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VS ポコポコ様②

PM 6:00

喉具呂のどぐろ島を目指し東京湾を出発する、黒く塗装された3隻の小型輸送船。船上には黒い戦闘服に身を包み、ヘルメットと防弾チョッキ、自動小銃で武装した特殊部隊員たちがそれぞれ12名ずつ乗っている。その中にブレザー姿で混ざるシゲミ。頭にヘッドセットを装着し、左肩にスクールバッグをかけている。


海上を駆ける船と併走するように上空を飛ぶヘリコプター。コックピットには操縦士と歯砂間はざま


特殊部隊員たちとシゲミが装着したヘッドセットから歯砂間の声が流れる。



歯砂間「ターゲットは邪神・ポコポコ。喉具呂島に着いたら2小隊1チームで島内を捜索。ターゲットを発見し次第報告せよ。他チームとシゲミさんがそのポイントへ向かう。ターゲットに警告は不要。その場で発砲、射殺して構わない」



−−−−−−−−−−



PM 8:36

喉具呂島 浜辺

海で獲った魚を木の枝で貫き、砂に刺してたき火で焼いているポコポコと筆見ふでみ サツキ。たき火を挟んで座って缶ビールを飲み、笑いながら会話をしている。



ポコポコ「サツキちゃん、ほんまに雑誌に友達募集の記事載ったんか?全然人来ないやんけ!来ても友達になる価値のないしょーもないヤツばっかりや」



サツキの顔は真っ赤で、やや呂律が回っていない。



サツキ「あれは友達募集の記事じゃなくてぇ、島民失踪事件に関する記事だからぁ。趣旨が違うんだってぇ」


ポコポコ「オレの想定じゃ、もうとっくに1万人くらい集まってるはずやったんやけどなぁ」


サツキ「こんな小さな島に1万人も暮らせないよぉ。1000人でも無理ぃ」



突如、ポコポコが暗い海のほうを向いて立ち上がる。



サツキ「あれぇ?どうしたのポコポコくぅん?おしっこぉ?海におしっこする気でしょ?汚いんだぁ。せめてお粗末なモノが私に見えないようにやってぇ」


ポコポコ「……記事の効果か?海の向こうから何かがぎょうさん近づいて来とるなぁ」



サツキも海へ顔を向ける。



サツキ「うそぉ?何も見えないよぉ?」


ポコポコ「友達希望者なら歓迎やけど、違う場合は戦闘になるかもしれへん。しかも広範囲で。サツキちゃん、念のため森の洞窟に避難しといてくれるか?オレが良いというまで絶対に出てきたらアカンで」



−−−−−−−−−−−



PM 8:45

船からもヘリコプターからも喉具呂島が見えた。あと数分で上陸できる。歯砂間は首からかけた双眼鏡で島を覗く。浜辺にたき火と、その横にたたずむ人間らしき姿を捉えた。


再び隊員たちとシゲミに連絡を入れる。



歯砂間「喉具呂島およびターゲットと思しき人物を視認。ターゲットは一般人を人質に取っている可能性がある。もし一般人を見つけた場合、船内に保護せよ。各員、上陸準備」


???「待ってください、歯砂間支部長」



歯砂間の通信に男の声が割り込む。



???「アナタたちは沖合で待機。先行して『検体A』の実戦投入を行います」



歯砂間が乗るヘリコプターより一回り大きな迷彩柄の戦闘用ヘリコプターが後方より飛来。機体の下部に巨大な輸送用コンテナを吊るし、喉具呂島へと向かう。



歯砂間「その声……混堂こんどうか?」


混堂「お久しぶりですねぇ。近いうちに市目鯖しめさば支部へ顔を出そうと思ってました。こんなにも充実した仕事を与えてくれたお礼をしに。が、まさか海の上で歯砂間さんに再会するとは思ってませんでしたよ」



混堂とは、シゲミが攫い「りょう」で管理していた元大学教授の研究員。戦闘用ヘリコプターの中から発信している。



混堂「私は本部の指示で動いています。よって支部長であるアナタの作戦より私の行動が優先される」


歯砂間「何だと?聞いていないぞ」


混堂「ええ。アナタに極秘で進めていたことですから」


歯砂間「何を言っている?検体Aとは何だ?」


混堂「見ていればわかります。私が許可するまで隊員もシゲミも絶対に島内に入れないでくださいね。入れば死にますよ」


歯砂間「……何をするつもりだ?」


混堂「危険な邪神・ポコポコを、隊員の犠牲を払わずに駆除しようという試みです。アナタにとって悪い話ではないはずだ」



戦闘用ヘリコプターが喉具呂島の浜辺の上空に到着。ホバリングする。真下ではポコポコが腕を組みながらヘリコプターを見上げている。



混堂「さぁ、検体Aよ、存分に暴れろ」



ヘリコプターとコンテナをつないでいたワイヤーが切れ、コンテナが砂浜に落下する。視線をヘリコプターから、砂浜に突き刺さったコンテナに移すポコポコ。



ポコポコ「……お近づきの印のプレゼントか?なんや、ご丁寧やなぁ」



コンテナの中からドォンという何かがぶつかる鈍い音が数回響く。音が鳴るたびにコンテナが変形し、側面に大きな穴が開いた。穴から鋭い爪が生えた巨大な指が現れ、穴を左右に大きく広げる。



ポコポコ「動物のプレゼントか!こりゃビックリ。サプライズっちゅうやつやん」



穴から姿を現したのは直立したオオカミ・人狼じんろう。全身の毛が逆立ち、口から大量の唾液が垂れる。その後頭部から上顎まで白いドクロのような仮面に覆われている。



人狼「ぎぃしゃぁぁぁぁぁぁっ!」



人とオオカミを混ぜて生まれた人狼だが、人としての要素は後ろ足で直立していることくらい。今は体長3mもある巨大な猛獣。


対面するポコポコと人狼を、ヘリコプターの中から混堂が見下ろす。



混堂「『検体A』こと人狼。あらゆる動物をはるかに上回るパワーとスピードを持つコイツの頭に、市目鯖高校で入手した凶暴性が増すデスマスクを加工し一体化させた……さて邪神・ポコポコよ。私が開発した究極のモンスターに勝てるかな?」

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