AM 7:45
港町の中央付近にある役所の屋上で、朝日を眺めながら横に並んで座るポコポコ、
食べる手を止め、ポコポコに話しかけるサツキ。
サツキ「今日も友達作りに行くの?」
ポコポコはカツオを頭から丸呑みにして答える。
ポコポコ「いや、もうええわ。ここ数週間いろんな怪異と会ってわかったことがある。オレ、めっちゃ嫌われとるわ」
サツキ「だろうね。277体と会って、友達になれたの樹騎矢だけだもん」
樹騎矢「僕はポコポコ様のこと大好きですよ!喉具呂島で楽しくスローライフを送れているのはポコポコ様のおかげですからね!それにサツキさんも優しくて、好きです!」
ポコポコ「オレは勘違いしとった。友達ってのはたくさんいたほうが楽しいもんやと。でもサツキちゃんと樹騎矢がいるだけで充分楽しい。この生活がずっと続けばええなと思っとる」
サツキ「ポコポコくん……」
ポコポコ「だからもう友達作りはええねん。もちろん島に来てくれるヤツがいたら歓迎するけど、来るもの拒まず去る者追わずで、オレからは何もせーへん」
サツキ「……うん。それで良いと思うよ。友達ってアクセサリーやブランド品じゃないから、数が多ければ心が満たされるわけじゃない。仲良くできて、信頼できる友達が1人でもいれば充分」
樹騎矢「まぁ、最悪友達はいなくても生きていけますからね!僕はずっと孤独でしたし!だから今はお二人がそばにいるだけで恵まれてるなと感じます!」
サツキ「私も……今の暮らしは楽しい。ついこの前まで家に帰りたいなって思ってたけど、帰ったところで一人暮らしだし、近くに友達はほとんどいない。この島で一生過ごすのも悪くないかなって思ってる」
樹騎矢とサツキの言葉を聞き、ポコポコは両手を後頭部で組んで仰向けになる。
ポコポコ「寂しい者同士が集まったってわけやな……これは運命や。ずーっと仲良く暮らそうぜ」
サツキは横目でポコポコを見て微笑むと、再びカツオにかじりついた。
−−−−−−−−−−
AM 8:35
シゲミたちが乗る小舟が喉具呂島に接近する。小舟を操作する
歯砂間「さぁ、最初の関門だよ。振り落とされないよう全員つかまって」
身を低くし、小舟の
小舟は巡視船艇の船尾の横を抜け、どんどん距離を離す。相変わらず警告もなければ、銃撃されることもない。
シゲミ「スルーできた?」
キョウイチ「運が自分たちの味方をしてくれているのでしょう」
歯砂間「想定外だけど、これは大チャンス……喉具呂島へ全速前進だ!」
小舟は波を切るように進み、喉具呂島の埠頭に到着した。歯砂間がエンジンを止め、シゲミたちが港に降り立つ。真正面に見える港町は、建物の7割方が倒壊しており、以前の作戦でシゲミが爆破したままの状態で残っている。
鷹見沢「遮蔽物があって、かつそこそこ開けている。狙撃しやすいな」
歯砂間「シゲミさん、ポコポコの邪気は感じる?」
シゲミ「ええ。港町の中央部に
歯砂間「私たちの存在に気づいているんだろうな……ならばお望み通りこちらから仕掛ける!全員作戦通りに!」
キョウイチと皮崎はポコポコがいるという港町の中央部へ、シゲミと鷹見沢はポコポコを遠距離から狙撃できる港町の外れへとそれぞれ駆け出した。
−−−−−−−−−−
AM 8:56
瓦礫の山に囲まれた、半径50mほどある円形の地面の中心で腕を組むポコポコ。瓦礫の上をジャンプしながら、目の前に空手道着に身を包んだ裸足の男・キョウイチが着地した。
少し遅れて皮崎も着地。キョウイチから距離を取り、円形のスペースギリギリまで下がる。
ポコポコ「近づいて来てるのはわかってたで。戦いやすいよう、瓦礫を脇によけておいたわ。この周辺には誰もおらへんから、存分に暴れてもらって構わん」
キョウイチ「ポコポコだな?」
ポコポコ「いかにも。念のため確認やけど、お前も後ろの姉ちゃんも友達志願者ちゃうよな?」
キョウイチ「拳をかわせば誰でも友、と言いたいところだが貴様は例外だ。駆除せよと命を受けている。人類を滅ぼしうる危険な存在……邪神・ポコポコ」
ポコポコ「出会い頭に人のことディスりやがって。失礼なヤツやなぁ。友達にはなれそうにあらへん。せやから殺すけど……後悔すんなよ?」