘訓練って大事だとは思うけどモンスター相手とは違うし私たちの仕事はダンジョン攻略なわけだから気にし過ぎなくて良いところだ。
多分単純に判断力とか体力の方が大事な気がする。
「縞島先輩は車両や居住設備の創造や運転や瓦礫撤去など、攻略作戦に必要不可欠なサポートを一手に担っています。私はまだこの分隊で役割を果たせていません」
つらつらと里里さんはさらに私の評価を述べる。
「え、ええ……? 青函トンネルの亀型モンスターやっつけてたべや……めちゃくちゃ助かったけど」
私は戸惑いながら返す。
確かに現状この遠征は私とダビンチの輸送力に依存はしてるけど……私ぜんっぜん戦えないから討伐面に関してはおんぶにだっこなんだけど。
里里さんの活躍はめちゃくちゃ助かってる。
「あの程度のモンスターなら防護服さえあれば他の方々でも簡単に討伐できたので、たまたま私の着装合体が効果的だっただけですよ。かなり局所的な場面に噛み合ったにすぎません」
あっけらかんと里里さんは自分の手柄についての評価を述べる。
「そういうものなの……? でも一年生でCランクになるなんて向水さんのペースでしょ、全然卑屈になることないと思うよ」
私はやや卑屈気味な里里さんに返す。