両手を広げ、特殊部隊員たちが近づけないようポコポコを守るサツキ。
サツキ「待ってください!彼は……ポコポコくんはこの島でのんびり暮らしたいだけなんです!放っておいても何もしません!だから……彼を見逃してください!」
言葉なくサツキを見つめるシゲミと
サツキ「もし彼が心変わりして人間を襲い始めたとしても私が説得します!もう誰にも迷惑をかけないようにします!だからお願いです!」
サツキをにらみながら
駒野「民間人が人質にされていると聞いていたが、キミか……悪いがポコポコは我々『
サツキ「お願いです!更生の機会を与えてください!そうでなければ、私はここを動きません!」
駒野はわざとらしく大きなため息を吐く。
駒野「……だいぶポコポコに肩入れしているようだな。ストックホルム症候群というやつか。実力行使といきたいところだが、『魎』は怪異から人々を守ることを目的とした組織。どんな理由があれ、保護対象である民間人を攻撃することは固く禁じられている。武装していないのなら尚更だ」
サツキ「お願いです!見逃してください!」
駒野「私たちがキミに手を出せないとわかって飛び込んできたのなら、その判断は見事だよ。今のキミがポコポコを守るためにできる最善策だろう。現に我々『魎』はキミに対して何もできない……『
銃声が響きサツキの左胸、白いブラウスが血で赤く染まる。両目を開いたまま、背中から仰向けで地面に倒れるサツキ。
その場にいた全員が、銃声がしたほうへ体を向ける。視線の先、瓦礫の山の上に立って
シゲミ「鷹見沢さん……」
歯砂間「どうして……?」
瓦礫の山を下り、駒野の右隣に並び立つ鷹見沢。
鷹見沢「俺はまだ『魎』の所属じゃないから、撃っちゃっても良いんすよね?」
駒野「ああ。私が言わんとしていることを理解して即行動してくれるとは、機転が利くな、鷹見沢くん。だがキミは彼女を狙ったわけじゃないだろう?
鷹見沢「……ですね。威嚇射撃のつもりでした」
シゲミ「どういうこと?なぜ鷹見沢さんが?」
鷹見沢は小さく笑顔を浮かべてシゲミを見る。
鷹見沢「すまないな、シゲミさん。実は『魎』からめちゃくちゃ良い条件でオファーをもらっちゃってさ。歯砂間さんが指揮する討伐作戦の情報を流し、
歯砂間「……だからこんなにタイミング良く駆けつけられたのか。巡視船艇を素通りできたのも、今日あの時刻に私たちが来ることを知っていたから……そういうことか!?駒野ぉ!鷹見沢ぁ!」
駒野「鷹見沢くんは実に上手く働いてくれた」
シゲミ「鷹見沢さん、裏切っていたのね」
鷹見沢「そうとも言えるし、違うとも言える。俺はしっかり作戦に協力しただろ?遠距離からポコポコを狙撃し、邪気を無効化する。それが俺の役割だったはずだ」
シゲミ「……」
駒野は大声で特殊部隊員たちに指示を出す。
駒野「ポコポコを拘束し、移送用アンテナに格納しろ。民間人の遺体は回収して本部で焼却処分。証拠が出ないようにしろ。歯砂間支部長も本部へ。その部下たちに用はない。怪我をしているようだから病院に搬送してやれ」
男性隊員「駒野さん、
一人の男性隊員が両手で
駒野「人面犬か。良い研究対象になるかもしれんな。ソイツも拘束して移送しろ」
ポコポコの上半身と足首に太い鋼鉄製の拘束具がつけられ、担架でヘリコプターとワイヤーでつながったコンテナの中に樹騎矢とともに収容された。サツキの遺体は黒いシートにくるまれ担架でヘリコプターの中に運ばれる。シゲミ、歯砂間、そして意識を取り戻した
それから1時間にわたり特殊部隊員たちが
喉具呂島から飛び立つ十数機のヘリコプター。シゲミはヘリコプターの窓から遠ざかる喉具呂島を黙って見つめた。
<VS ポコポコ様 Round2>