動物園。
昔あった、動物を見せる公園だ。
大半の大型動物は、
パンダの増殖で滅びた。
パンダを守ろうとした政策が裏目に出た。
政府は責任を取らなかった。
動物愛護団体は、もみ消された。
パンダ愛護団体ができて、
パンダのための地球を過激に歌っている。
動物園はなくなった。
牧場というものはかろうじてあって、
それでも野良三毛パンダの襲撃に、
戦々恐々としている状態だ。
肉や毛皮は高騰した。
パンダ毛皮をつけていると、
それだけでアンチパンダととられ、
政府側の人間にひどい目に合わされる。
パンダの毛皮は、白と黒と分けられ、
一目でパンダとわからないように売り出された。
市場には、白い毛皮と黒い毛皮が流通した。
パンダのため。
動物園はなくなり、
パンダのため、
生活は変わった。
かつてのパンダのメッカと呼ばれた、
動物園の廃墟が、取り壊されるらしい。
それを聞きつけた若い二人が、
昔ながらの移動手段、
電車を乗り継いでやってきた。
エコカーという手段もあったが、
昔のことを感じたかった、それだけだ。
動物園の廃墟。
よく残しておいたと思うほど、
ぼろぼろになっていて、当時の面影はない。
ここに何万人の人が訪れ、
パンダがやってきたときは大行列だったという。
何百年も前の話だ。
パンダのメッカ。
だからこの廃墟は、半ば遺跡として残っていた。
けれど、相次ぐアンチパンダの声に、
政府も残しておけなくなったのかもしれない。
立ち入り禁止のセンサーをかいくぐる。
二人は、廃墟を散策する。
当時、たくさんの動物がここにいた。
客を寄せるパンダと別にいた。
のんびり餌を食んでいたんだろうか。
そして、ものめずらしそうに見ている人間を、
観察していたんだろうか。
その当時のパンダはとてもおとなしかったと聞く。
二人はパンダ舎を見る。
当時のパンダの、ボードがはられている。
色あせてもパンダだ。
ここにたくさんの人が訪れた。
今は、廃墟散策の二人しかいない。
動物すらいない。
生きているものが失われたんじゃないかというような静寂。
昔の人は何を感じて、
何を求めて動物園があったのだろう。
何を求めてパンダを見ていたのだろう。
そしてパンダは、
並ぶ人間に何を見ていたのだろう。
二人は動物園の廃墟に立ち尽くす。
「案外さ」
片方が話し出す。
「何もなくなったこの世界に、進化したパンダが文明築くかも」
もう片方がうなずく。
人が滅びるのを考えるのは好きでないが、
案外パンダがうまくやるかもしれない。
パンダ文明。
それは白黒はっきりしているのかもしれない。