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作戦③

額から流れる血を拭いながら身を起こすポコポコ。うつ伏せで倒れ、虫の息のキョウイチに近づき、右足で後頭部を踏みつける。



ポコポコ「オレが血を流すなんて……何千年ぶりやろ?」



足に体重をかけるポコポコ。



ポコポコ「最初は遊びのつもりやったけど、そうもいかんようやな。空手家の少年よ。お前はここで殺しとかんと、オレの命が危ない」



ポコポコは右膝を曲げ、キョウイチの頭を踏み潰そうとする。足が振り下ろされる直前、皮崎の舌が猛スピードでポコポコに接近した。左足一本でバック宙をし、舌をかわすポコポコ。逃げるポコポコを舌が追跡するが、限界まで伸びきり、あと数十cm届かない。



ポコポコ「汚い攻撃は堪忍してくれや。お前も別の意味で危ないわ」


皮崎かわさき「くっ……頭皮を舐める隙がない」



皮崎は瓦礫の山の上で片膝をついたまま、舌先をポコポコからキョウイチのほうへ向けた。そして気絶するキョウイチの足首に巻き付けて引きずり、ポコポコから離そうとする。



ポコポコ「追い込まれても助け合う精神。見事やな。オレも見習わせてもらうで。これぞ友情。理想の友達や」


皮崎「__残念ですが、まだ私たちは追い込まれていません」



ポコポコの右太ももにライフル弾が当たる。



ポコポコ「いたっ!せやった、狙撃されとるんやった。どこから狙っとるんや?」



−−−−−−−−−−



三八式歩兵銃さんぱちしきほへいじゅう遊底ゆうていを動かし空薬莢からやっきょう排莢はいきょう、次弾を装填する鷹見沢たかみざわ



鷹見沢「驚いた。三八式歩兵銃は口径が小さい分威力が低い。それでも撃たれて傷ずらつかなかったポコポコが出血するなんて……やるなぁ、キョウイチくん」


シゲミ「血が出るなら殺せるはずよ」


鷹見沢「けど邪気を込めた弾丸は残り1発……慎重に狙わないとな」



鷹見沢の言葉の直後、シゲミの隣にいたキアヌが立ち上がり「フシャァァ」と低くうなる。シゲミはキアヌの変化に気づき、両目を双眼鏡から外した。キアヌの視線の先、20mほど離れた家屋の物陰から人面犬・樹騎矢じゅきやが屋根の上にいるシゲミたちを見上げていた。



樹騎矢「知らせなきゃ……ポコポコ様に知らせなきゃ!」



背を向け四つ足で走り出す樹騎矢。キアヌはその後を追いかける。



シゲミ「キアヌ!」


鷹見沢「シゲミさん、あの犬を追ってくれ。ポコポコの仲間だとしたら、俺の位置が伝わってしまう」


シゲミ「でも」


鷹見沢「ポコポコまでの距離や風向きはもうつかめた。俺一人でもなんとかなるよ」



シゲミは無言でうなずくとスクールバッグを左肩にかけ、廃屋の屋根から飛び降りてキアヌの後を追った。



−−−−−−−−−−



ポコポコは立ったまま体をバレリーナのように回転させ、足下から大量の邪気を放出する。邪気はポコポコの体の動きに合わせて渦を巻き、巨大な竜巻を形成した。


竜巻に飲まれる皮崎とキョウイチ。上空へ大きく吹き飛ばされるが、皮崎の舌はキョウイチの足首をつかんだまま。舌を口の中へ勢い良く引き戻し、皮崎はキョウイチの体を両腕でキャッチする。



ポコポコ「必殺・邪気トルネード!この技なら360度邪気の暴風で囲める。どこから弾が飛んできても関係あらへんわ」



最初に戦っていた地点から100m以上離れた家屋の屋根の上に着地した皮崎。しかし足を滑らせて落下し、地面に背中と後頭部を強く打ちつけて気を失う。


邪気の暴風の外、走る樹騎矢が足を止め、竜巻の中心にいるポコポコに向かって大声で叫ぶ。



樹騎矢「ポコポコ様ぁ!北東約300mの地点から狙撃手がぶぼはっ!」



喋る樹騎矢の右頬にキアヌが思い切り頭突きをした。突き飛ばされて地面を滑る樹騎矢。そしてキアヌに馬乗りにされ、顔面を何度もひっかかれる。


邪気の竜巻が止んだ。ポコポコは樹騎矢の指示に従い、北東の方角を向く。



ポコポコ「サンキュー樹騎矢。後で助けたるから、ちょっと待っとけよ」



大きく縦に口を開けるポコポコ。口の前に邪気が集まり、ボーリングの球程度の大きさの黒い球体を作り出す。



ポコポコ「必殺・邪気レーザー……発射ぁぁぁっ!」



ドス黒い光線が瓦礫の山を蹴散らしながら、真っ直ぐ北東へと突き進む。光線の先には歩兵銃を構える鷹見沢。うつ伏せの状態からしゃがみ込み、屋根からジャンプした。光線は廃屋を飲み込み、まるごと消し去る。あと数秒遅れていたら、鷹見沢も消滅していた。



鷹見沢「あんな攻撃、無法にもほどがあるだろ……場所を変えないとヤバイ」



ポコポコは再び口の前に邪気の球体を作り出す。



ポコポコ「念には念を入れてもう1発いきまっせぇ!出血大サービスや!お釣りはとっときぃ!」



2発目の邪気レーザーを放とうとするポコポコ。しかし邪気の球体は光線になることなく、その場で霧散した。



ポコポコ「しまった。邪気を使い過ぎ……た……か……」



邪気が切れて体に力が入らなくなり、左膝を地面につくポコポコ。その瞬間、ポコポコの右肩に擲弾てきだんが当たり、爆炎が全身を包んだ。

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