花梨が担当した生徒の中に、
圭太も、以前にもまして勉強を頑張るようになった。花梨は、そんな圭太を応援し、見守っていた。
圭太が高校3年生になると、志望校について花梨と話し合う日に、
「僕は、花梨さんと同じ大学を受験したいです!」
とついに花梨に打ち明けた。
「…え?」
花梨は突然のことに驚きを隠せなかった。
「僕、必ず合格しますから!そしたら、春から一緒に大学行きましょう!」
「そうね。うん!約束ね!」
花梨はそっと小指を出し、圭太と指切りをした。花梨の通う大学は国立大で、偏差値もそこそこ高い。今の圭太の成績では、ギリギリ合格か…というラインだった。
圭太も花梨の家庭教師が休みの日は、図書館で勉強するようになった。自分の部屋にいると、花梨のことばかり考えてしまうようになってしまったからである。花梨がいたら…、圭太の花梨への想いは次第に強くなっていった。
今は受験勉強しなくては!と圭太も気持ちを切り替えて、勉強に取り組んだ。模擬試験では、ギリギリだったのが、やがてB判定、その後A判定が出せるようになっていた。
「A判定が出たからと言って、気を緩めたら駄目だよ!」
と花梨は圭太に言った。
「うん、わかってるよ。」
「その調子で頑張ろうね!ちなみに、うちの大学の、何学部受けるの?」
「経済学部」
圭太は答えた。
「…そっか、経済学部ね。」
花梨は、教育学部だったため、学部が違うことに少しショックを受けていた。その時、花梨は初めて圭太を好きになっていることに気付いたのだ。
「花梨さん、どうかしましたか?」
急に黙り込んだ花梨を心配して圭太は、声を掛けた。
「…ううん、何でもないよ。圭太くん、受かるといいなぁ…。」
「必ず、合格してみせます!約束しましたから!!」
「そうね。針千本は、飲むのはさすがに嫌だよね」
春が来た。圭太は、見事、経済学部に合格した。花梨との約束を果たした喜びで胸がいっぱいだった。入学式の日、花梨は圭太を見つけると、笑顔で駆け寄った。
「圭太くん!合格おめでとう!」
「ありがとう、花梨さん!約束通り、同じ大学に来れたよ!」
二人は軽くハグをして、お互いの入学祝いの言葉を交わした。キャンパスライフは、想像以上に忙しかった。
二人で大学の図書館で勉強したり、キャンパス内のカフェでコーヒーを飲みながら近況報告をしたり、自然な形で交流を深めていった。 お互いの勉強を直接手伝うことはなかったけれど、難しい問題にぶつかった時、さりげなく相談したり、励まし合ったりする関係になっていった。
花梨が大学卒業を控えた頃、圭太は花梨に
「花梨さん、付き合って下さい!」
と交際を申し込んだ。花梨は、少し照れながら、
「うん!」
と答えた。
大学生活も残り一年。二人は、将来の夢を語り合った。圭太は、卒業後、大手企業に就職することを目指し、就職活動に励んでいた。花梨は、教員採用試験合格を目指し、アルバイトを続け将来の進路を模索していた。
「卒業したら、遠距離になるかもしれないけど…」
花梨が少し不安そうに言うと、圭太は、
「大丈夫だよ。何とかなるさ!花梨さんと一緒なら」
と、いつもの明るい笑顔で答えた。
卒業式の日、二人で記念撮影をしキャンパスを後にした。少し寂しい気持ちもあったが、未来への希望に満ち溢れていた。卒業後、圭太は東京で働き始め、花梨は地元で教師として就任が決まった。 週末には、お互いの都合に合わせて会いに行ったり、オンラインで連絡を取り合ったりしながら、遠距離恋愛を始めた。
そして、数年後。圭太は、花梨にプロポーズした。
「花梨さん、結婚して下さい!」
花梨は、涙ながらに、
「うん!」
と答えた。
二人は、地元で結婚式を挙げた。親戚や友人たちが祝福に駆けつけてくれた。
披露宴では、圭太が、花梨との出会いからプロポーズまでの軌跡を、ユーモラスに語った。会場からは、温かい笑いと拍手が沸き起こった。
花梨は、 圭太と幸せな家庭を築いていった。二人の物語は、これからも続いていく。