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34 王立学校祭 その1_02

   *          *


「ハルコン、……後で話いいかしら? とっても大事な話があるの!」


 サリナ姉のその言葉に、ハルコンは不思議になって、ひとつ頷いた。

 ふと周りを見ると、ロスシルド家のイメルダが姉の話に関心を示したのか、聞き耳を立てている様子が窺えた。


 ハルコンはサッと機転を利かせると、その場に立ち上がって姉の耳元に口を近づける。


「どうされましたか、姉様? 大事な話って何です?」


 普段の姉はこんなに深刻な表情をしないし、笑顔の似合う少女だ。

 それに、隣りのミラまで珍しくしょんぼりとしているではないか。


 何だろう。何かトラブルでも起こったのだろうかと、いささか心配になった。

 すると、サリナ姉もまたハルコンに耳打ちしてきた。


「悪いけど、この場で話せることじゃないの。後で、私達の(女子寮の)部屋まできてくれないかしら?」


「えぇ、構いませんよ。そんなに大事な話なら、直ぐに部屋まで伺います!」


「ありがとう、ハルコン。さすが我が弟! ホンと頼りになるわ!」


 そう言って、姉サリナがニッコリと微笑んだ。


「なら、先にいくわねハルコン。私は部屋で準備して待っているから! ハルコンは食事が終わったら、ミラちゃんと後から一緒にきてね!」


「了解です、姉様」


 その言葉にひとつ頷くと、姉は元きた通路を足早に戻っていった。


 ハルコンは、その場に残されたミラが悄然とした雰囲気のため、とりあえず隣の空いた席に着かせる。

 それから、まだ口を付けていない果汁入りの甘い牛乳の入ったコップを、ミラに手渡した。


「とりあえず、飲みなよ!」


「うん。ありがと、……」


 ミラは少しだけホッとした顔をすると、急いでいて喉が渇いていたのか、素直にこくこくと飲み始めた。

 ハルコンも急いで料理を口に流し込むと、全て残さず食べ終えた。


「なら、いこうか?」


「うん」


 飲み終えたミラも、こくりと頷いた。


「オォ~イ、ハルコン。何か揉め事かぁ?」


 先程から様子を窺っていたノーマンが、突然声をかけてきた。

 ハルコンとミラは、その場でお互いにアイコンタクトを取り合うと、


「いや、大した問題じゃない」


 直ぐさま否定したら、ノーマンは憮然とした顔をした。


「ウチのロスシルド領でも問題になってきている。いいから、その食器は置いとけ! オレが後で片付けといてやるから!」


 ミラが驚いた表情でこくりと頷くと、ハルコンの右手首を掴んで食堂の外に誘導しようとする。


「わっ、悪いノーマン。後は頼んだ!」


「おぅ、いいってことよ。早くサリナ姉のところにいってやんな!」


 そう言って、ノーマンはニィッと笑った。

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