桜の舞い散る春、大学構内のカフェで、
奏太の飾らない優しさ、そして、美優の知的な魅力に惹かれ合う二人は、あっという間に恋に落ちた。カフェでの勉強風景、映画館での笑い声、そして、静かな夜空の下での語り合い。二人の時間は、かけがえのない宝物のように輝いていた。
2年の月日が流れ、二人の愛は深まるばかりだった。卒業を控え、将来について真剣に話し合うようになった頃、奏太は美優にプロポーズした。満開の桜並木の下、奏太の真剣な瞳と、美優の涙に濡れた笑顔。その瞬間、二人の未来は、永遠に一つになった。
結婚を控え、幸せの絶頂にあった二人だったが、影が忍び寄っていた。美優は、最近、疲れやすく、食も細くなり、体重も落ちてきていたのだ。漠然とした不安を抱えながら、二人は結婚前に人間ドッグを受けることにした。
人間ドッグの結果は、想像をはるかに超える衝撃的なものだった。美優は、スキルス胃がんを患っており、余命は長くはないという宣告を受けたのだ。医師の説明を聞く美優の顔は、徐々に青ざめていった。
美優は、奏太に別れを切り出そうとした。奏太への愛情が、この現実を受け入れることを困難にさせていた。しかし、奏太は、美優の手を握りしめ、涙を浮かべながら言った。
「こんな時こそ、そばにいたい。美優がつらい思いをしている時、俺が寄り添わなきゃ、一生後悔すると思うんだ。」
奏太の言葉は、美優の心を温かく満たした。美優は、奏太の温かい愛情に抱かれながら、涙を流した。そして、奏太への愛を再確認した。
入院し、抗がん剤治療が始まった。つらい副作用に苦しむ美優を、奏太はいつも励まし続けた。仕事の合間を縫って病院を訪れ、美優の手を握り、優しく語りかけた。美優の笑顔を守るため、奏太はできる限りのことをした。
ある日、奏太は美優に内緒で、主治医や看護師と相談していた。そして、ある計画を進めていた。それは、病院の会議室を、簡易的なチャペル風にして、結婚式を挙げることだった。
奏太の計画は、美優にとって、予想外のサプライズとなった。白いウェディングドレスを着た美優、そして、優しく微笑む奏太。二人の周りは、病院のスタッフや、美優の親しい友人たちで溢れていた。
簡素な式ではあったが、そこには、二人の深い愛情と、周りの人々の温かい祝福が満ち溢れていた。美優は、奏太と永遠の愛を誓い合った。
抗がん剤治療は、美優にとって、依然としてつらいものだった。しかし、奏太の愛と、周りの人々の支えに支えられ、美優は、最後まで笑顔でいようとした。
美優の最期は、奏太の腕の中で、静かに訪れた。美優の顔には、安らかな笑顔が浮かんでいた。奏太は、美優の手を握りしめ、涙を流しながら、彼女の魂を見送った。
桜の舞い散る季節、美優と奏太の物語は、永遠の愛の物語として、人々の心に刻まれた。二人の愛は、多くの人の心に、深い感動と、温かい希望を与え続けた