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作戦④

ポコポコ「あがぁぁぁああぁぁあっ!」



全身が焼け焦げ、地面を転げ回るポコポコ。その様子を瓦礫の上から見下ろすシゲミ。手元ではグレネードランチャーから擲弾てきだん薬莢やっきょうを排出。そして左肩のスクールバッグから新たに擲弾を1つ取り出し、グレネードランチャーに装填した。転がるポコポコを狙って引き金を引く。


ポンッという軽い音とともにグレネードランチャーの銃口から擲弾が射出。ポコポコに当たり爆炎を生む。



ポコポコ「ああぁぁぁがぁぁぐぁぁぁぁっ!」


シゲミ「アナタを守る邪気はもう存在しない」



シゲミはグレネードランチャーに擲弾を再装填。その間にポコポコは転がりながら自身の体を燃やす火を消して、フラフラと立ち上がった。



ポコポコ「この……程度で……オレがぁぁぁ負けるかぁぁぁっ!」



シゲミに向かって一直線に駆け出すポコポコ。シゲミはスクールバッグに手を突っ込み、手榴弾をポコポコの足下に放り投げる。


ポコポコは走るのを止め、爆発を避けるためにジャンプして後退する。しかし手榴弾は爆発しない。



ポコポコ「安全ピンを抜いてへん!?フェイントか!」


シゲミ「ずいぶんビビってるようね」



シゲミはポコポコにグレネードランチャーを撃ち込む。再びポコポコの体を爆炎が飲み込んだ。


ボクサーパンツ以外全ての衣服が燃え尽き、皮膚が所々黒焦げになったポコポコは、叫び声を上げることなくその場にうつ伏せで倒れ込む。


グレネードランチャーの弾を全て使ったシゲミ。瓦礫の山を滑り降りながらスクールバッグから手榴弾を2つ取り出して、口で安全ピンを咥えて引き抜く。そして地面に足が着いたと同時にポコポコのほうへ転がした。


頭だけを回転させ、シゲミを見上げるポコポコ。眼前に手榴弾が迫るものの、体が動かず避けられない。



ポコポコ「お嬢ちゃん……前に遊んだよな?……名前は?」


シゲミ「爆弾魔シゲミ」



ポコポコは笑顔を浮かべた。直後、手榴弾が爆発し噴煙が上がる。さらにシゲミは追撃を加えるべく煙の中へ手榴弾を3つ投げ込んだ。空高く登る土煙がポコポコの体を完全に覆う。


風が土煙をさらった。ポコポコはうつ伏せに倒れたままピクリとも動かない。


グレネードランチャーをスクールバッグに仕舞い、ヘッドセットのマイクに向かって話しかけるシゲミ。



シゲミ「歯砂間はざまさん、みんな……ポコポコを仕留めました。すぐに港町の中央まで」



突如ポコポコが起き上がり、シゲミに殴りかかる。



シゲミ「コイツまだ」



応戦しようとするが間に合わない。ポコポコの拳がシゲミの顔面に迫る。その刹那、キアヌの空中ドロップキックがポコポコの左頬に突き刺さった。


口から血を吐き倒れるポコポコ。白目を剥き、意識を失う。


渾身の蹴りを見舞ったキアヌは、4本の足で華麗に着地した。



シゲミ「キアヌ……アナタ美味しいところをかっさらったわね」



シゲミの足にすり寄り、体をよじ登ってスクールバッグの中に戻るキアヌ。


シゲミの背後から歯砂間が近づいて来た。



歯砂間「やったのね、シゲミさん」


シゲミ「と思ってましたが、まだです。ポコポコはまだ生きている。C-4で体をバラバラに吹き飛ばします」



シゲミはスクールバッグからC-4を取り出し、ポコポコに歩み寄る。



???「そこまでだ」



空から男性の大きな声が喉具呂のどぐろ島全体に響いた。拡声器を通したような声。辺りを見回すシゲミと歯砂間。島の上空に十数機のヘリコプターが飛来し、各機から垂れ落とされたロープを伝って武装した「りょう」の特殊部隊員たちが降下する。


シゲミ、歯砂間、ポコポコを取り囲む特殊部隊員およそ80人。サブマシンガンをシゲミたちに向ける。



歯砂間「お前ら、誰の指示で動いている?」


男性隊員「両手を挙げろ」


歯砂間「無視か……シゲミさん」


シゲミ「これだけの数を相手にするのは無理ですね」



指示に従い両手を挙げるシゲミと歯砂間。シゲミは右手に持っていたC-4を地面に落とす。


ヘリコプターのうち1機が着陸し、機体から男性たちが降りる。「魎」の理事・駒野こまのと黒スーツの調査員2人。


特殊部隊員は駒野たちが通れるよう道を作る。駒野を先頭に3人がシゲミと歯砂間に向かって歩いてきた。



歯砂間「駒野……さん。なぜアンタがここに?」


駒野「前に言っただろう?『歯砂間支部長がポコポコについて嗅ぎ回っている』と報告があったと。だから行動を監視していたのだよ」


歯砂間「……『魎』の誰にもバレないよう行動していたのに」


駒野「完璧に対策したはずの家にもネズミやゴキブリがわくように、どこにでも抜け道はあるものだ」


歯砂間「私たちを泳がしていたのか……」


シゲミ「……」


駒野「歯砂間支部長が素晴らしい作戦を立案していると聞いてね。一か八か賭けてみたのだよ。結果あのポコポコを戦闘不能に追い込むとは、私の見込んだとおりだな。ご苦労。ここからは先は私たちの仕事だ」


歯砂間「……どうするつもりです?」


駒野「ポコポコは『魎』の本部で管理する。回復したら首輪をつけて、怪異の駆除に使うのさ。これだけの戦力を手放すのは惜しい」


歯砂間「ポコポコは危険です。ここで始末しておかなければ、後々とんでもないことになる……」


駒野「はいそうですかと引き下がると思うかね?お前たちには今、約80の銃口が向いている。私が指示すれば一瞬であの世行きだ。お前たちに交渉の余地などない。私に従え。悪いようにはしない。歯砂間支部長、今回の功績は上層部に伝えてやる。昇格は間違いなしだろう」


歯砂間「……」


シゲミ「……」


駒野「さぁ、わかったらどきたまえ」



シゲミと歯砂間は特殊部隊により眼前に銃口を突きつけられ、後退させられる。


意識を失ったポコポコを拘束するため特殊部隊員4人が近づこうとしたそのとき、サツキがポコポコをかばうように間に割って入った。

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