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さて、……寮の裏庭の会場では、係の者が次々と参加者達の手提げ花火に着火して回っている。
「うわっ、凄ぇーっ! 炎が噴き出してくるっ!?」
「凄い、凄いっ、凄いっ! とっても綺麗ぇーっ!?」
「わはっ。この花火っての、面白ぇーやっ!!」
会場のあちらこちら、至るところから歓声が起こり、花火の美しさ、明るさ、楽しさに大興奮の様子が窺えた。
もちろん、近場同士で花火の炎を被ることになると危ないので、係の者が細心の注意を払いながら着火して回っている。
学生達に配られた手提げ花火は、ハルコンの計算通りに七色に炎の色を変え、最後にスッと音もなく消えてゆく。
参加者達は皆、魅入られたようにその炎を見つめ終えると、次々と別の花火が係の者達によって再び用意されていく。
地面に、もの凄い速さで回転しながら、炎を吹き出してゆくねずみ花火。
爆竹を鳴らす音に、皆、目を丸くする。
会場中のあちらこちらから、悲鳴とも笑いとも言えるような声が、男女問わずに広がっていく。
途中から、ミラやサリナ姉達が係の者を手伝う形で、着火の役を買って出た。
どうやら、花火に火を着けるのが楽しいから、……そんな理由でなおさら手伝ってくれるのかもしれないなぁとハルコンは思った。
そろそろ会場内の参加者達は総興奮状態になっていって、更なるイベントを期待しているように見受けられた。
ハルコンはミラを見た。
すると、ミラも「うん」と言って、こくりと意志的に頷き返してくる。
それではと、……さっそくミラに手伝って貰うことにした。
会場の真ん中の空いたスペースに、2人して床設置化型の花火を等間隔に10数基並べていく。
「よしっ! 準備OKッ!!」
「こっちも、準備OKだよっ!!」
ハルコンの掛け声に、ミラもサムズアップしてニヤリと笑う。
「ならっ、頼むよミラッ!!」
「ではっ、いっくよぉ~っ!!」
そう言って、10数基の床設置型花火を繋ぐ導火線に、ミラが着火した。
その数秒後、……。
「「「「「「「「「「ワァァーーッッ!!」」」」」」」」」」
ほぼ同時に空に向けて高さ3メートル程(地球のモジュールに換算しています)の七色の炎の柱が立つと、学生達の間から更なる歓声が沸き起こった。