目次
ブックマーク
応援する
2
コメント
シェア
通報

第38話 最推しヒロインからの救いの糸

〇北海道 札幌市郊外 北野家 本家屋敷 応接室




実家の応接室にて、義弟である尊に真白との関係性を俺の悪意による一方的な強制だと決めつけられ、反論しようと試みるも言葉が詰まり声が出ない...


トラからの警告も理解してる、頭の中では何か言わないと、事実を話さないと、と焦るが尊からの鋭い目線に心臓を鷲掴みされた様に苦しい...その時、ピコン♪とスマホにメッセージの着信音が聞こえた


おれは震える手でズボンのポケットからスマホを取り出し...ロック画面の上に表示されてるバナーを確認する



《真白:言い忘れた、城二毎日寝る前に電話して》


流石、俺の一推しヒロイン...


俺は真白からのメッセージを見た途端、胸のつかえが霧が晴れる様に消え...


「尊、俺が雨宮...真白を脅して無理やり協力させてる...その根拠はなんだ?確かな証拠が有っての弾劾だろうな?」


俺は尊の目線に真正面から向き直り鋭い視線を送る


「証拠?義兄さんが今まで取って来た行動自体が、皆をそう思わすとは考えないの?」


尊の言う事は最もだ、北野 城二という三下のクズ下衆悪役に周囲からのヘイトが向いてる事を最大限利用するつもりなのだろう...


「お前の言いたい事は解る、だがお前の言うそれは心の中で思うだけなら通用する論理だ」


「...義兄さんは何が言いたいの?」


「公然と誰かを弾劾する時は、確たる証拠を持って行う...これは司法の常識だ状況証拠などなんの意味も無い」


「まして本人からの証言も得て無い状況で、第三者達が憶測で決めつけた事に何の実がある?お前は其れすらも理解出来ない阿保のか?」


俺の毅然とした態度と正論に父も母も驚きながらも黙り込む...


「し、しかし義兄さんにも証拠が無いじゃ無いか!!そ、そうだよ、義兄さんが雨宮さんを無理やり従わせて無い証拠を出してよ!!」



ふぅ――――



「それでは証拠を聞かせるから、皆黙っていてくれ」


俺は素早くスマホでメッセージを打つと...ピロロロン♪ピロロロン♪ピロロロン♪


メッセージアプリからのテレビ電話が着信する


「俺が電話にでるから、皆は写ってる相手が雨宮 真白本人で有る事を確認してから会話の内容を黙って聞いていて下さい」


俺は緑の通話をタップする


『城二、急に電話したいってどうした?』


「いや、真白と話をしたくてな」


『ん、城二実家で何かあった?』


「まぁそんな所だ」


『そっか、実家嫌なら直ぐ帰ってこい、私の家に泊まればいい』


「おいおい、それはお前の両親が許さないだろ?」


『ん?そう?ちょっとまって...(パパ、お友達を家にお泊りで招待しても良い?...ん、北野 城二、私の親友...ん、わかった)、寝るのを別の部屋にするなら良いって』


(おいおい、家族が聞いてるのに妙な爆弾ぶっこむなよ...)


チラッと顔を上げ3人を見渡すと、母親と尊は驚いた表情で呆気に取られていた...父は腕を組み目を瞑り空を仰いで何か考え事をしてる様だ


『ん?どうした城二キョロキョロして?』


「あ、いや何でもない、それより俺と真白は友達で親友だよな」


『ん、当たり前、城二&真白は無敵の親友、朋友(ぽんよう)だ!』


(...こいつ、連休中に「紅天の拳」にハマったな...)


「ああ、有難う連休明けの秘境テスト頑張ろうな」


『ん、任せろ朋友!』


「フフフ、其れじゃな、また電話するよ」


『ん、まってる』


俺は笑顔で軽く画面の向こうの真白に手を振り通話終了の赤いボタンを押した


フゥ―――――


深く息を吐き、スマホをズボンのポケットに戻してからソファーに思いっきり背中を預け、3人を見下す様に見渡し最後に尊へと視線を移す


尊は悔しそうに拳を重ね強く握って俯いていた


「で?尊...俺が真白に...なんだっけ?もう一度俺の目を見て言ってみてくれないか?」


「くっ...」


尊は俺の方を向こうともしない...コイツは物語の主役なんだぞ?自分の過ちは素直に謝罪出来なきゃ駄目だろ...そんなんじゃこの先...


「なぁ尊、お前が俺の事を恨んだり憎んだりしてもそれは仕方ない全部俺に非がある、それは認める」


「だがな、確かな証拠も無く周りに流されて他人を貶め...自分を見失う様な事はするな」


「お前は凄い奴さ、実力も人望も、そして何より...誰にも無い才能がある、そんな凄いお前は他人を貶めなくても何れ大きな事を成すはずだ」


「義兄さん...」


「お前のこの先の未来の為に言っている、ましてお前には共に歩むべきパートナーも出来るんだろ?宮下 藍瑠さんという」


「...憶測で義兄を責める様な事を言って申し訳ありませんでした...僕の短慮です、どうか許して下さい」


そう言って俺に向かって頭を下げる尊...


『城二、取り合えず嫌な気配は消えたな』


足元に控えるトラに笑顔で頷く


「尊、頭を上げてくれ、俺の方こそ謝らせてくれ、今までお前にも迷惑をかけてばかりで本当に済まなかった」


俺も尊に向かって頭を下げる...


「まぁお前達二人の誤解は解けた訳だが...城二お前の仕出かした事が此れで無しになった訳では無いそれを肝に銘じよ」


「はい、秘境テストにて必ず成果を持ち帰って見せます」




・・・・・・・・・・・・・・・・


・・・・・・・・


緊張の家族会議は、真白のお陰でなんとか無事乗り切る事が出来た...しかし



「やはり、俺の死亡フラグは折っても折っても新たに発生する...この世界はそれ程迄に北野 城二を消したいのか?」


尊に詰め寄られた際に感じた、不自然な身体の変調、本来であれば他人を思いやり過ぎる位の、お人好しである尊の変貌


この世界は俺の知る魔都東京1999の世界設定と微妙にズレて来ている...


其れは俺という異分子が紛れ込んだからなのか、それとも、もっと大きな意思の力なのか...


何れにしろ、俺は生き続ける為に全力を尽くすのみだ...そして願わくば主人公やヒロイン達に幸せなエンディングを...






この作品に、最初のコメントを書いてみませんか?