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37 研究所の長い一日_21

   *          *


「やっ、やっ、やぁーっ!? もすかして、ハルコン殿でごじゃらんかっ!?」


「女盗賊さんっ、とてもお久しぶりですっ!」


「誠にっ! 久方ぶりで、ごじゃらんすっ!」


 ホンと数年ぶり、……久しぶりの再会だ。

 彼女の顔を見ていたら、まだセイントーク領にいた頃の懐かしい気分が、沸々と蘇ってくるように感じられた。


 女盗賊さんの方も、この度の再会にとても感激した様子で、……。切れ長の大きな瞳を少しだけ潤ませながら、こちらをじっと見つめてきた。


 思わず居ても立ってもいられず、直近の庭に通じるドアから外に出る。


 傍に立つや、長身の女盗賊さんが両手を広げて、ぎゅっと強く抱き締めてくれた。

 すると、まだ小柄な子供の身体とはいえ、両足のつま先が地面から浮いてしまったんだよ。


 相も変わらず、女盗賊さんは驚くほどの膂力の持ち主だなぁと、ハルコンはしみじみと思った。


「ホンに、ホンに、嬉しいですだ! ハルコン殿は、しばらく見ないウチに、また背が伸びたでおじゃらんかっ?」


 そう言って、女盗賊さんは喜色満面の笑顔で頬ずりをしてくる。


 彼女は相も変わらず美しく、建築現場の中でとても目立っている。


 私が初めて会ったのが赤ん坊の頃だったから、……おそらく当時美少女だった彼女も、そろそろ三十路に差し掛かる手前なのかな。

 何だか、妖艶さが増しているような気がするね。


 そう言えば、以前開いていた7人のNPC達との定例会だけどさ、……今はもうやっていないんだよね。


 参加メンバー達それぞれが要職に就いているために多忙を極め、なかなか全員集まることができなくなったことが原因かな。


 それに、当時はまだ「敵国」コリンドという脅威があったから、定例会の参加者がお互いの関係を密にしながら、情報共有を行う目的があったのだけど、……。


 でも、今は両国の間で国交が樹立されたことで、当面の危機が取り払われてしまった。

 そうなると、もう定例会を開く意味がなくなってしまったので、自然と解散する流れになってしまったんだよね。


 それにさ。そもそも私としては、NPC達とこれ以上関係を密にしてはいけないのではないかと、実は思っていたんだ。

 だってさ、私は彼らの頭の中に、何時どこでだって自在に入り込むことが可能なんだよ。


 私は、周りから「神の御使い」だなんて持ち上げられているんだけどさ。

 でも、それらの能力は、NPCの皆さんの協力があってこそのスキルであって、私本来の能力とは違うと思うんだよね。


 もう「敵国」コリンドはなくなってしまったんだ。

 現在、隣国とは「善隣外交」で友愛を育む関係になっている以上、もはやこの能力は過剰戦力と言っていい。


 だから、再び危機が訪れるまで、私のこれらの能力は封印だよなぁ、……とハルコンは思っていた。

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