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03確実に巨乳好き

 え、ええ……嘘だろ? 無責任が過ぎる……。

 別に僕らは生徒でも弟子でもないし、彼女も別に師でもないんだからいいけどここまで突然ハシゴ外すか……?


 まあ、かなり的確な指摘だったのは事実だが……。


「結局、誰なんだあいつは……?」


「さあ……?」


 僕と里里は正体不明の謎美人に疑問符を浮かべながら呟いた。


 その後、里里も大きな怪我は無かったのでエスメラルダでの回復は行わず僕らはそのままシャワーを浴びた。


 遠征先ですぐにシャワーを浴びられるのは素晴らしい。

 本当に暗木が居てくれて良かった。

 あのマー坊の安全な水を生み出す力はやはりとんでもない。『水屋』は伊達じゃあないな。


 シャワーを浴びて、食事を終えたところで再度僕と里里は乃本へと声をかける。


「あー、そんなこと言われたのか。結構ちゃんと相手してくれたんだな……後で褒めてやらんと」


 僕らの話を聞いて乃本はそんな感想を漏らす。


 やはりあの謎美人はかなり乃本と親密な関係なようだ……なんか……まあいいか。それは今は置いておく。


「確かに里里はよく鍛えこんでいる。神経系も育っていて瞬発力もあるし走り込んでいてスタミナもある。身体はかなり出来てきている」


 乃本は謎美人の言っていた指摘を含めて、里里について語り出す。


「だが少し勿体ない、何かしら武術的な身体の使い方というか……出力の仕方や筋力や重さの使い方を覚えた方がいい」


 やはり謎美人と同じような結論を述べて。


「そうだな……よしちょっとそこ立ってみろ、まあ適当に自分で安定する感じでふつーに」


 そう言って里里を立たせる。


「はい」


 里里は素直に返事をしながら、肩幅に脚を開いてただ立つ。



 淡白に言いながら乃本は里里の胸に手を伸ばて、二本指で鎖骨の真ん中少し下をゆっくりと押す。


 びっくりしたぁ……おっぱいを触ろうとしたのかと思ったぞ……。

 あの謎美人が誰で乃本のなんなのかは未だに不明だけど、あれが乃本の好みだとすると乃本は確実に巨乳好きだからな。


 ゆっくりと押された里里はバランスを崩して一歩後退り、続けて右肩や左肩も押されてふらついて背中からも押されてふらつく。


「まあ押したら崩れるだろ、前後左右。これが今おまえの立ち方だ……少し調整をする」


 乃本はそう言いながら里里の両肩を軽く掴んで、少し里里の姿勢を調整する。


「よし、これでまた押すぞ」


 調整したところで再び乃本がそう言って里里を押すと。


「! なにをしたんですか? 全然……全然違います」


 押されても全く動かない自分に里里は驚愕の声を上げる。


 僕も驚いた。

 何が変わったのかはわからないけど、確かに変わった。


 踏ん張りが効くようになったのか? 今のちょっと触っただけで?


「ああ、立ち方のバランスというか体軸というか本来の筋力や体幹をスムーズに使えるようにした。歪みやたわみがなくなるからウエイトも上がるようになって、トレーニングの強度や効率も上がる」


 淡々と乃本は里里を確かめるように前後左右から押しながら、とんでもないことを語る。


「おいおいなんだそれ魔法すぎるだろ。そんな簡単に強くなれるのか……僕にもやってくれ!」


 僕はとんでも効果に食いつく。


 これは凄いことだ。

 実際、丹田の意識などで重さや威力に影響が出るみたいなことは体験してきている。


 いかに効率的に鍛えた身体を使うかというのは、武道や武術において大事なテーマだ。


「良いけど、これ十分くらいしか持たないし今は簡単にしか調整してないから跳んだり跳ねたりしたらすぐに元に戻る」


 乃本は前のめりな僕に対し、あっけらかんと魔法が解けることを言う。


「なんだそりゃあ、意味なさすぎるだろ。ちょっとした手品みたいなもんか」


 がっかりしながら僕が返すと。


「まあそうだな。これはあくまでも体験用というかデモンストレーションみたいなもんだが、この状態を維持というか標準にすることが出来る」


 淡々と乃本は説明を始める。


「チャリンコの乗り方みたいに、一回身体が正解を覚えちまえば勝手にそうなるように脳へとこの状態を覚えさせる」


 乃本はさらに里里の身体を少しずつ触れて、調整しながら語る。


「とりあえず一旦俺ががっつりと調整するから、そこから自分での調整方法を教える。それを毎日最低三回、多ければ多い方がいい。これが一番良い状態だとなれば調整しなくても自然とこの状態になる」


 里里を拳を突き出した体勢にして、拳を押して里里が押し負けないことを確認しながら説明を終える。


 つーかすっげえ、これ身体の跳ね返りがなくなるのか。

 これなら打撃も通りやすくなるし、効く……。


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