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第45話◇大人の階段を上った小雪◇

 お船の上で初体験。小雪の大人への儀式は類を見ないほど特殊なものになった。


「お兄ちゃん好き♡ ラクトお兄ちゃんより好きっ♡ もうあの人はどうでもいいの♡」


 ここにきていきなりの主人公の名前。多分心のどこかで吹っ切れていなかったのだろうな。


 だが処女を捧げたことで俺への思いに心が振り切れたようだ。


「幼馴染みのこと、好きだったんだな」

「好きだった、でも、違うのっ、小雪こゆきには、それしか、選択肢がなかっただけ……亮二お兄ちゃんにあって、格好よくて、心がビリビリきて、ホントに、格好いいって、思ったの」


「そうか。じゃあ小雪こゆきにとって格好いいお兄ちゃんで有り続けないとな」


 スキルのおかげであるが、小雪こゆきの心は完全に主人公を振り切った。

 そして俺一色に染まって自分を捧げている。


 喜びにむせびながら心の内を吐露する小雪こゆきの頭を撫でてキスをする。


「でも、小雪こゆき、こんなに簡単に変わっちゃっていいのかな。ずっとラクトお兄ちゃんのこと、好きだったのに」

「人の心が変わる時って案外一瞬だよ。恋は新しくなっていくものさ。もちろん、もう俺以外の誰にも恋なんかさせないけどな」

「うん♡ 亮二お兄ちゃん、ずっと小雪こゆきの格好いいお兄ちゃんでいてほしい」

「ああ、頑張るよ。初恋は実らないっていうけど、小雪こゆきの恋を素敵なものにしてあげるからね」

「うん、ありがとう亮二お兄ちゃん」


 ◇◇◇


小雪こゆき、とっても幸せ。あんな初体験、普通は絶対できないもんね。それに、なんだか体が軽くなったような気がする。いつもより歩くのが辛くない。息切れも動悸もしない」

小雪こゆきに元気を注入できたみたいだな」

「うん♡」


 ボートの上で初体験。妖精さんのおかげでまた一つ貴重な経験ができた。


「でも、ちょっとだけお股がガクガクして、まだ何か入ってるみたいな感じがする」


 そんな事言われたらまた滾ってしまうぞ小雪こゆきちゃんや。


 ひょこひょこと少しだけびっこを引く小さな女の子というのは犯罪的に可愛いじゃないか。


 家路に着こうと電車に乗ったところで、小雪こゆきは再び手を繋いで甘え始め、俺は彼女の肩を抱き寄せて恋人っぽくくっ付きあう。


 終始幸せ全開モードで地元の駅に到着し、小雪こゆきを家まで送って玄関に到着したところで、再び小雪こゆきの甘えん坊が発動した。


「お兄ちゃん、小雪こゆき、1人寂しい。今日は泊まってって」

「そうだな。そうしてやりたいが、この後は彩葉いろは達とデートする約束なんだ」

「じゃあ小雪こゆきも一緒がいい」


「そうか。よし、じゃあ彩葉いろはに電話してお願いしてみろ。俺が言えば嫌とはいわないだろうが、そういうのは自分で決断するんだ」

「うん、分かった」


 小雪こゆきは早速スマホを取り出して彩葉いろはに電話し始めた。


 小雪こゆきの場合、意志の弱さ故に周りに振り回され、また他人とのコミュニケーションの取り方をしらない故に、言葉によるトラブルを起こすことがあった。


 その為の訓練はゲーム本編内だとルートに入ってからのクライマックスに行なわれる。


 あれは小雪こゆきにとって成長に欠かせないイベントだが、本来は長い人生の中でゆっくりと学んで行けばいい価値観だ。


 だから俺達の仲間内で少しずつその訓練をしていこう。


「大丈夫だって。小雪、お兄ちゃんのお家いきたい」

「よーし、そんじゃあ今夜はたっぷり可愛がってやるからな」

「うん♡」


◇◇◇


「おっ? あれは……」


 小雪こゆきの家から我が家へと急いで戻ろうとした時、俺の最寄り駅近くで主人公を発見した。


 そこは駅近くに隣接するホテル街。

 例の清楚ビッチである山本恵美と腕を組み、近くのラブホてるにしけ込んでいる所だったのだ。


 丁度良く二人してホテル入っていこうというところであり、俺はとっさに身を隠した。


 恵美の方は俺に気が付いたようで、ペロリと舌なめずりをして「いただきます♪」のアイコンタクトを送ってきた。


 これでアイツが幼馴染み達に興味をなくしてくれたら万々歳だ。


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