心霊同好会のカズヒロ、サエ、シゲミ、トシキは、授業が終わってすぐ最寄りの
電車の座席に横並びで座る4人。
カズヒロ「トシキー、くろばみ駅の行き方、もう1回教えてくんね?よく覚えられなくってよー」
トシキ「まず市目鯖駅から
カズヒロ「んー、やっぱ無理。俺はお前に着いていくよ。道案内よろしくー」
サエ「私も軍艦駅に行くところまででギブ。トシキに任せた〜」
シゲミ「同じく」
トシキ「そんなに複雑じゃないと思うけど……キミたちその
軍艦駅で降車した4人。地下鉄いわし線に乗り換え、
4人はいわし線の車内、乗降口付近に立ち、「くろばみ駅」を目指す。
トシキ「このまま乗っているとまた
サエ「じゃあアナウンスを聞いてれば、くろばみ駅への手順が上手く踏めたかどうかもわかるってことね〜」
トシキ「もし変化がなければ失敗したか、そもそもくろばみ駅はなくてガセネタだったってことになるかな」
カズヒロ「2時間半もかけたんだから何か収穫はほしいけど、あまり期待しないでおくかー」
“次は、
サエ「……言ってなかったよね?『終点』って」
シゲミ「言ってないわね」
カズヒロ「じゃあ成功かー?」
トシキ「まだわからない。このまま乗り続けよう」
電車が
トシキ「進んだ……折り返すはずなのに進んでる!」
サエ「マジ〜?本当に行けるの〜?」
車内にアナウンスが流れる。
“次は、終点・くろばみ駅、くろばみ駅。お出口は右側です”
シゲミ「確定したわね」
カズヒロ「すげー!ウワサは本当だったのかー!……でもトシキ、帰りはどうするんだ?」
トシキ「くろばみ駅には10分に1本くらいの頻度で電車がやって来るらしい。それに乗れば普通に戻れるそうだよ」
カズヒロ「……意外とあっけないんだなー」
トシキ「くろばみ駅に行こうって言い出したのは僕だよ?腰抜けな僕がリスキーな場所を選ぶわけないじゃない」
シゲミたちを乗せた電車が駅に到着した。車窓から見える看板には「くろばみ駅」と記載されている。
扉が開き、4人は電車から降りる。シゲミたち以外に電車から出てくる人は誰もいない。一見するとどこにでもある地下鉄の駅だが、利用客も駅員もおらず静まり返っている。上階の改札に続いているであろうエスカレーターは停止し、自動販売機の飲み物は全て売り切れのマークが表示されている。
サエ「ここがくろばみ駅〜?ちょっと気味悪いけど思ってたよりフツーかも」
カズヒロ「とにかく見事にたどり着けたんだ!写真撮ろうぜ写真ー!」
シゲミ「帰宅ラッシュの時間帯なのに誰もいない。すごく静か……私は知らないけど、終電の駅ってこんな感じなのかしら?」
トシキ「くろばみ駅に限らず、終電はどこの駅もこんな雰囲気なんじゃないかな?大人になって働き始めたら、毎日こんな不気味な駅を使わないといけなくなるのかも……そんな将来こそ怖い」
くろばみ駅構内の写真をスマートフォンで撮影する4人。その最中、電車の扉が閉まり
トシキ「電車が折り返すってウワサも本当みたいだね」
サエ「次の電車は10分後くらいに来るんでしょ〜?」
トシキ「そのはず。次が来たらそれに乗って戻ろうか」
カズヒロ「じゃあタイムリミットは10分!その間にバンバン撮ろうぜー!」
撮影を続ける4人。およそ10分後、何のアナウンスもなく次の電車がホームにやって来た。シゲミたちが乗っていた電車に他の乗客はいなかったが、新しくやって来た電車はスーツ姿の男女ですし詰め状態だった。
電車が止まり、乗客たちが車両から降りてきた。その数は数百人。彼らは改札に向かわず、ホームでシゲミたちを円形に囲み、凝視した。