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狙撃手を仲間にしよう①

学校から帰宅したシゲミは自室の学習机の上にスクールバッグを置く。



シゲミ「ジジ上、いるんでしょ?頼みたいことがあるの」



部屋中央の空間がゆらゆらと歪み、死装束しにしょうぞくを着たシゲミの祖父が姿を現した。



シゲミの祖父「なんじゃい?」



スカートの右ポケットから三八式実包さんぱちしきじっぽうの弾頭を、親指と人差し指でつまみながら取り出すシゲミ。



シゲミ「これの持ち主が誰か調べてほしい。三八式実包に邪気を込めて使っている狙撃手……おそらく指紋も残ってるんじゃないかと思う」


シゲミの祖父「なぜその狙撃手を特定する必要がある?」


シゲミ「人格に問題がなければ、ポコポコを倒すための仲間にしたい。近接戦闘におけるポコポコの強さは私が身をもって体感した。ポコポコとの戦いを有利に進めるには遠距離から攻撃できる仲間が要る」


シゲミの祖父「……報酬次第じゃな」


シゲミ「お金取るの?」


シゲミの祖父「ハルミに言われたじゃろ?ワシら家族は金を貰わなければ動かん」


シゲミ「ジジ上、もう幽霊なんだから生活費なんて必要ないでしょ?それにお金貰ってもどうせキャバクラ行くだけじゃん」


シゲミの祖父「キャバクラは精神を癒やす場!ワシのような魂だけの存在にとってキャバクラに行くことはれっきとした栄養補給なんじゃ!」


シゲミ「屁理屈ジジイ……」


シゲミの祖父「とにかく、調べてほしけりゃ金を用意せい!5億、いや7億じゃ!」


???「穀潰ごくつぶしが、孫に協力せい!」



シゲミの部屋の扉が勢い良く開き、迷彩柄の戦闘服を着たハルミが入ってきた。



シゲミの祖父「ハルミ!?聞いておったのか……」


ハルミ「ジジイ、お前は働きもせず家事の手伝いもしないくせにこの家に置いてもらってるという自覚がないようじゃな。働かざる者食うべからず。それが我が家の方針じゃ」


シゲミの祖父「いや、ワシも血のつながった家族なんだからこの家にいるのは当然で……」


ハルミ「幽霊のお前にもはや血なぞ流れとらんわ!どうせヒマなんじゃろ?シゲミの頼みを引き受けろ!もちろん無償でな!」


シゲミの祖父「そ、そそそそんな……」


ハルミ「のお前なら、そう難しくないはずじゃ。もし断るなら、今この場でアタシャがお前を駆除する。そしたらもう二度とキャバクラには行けんし、シゲミたち孫にも会えなくなるのぉ」


シゲミの祖父「うぐぐぎぃぃぃ……ワシが毎回指名してるホナミちゃんに会えなくなるのはイヤじゃ……でも孫に会えなくなるのはもっとイヤじゃぁぁぁっ!」



床に四つん這いになり、大粒の涙を流すシゲミの祖父。



シゲミ「惨め……」


ハルミ「ならば協力せい。3日以内に狙撃手が何者か突き止めろ」



シゲミの祖父は立ち上がり、シゲミの手から弾頭をふんだくると、壁をすり抜けて部屋の外へと出て行った。



シゲミ「ちょっと可哀想に思えてきたわ」


ハルミ「たまにはきゅうを据えてやらんとな」


シゲミ「でも3日以内って厳しくないかしら?」


ハルミ「どうしようもないボンクラジジイじゃが、情報収集能力に関しては信用してええ。アタシャが殺し屋業を始めてからずっと、クライアントやターゲットの情報はジジイに調べさせとった」



ハルミは左手に持っていた大学ノートをシゲミに渡す。表紙がボロボロで年季が入っており、市販されているものの3倍ほどの厚みがある。



ハルミ「25年ほど前か、得体の知れない企業から依頼があってのぉ。ジジイに調べさせた結果、海外マフィアが所有するペーパーカンパニーだということがわかった。そのときジジイに『関係者全員のフルネーム、生年月日、出身地、家族構成、血液型、職歴、現在までの生い立ちすべて1日で調べないと殺す』と言って脅したら、翌日そのノートを持ってきた」


シゲミ「ジジ上、だいぶこき使われてきたのね」


ハルミ「ヤツは死んだ今でも公安にコネクションを持っておる。お前が探してる人物を確実に突き止め、3日以内に戻ってくるじゃろう。アタシャが保証する」

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