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作戦⑤

両手を広げ、特殊部隊員たちが近づけないようポコポコを守るサツキ。



サツキ「待ってください!彼は……ポコポコくんはこの島でのんびり暮らしたいだけなんです!放っておいても何もしません!だから……彼を見逃してください!」



言葉なくサツキを見つめるシゲミと歯砂間はざま



サツキ「もし彼が心変わりして人間を襲い始めたとしても私が説得します!もう誰にも迷惑をかけないようにします!だからお願いです!」



サツキをにらみながら駒野こまのが口を開く。



駒野「民間人が人質にされていると聞いていたが、キミか……悪いがポコポコは我々『りょう』が回収する。コイツは大勢の人間を殺した危険な怪異だ。これから改心したとしても、もう遅い」


サツキ「お願いです!更生の機会を与えてください!そうでなければ、私はここを動きません!」



駒野はわざとらしく大きなため息を吐く。



駒野「……だいぶポコポコに肩入れしているようだな。ストックホルム症候群というやつか。実力行使といきたいところだが、『魎』は怪異から人々を守ることを目的とした組織。どんな理由があれ、保護対象である民間人を攻撃することは固く禁じられている。武装していないのなら尚更だ」


サツキ「お願いです!見逃してください!」


駒野「私たちがキミに手を出せないとわかって飛び込んできたのなら、その判断は見事だよ。今のキミがポコポコを守るためにできる最善策だろう。現に我々『魎』はキミに対して何もできない……『ね」



銃声が響きサツキの左胸、白いブラウスが血で赤く染まる。両目を開いたまま、背中から仰向けで地面に倒れるサツキ。


その場にいた全員が、銃声がしたほうへ体を向ける。視線の先、瓦礫の山の上に立って三八式歩兵銃さんぱちしきほへいじゅうを構える鷹見沢たかみざわがいた。銃口から細い煙が昇っている。



シゲミ「鷹見沢さん……」


歯砂間「どうして……?」



瓦礫の山を下り、駒野の右隣に並び立つ鷹見沢。



鷹見沢「俺はまだ『魎』の所属じゃないから、撃っちゃっても良いんすよね?」


駒野「ああ。私が言わんとしていることを理解して即行動してくれるとは、機転が利くな、鷹見沢くん。だがキミは彼女を狙ったわけじゃないだろう?。そうだな?」


鷹見沢「……ですね。威嚇射撃のつもりでした」


シゲミ「どういうこと?なぜ鷹見沢さんが?」



鷹見沢は小さく笑顔を浮かべてシゲミを見る。



鷹見沢「すまないな、シゲミさん。実は『魎』からめちゃくちゃ良い条件でオファーをもらっちゃってさ。歯砂間さんが指揮する討伐作戦の情報を流し、俺を年収600万で雇ってくれるって言うもんで」


歯砂間「……だからこんなにタイミング良く駆けつけられたのか。巡視船艇を素通りできたのも、今日あの時刻に私たちが来ることを知っていたから……そういうことか!?駒野ぉ!鷹見沢ぁ!」


駒野「鷹見沢くんは実に上手く働いてくれた」


シゲミ「鷹見沢さん、裏切っていたのね」


鷹見沢「そうとも言えるし、違うとも言える。俺はしっかり作戦に協力しただろ?遠距離からポコポコを狙撃し、邪気を無効化する。それが俺の役割だったはずだ」


シゲミ「……」



駒野は大声で特殊部隊員たちに指示を出す。



駒野「ポコポコを拘束し、移送用アンテナに格納しろ。民間人の遺体は回収して本部で焼却処分。証拠が出ないようにしろ。歯砂間支部長も本部へ。その部下たちに用はない。怪我をしているようだから病院に搬送してやれ」


男性隊員「駒野さん、はどうしましょう?」



一人の男性隊員が両手で樹騎矢じゅきやの両前足をつかんだまま駒野に近寄る。樹騎矢は万歳した体勢で身をくねらせながら「こんなことをしてただで済むと思うな!」「お前たちは全員ポコポコ様に殺される!」と喚いている。



駒野「人面犬か。良い研究対象になるかもしれんな。ソイツも拘束して移送しろ」



ポコポコの上半身と足首に太い鋼鉄製の拘束具がつけられ、担架でヘリコプターとワイヤーでつながったコンテナの中に樹騎矢とともに収容された。サツキの遺体は黒いシートにくるまれ担架でヘリコプターの中に運ばれる。シゲミ、歯砂間、そして意識を取り戻した皮崎かわさきとキョウイチは結束バンドで両手首を縛られた状態で別のヘリコプターに乗り込んだ。



それから1時間にわたり特殊部隊員たちが喉具呂のどぐろ島を捜索。ポコポコとサツキが生活していた痕跡などを動画や写真に収めた。


喉具呂島から飛び立つ十数機のヘリコプター。シゲミはヘリコプターの窓から遠ざかる喉具呂島を黙って見つめた。



<VS ポコポコ様 Round2>

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