サツキが殺されたという
ポコポコ「ほんまなんやろな?オレは、サツキちゃんは治療中だと聞いとったが」
樹騎矢「真実です。この目で見ましたから。『
ポコポコ「……」
ポコポコは体を、背後にいるリュウジのほうへ向ける。
ポコポコ「カマキリ男……リュウジっつったな?人類殲滅のためにオレの力が必要なんやろ?」
リュウジ「はい」
ポコポコ「答え、保留にしとったが、力を貸したる。サツキちゃんがいないなら、オレがこの世に生きてる理由はもうない。人間どもを何十億人でも道連れにしたるわ」
樹騎矢「僕も、ポコポコ様とご一緒させてください」
ポコポコ「ええんか?樹騎矢。お前も死ぬことになるかもしれんぞ?」
樹騎矢「ポコポコ様もサツキさんもいない世界なんて、考えられません」
ポコポコ「……ありがとな。気持ちはうれしいが、お前は顔が人間ってだけで他はただの犬と変わらへん。いや犬の中でも弱小や。どっかに隠れとけ」
うつむく樹騎矢。リュウジが右膝を床につき、右手で樹騎矢の頭をなでる。
リュウジ「樹騎矢とやら、後ほど我々マンティノイドの極秘シェルターに案内する。そこにいれば安全だろう」
樹騎矢「……どうも」
樹騎矢から手を離し、ポコポコに顔を向けるリュウジ。
リュウジ「我々マンティノイドの戦闘員がともに戦います。ポコポコ様の邪魔にはなりません」
ポコポコ「さよか」
リュウジ「ちなみに、ポコポコ様が人類滅亡を決めるほど、サツキという方は大切な人間だったのでしょうか?」
ポコポコ「……親友や」
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怪異研究機関「魎」本部ビル 地上8階 廊下
体を回転させ、チェーンソーを真横に一周させるリオ。前方にいたイリナと後方にいたケンヤの胴体をチェーンソーの刃が通過し、上半身と下半身に分断した。傷口から白い体液がブシュゥッと音を立てて噴き出す。
床に崩れ落ちたイリナとケンヤ。リオはそれぞれの頭にチェーンソーを突き刺し、息の根を止めた。
リオ「カマキリが人間サイズになったら地上最強って説があるが……再考の必要ありだぜ」
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「魎」本部ビル 地下11階
収容室に隔離されていた、細くて白い体をした人型の怪異・くねくねを、掃除機で吸い込むかのように一飲みにするポコポコ。樹騎矢とリュウジを伴い、収容室から外の廊下に出る。
リュウジ「ここより上階に怪異はおりません。今し方食された怪異が最後かと」
ポコポコ「ああ、もう満足や。だいぶ腹一杯で、力が戻ってきたわ。いや戻ったどころか、発情期みたいに元気いっぱいやで!」
ポコポコの足下からドス黒い霧が立ちこめる。非常に濃い邪気。ポコポコと同じく怪異である樹騎矢とリュウジだから
樹騎矢「ポコポコ様!
ポコポコ「邪気を持つ怪異を食うと、オレの体内で保有できる邪気の絶対量が大幅に増える……300体も食ったんや。オレは今までの10倍、いや27倍は強くなっとるはずや!」
樹騎矢「どういう計算なのかわかりませんが、さすがです!」
盛り上がるポコポコと樹騎矢。表情や言葉には出していないが、リュウジも歓喜していた。ポコポコが力を増していることは、放つ邪気の量から明らか。これだけの力があれば、人類に対抗する強力な兵器になることを確信できたからだ。
ポコポコ「でもまだちょっと食い足りひんのよな。軽食が欲しいわ」
樹騎矢「その気持ちわかります!別腹ってやつですよね!味を変えて、怪異以外のものも食べたらいかがでしょう?」
ポコポコ「せやなぁ。なんかさっぱりしたもんが……いって」
ポコポコの左側頭部に銃弾が当たる。衝撃で頭が右に倒れたが、怪我は負っていない。
銃弾が飛んできた方向を見るポコポコ、樹騎矢、リュウジ。30mほど先に、黒い戦闘服に身を包み、
ポコポコ「なんだぁ?」
樹騎矢「アイツ……ポコポコ様!アイツです!サツキさんを撃った人間!間違いありません!」
鷹見沢は
ポコポコ「そうか。サツキちゃんを
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「魎」本部ビル 1階
チェーンソーを左肩に担ぎながら階段を下りて来たリオは、広いロビーに出る。「魎」職員の死体が数十体転がっているだけで、生存者は誰もいない。
リオ「もう全員くたばっちまったのか?もっと楽しませてくれや」
リオから見て右手側、エレベーターが1機起動し、下の階から上がってくる。チェーンソーを両手で握るリオ。
リオ「まだ生きてるやつがいたか……そうこなくちゃ」
エレベーターは1階で停止し、扉が開く。中からポコポコを先頭に、樹騎矢、リュウジが出てきた。ポコポコは右手で鷹見沢の首を握り、持ち上げている。鷹見沢の両手、両足は根元で引きちぎられており、大量に流血。腹部は縦に切り裂かれ、引きずり出された小腸をポコポコがすすっていた。
鷹見沢「がっ……かはっ……」
鷹見沢の腸が途中で千切れ、ポコポコの口の中に吸い込まれる。
ポコポコ「人間を生きたまま四肢をもいで食べる『小腸そうめん』。新鮮でさっぱりしてて、軽食に持って来いなんよなぁ」
かろうじて生きていた鷹見沢の呼吸が止まった。
ポコポコ「あら、死んでしもた。生きているうちに食べるのが美味いのに……ほんならもういらん」
鷹見沢の体を放り捨てるポコポコ。頭と胴体しか残っていない、マトリョーシカのような鷹見沢の体が硬い床の上を滑った。
ポコポコの食事を10mほど離れて見ていたリオ。チェーンソーのストラップを引き、エンジンをかける。
リオ「はっは……はーっはっはっはっ!わかる……わかるぜぇ……レベチなヤツが来やがった」