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05 面談するカイルズ_05

   *          *


「その女は、とても見目麗しく、冬の寒さにも拘わらず薄い皮鎧を身に付けた軽装で、……何でも隣国コリンドとの国境の大森林で、最近は狩りをして過ごしているとのことです」


「ふむ、……」


 家令の話に、カイルズは、ここで考え込んでしまった。ハルコンの兄姉達も心配そうに父を見つめている。


 ハルコンは、さて、どうしようかな? と思った。

 ここで、さっそく一級剣士の頭の中に「天啓」を放り込んでみた。


「何かあったら、我がその女達を切り捨てる故、とりあえず招いてみては如何か?」


 剣士は、ハルコンの「天啓」を一字一句違えることなく、カイルズに申し出た。


「剣士殿が、そう仰られるのであれば、大変心強い。その者が真の客人であるのなら、私が出迎えるべきでありましょう。剣士殿、手間になりますが、一緒にきて頂けるだろうか?」


「あぁ。我も参りますぞ!」


 カイルズは家令の制止も聞かず、一級剣士と共に屋敷の門に向かっていた。

 すると、夜風の吹く寒空の下、篝火の傍に群がる盗賊達の中から、若い女が前に進み出た。


「夜分に申しワケねぇです。カイルズ卿に会わせて頂きてぇのですが!」


「私がカイルズ・セイントークだ。こんな夜分に、一体何用だ?」


「えっ!? 貴方様がカイルズ卿でごぜぇますか!? ありがてぇ、ありがてぇ、……」


 そう言って、深々と首を垂れる女盗賊。


 ハルコンは、おそらく父は女盗賊を受け容れるのではないかと思っている。

 そもそも女盗賊は、カイルズに対し、何ら敵意も害意もない。彼女の態度には、幾ばくかの謙虚さが見られるので、たぶんイケるんじゃないかなぁと。


 カイルズは、ここで漸く小さくため息を吐く。


「何故、私に会いたいと申すか? それは、今宵でないとダメなのか?」


 カイルズは、いつもの落ち着いた調子で訊ねていた。


「へへっ、アタイッ、ちょっち前に『天啓』を頂いたんでやすよ!」


「『天啓』……だと!?」


「ほらっ、カイルズ卿に会いにいけとね。男の子の声でやしたよ!」


 それを聞いて、背筋をゾクリとさせるカイルズ。


「アタイら、皆ハルコン殿の舎弟だからっ!」


 そう言って、屈託なく笑う若き女盗賊。その表情に、嘘偽りは微塵も見えない。

 カイルズは、……ここで腹を括るべきとばかりに、膝を打つ。


「いいだろう。其方を屋敷に招き入れよう。残りの者は離れに部屋を用意する。暖と食事もちゃんと取らすので、……それでよろしいか?」


「ありがてぇっ! オメェらっ! ちゃんと大人しくしてろよっ!」


「「「「「「「「「「へいっ!」」」」」」」」」」


 男達の野太い声が、夜空に鳴り響いた。

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