にらみ合うポコポコとキョウイチ。キョウイチが駆け出し、ポコポコの顔面目がけて右の拳を突き出す。しかし拳はポコポコの足下から煙のように立ちこめたドス黒い邪気の壁に阻まれる。
キョウイチ「これが邪気か」
キョウイチは左足でローキック、左手でボディーブローを繰り出すが、やはり全て邪気で防がれた。
ポコポコ「どんな攻撃でも当たらなければ無意味や」
直後、ポコポコの左側頭部に衝撃が加わり、体勢が崩れる。その隙を見逃さず、キョウイチは右足でポコポコの頭に上段蹴りを見舞った。蹴りは邪気に防がれることなくポコポコの頭を捉える。
蹴りの勢いで体ごと大きく飛ばされるポコポコ。そしてゆっくりと立ち上がり、再び足下から邪気を発生させる。
ポコポコ「なんや?一瞬邪気が……」
今度はポコポコの右脇腹に衝撃が加わり、前のめりになる。キョウイチはジャンプしながら接近し、ポコポコの頭上から左足でかかと落としを喰らわせた。ポコポコは頭から地面に倒れる。地面にはひびが入った。
キョウイチ「まだまだぁ!」
キョウイチはもう一度左足を振り上げ、かかと落としの体勢を取る。ポコポコは体を回転させながら右横に移動し、キョウイチの攻撃を回避した。
地面を滑り、ひざまずくポコポコ。立ち上がろうとした寸前、
皮崎「捕らえました」
ポコポコ「お前ら以外にも仲間がおるな……どこかに隠れて狙撃してやがる……しかもオレの邪気を無力化する何か特殊な方法を使って……」
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ポコポコとキョウイチ、皮崎が戦う地点から北東に300mほど離れた廃屋の屋根の上。うつ伏せで
シゲミ「初弾、2弾目ともに命中。風向きは変化なく北北東、風速0.5m/s」
鷹見沢「りょうか〜い。1発5万、2発で10万。無駄にならなくて良かったよ」
シゲミ「あと何発残ってます?」
鷹見沢「通常の弾なら50発以上あるが、邪気を込めた弾は残り3発。これがフリーターの財力の限界」
シゲミ「ペース配分を考えたほうが良さそうね……しばらくはキョウイチくんと皮崎先生にポコポコの邪気を削ってもらいましょう」
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皮崎は舌をコントロールし、締め上げたポコポコの体を空中に持ち上げる。そして頭から地面に叩き落とした。皮崎の攻撃は一度では終わらない。バスケットボールをドリブルするかのように、何度もポコポコを地面に叩きつける。ポコポコの頭が地面に埋まった。
ポコポコ「アカン、酔った……気持ち悪っ」
ポコポコの体から大量の邪気が放たれ、皮崎の舌が弾き飛ばされる。舌を口の中に仕舞う皮崎。
ポコポコは両手を地面について頭を引っこ抜いて立ち上がると、キョウイチと皮崎のほうを向く。
ポコポコ「お前らの作戦、攻撃方法……概ね理解したわ。とりあえず目の前のお前らから排除させてもらうで」
ポコポコは地面を蹴り、一瞬にしてキョウイチの懐に入り込む。そして右腕でアゴを殴り、空高く浮かんだキョウイチを両腕で地面に打ち落とした。
皮崎「キョウイチくん!」
皮崎は空中のポコポコに向かって舌を伸ばす。しかし舌はポコポコの右脇に抱えられてしまった。ポコポコは舌を思い切り引っ張ると、背負い投げの要領で皮崎を数十m上空まで引っ張り上げ、瓦礫の山の上に落とした。
ポコポコ「ベロで攻撃とか、ばっちいわ」
皮崎の舌を離し、地面に着地するポコポコ。立ち上がったキョウイチがポコポコに殴りかかる。左右の拳を目にも止まらぬ速度で繰り出すキョウイチだが、すべて邪気で止められてしまった。
キョウイチの腹部にポコポコの蹴りがクリーンヒットする。体ごと吹き飛ばされたキョウイチは、瓦礫の山にめり込んだ。
ポコポコ「まだできるやろ?」
キョウイチ「む、無論だ……」
体勢を元に戻し、駆け出すキョウイチ。走る勢いのまま、回し蹴りを喰らわそうとするが、ポコポコの邪気が阻む。邪気の壁に向かって蹴りを連続で放つキョウイチだが、壁を崩すことはできない。
ポコポコ「なかなかのパワーや。邪気を使わずに受け止めたら怪我するなぁ」
ポコポコは蹴りの最中であるキョウイチの右足に左手でチョップを喰らわせる。キョウイチのすねの骨が折れた。
キョウイチ「ぐうぅぅっ!」
痛みで怯んだキョウイチの胴体に両の拳でラッシュを見舞うポコポコ。1発1発がショットガンのような威力のパンチを数十発受けるキョウイチ。だが倒れることも、後ろに下がることもない。
ポコポコ「な、なんやコイツ……バケモンか!?」
キョウイチ「チェストォォォッ!」
キョウイチはポコポコに頭突きをかます。額から血を流し、仰向けに倒れるポコポコ。
キョウイチ「あ……後は頼むぞ……みんな……」
キョウイチは膝から崩れ落ちた。