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「やっ、やっ、やぁーっ!? もすかして、ハルコン殿でごじゃらんかっ!?」
「女盗賊さんっ、とてもお久しぶりですっ!」
「誠にっ! 久方ぶりで、ごじゃらんすっ!」
ホンと数年ぶり、……久しぶりの再会だ。
彼女の顔を見ていたら、まだセイントーク領にいた頃の懐かしい気分が、沸々と蘇ってくるように感じられた。
女盗賊さんの方も、この度の再会にとても感激した様子で、……。切れ長の大きな瞳を少しだけ潤ませながら、こちらをじっと見つめてきた。
思わず居ても立ってもいられず、直近の庭に通じるドアから外に出る。
傍に立つや、長身の女盗賊さんが両手を広げて、ぎゅっと強く抱き締めてくれた。
すると、まだ小柄な子供の身体とはいえ、両足のつま先が地面から浮いてしまったんだよ。
相も変わらず、女盗賊さんは驚くほどの膂力の持ち主だなぁと、ハルコンはしみじみと思った。
「ホンに、ホンに、嬉しいですだ! ハルコン殿は、しばらく見ないウチに、また背が伸びたでおじゃらんかっ?」
そう言って、女盗賊さんは喜色満面の笑顔で頬ずりをしてくる。
彼女は相も変わらず美しく、建築現場の中でとても目立っている。
私が初めて会ったのが赤ん坊の頃だったから、……おそらく当時美少女だった彼女も、そろそろ三十路に差し掛かる手前なのかな。
何だか、妖艶さが増しているような気がするね。
そう言えば、以前開いていた7人のNPC達との定例会だけどさ、……今はもうやっていないんだよね。
参加メンバー達それぞれが要職に就いているために多忙を極め、なかなか全員集まることができなくなったことが原因かな。
それに、当時はまだ「敵国」コリンドという脅威があったから、定例会の参加者がお互いの関係を密にしながら、情報共有を行う目的があったのだけど、……。
でも、今は両国の間で国交が樹立されたことで、当面の危機が取り払われてしまった。
そうなると、もう定例会を開く意味がなくなってしまったので、自然と解散する流れになってしまったんだよね。
それにさ。そもそも私としては、NPC達とこれ以上関係を密にしてはいけないのではないかと、実は思っていたんだ。
だってさ、私は彼らの頭の中に、何時どこでだって自在に入り込むことが可能なんだよ。
私は、周りから「神の御使い」だなんて持ち上げられているんだけどさ。
でも、それらの能力は、NPCの皆さんの協力があってこそのスキルであって、私本来の能力とは違うと思うんだよね。
もう「敵国」コリンドはなくなってしまったんだ。
現在、隣国とは「善隣外交」で友愛を育む関係になっている以上、もはやこの能力は過剰戦力と言っていい。
だから、再び危機が訪れるまで、私のこれらの能力は封印だよなぁ、……とハルコンは思っていた。