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夢花火降る
夢花火降る
椿灯夏
文芸・その他ノンジャンル
2025年01月23日
公開日
2,913字
完結済
真夏の夢を走る電車。 終着駅は夢花火。  にぎやかな乗客たち。 星屑サイダー。 これは泡沫の夢物語。

悪夢にゆられて◇1

 誰もが現実では闘っている。



 言葉という名の武器を掲げて。



 でも、それで誰かが泣いてもいいのだろうか。傷つけても傷ついても――。



「あの子クラスの男子に色目つかってんの。ね、みんなで無視しない? 調子のってるよね家柄がよくてかわいいからってさあ、制裁はやっぱり必要だよね」



 誰もが被害者で、加害者。



 何が正しいかなんてわからなかった。たったそれだけで深く考えることを放棄し、そのまま流されるように従ったのが、悪夢と悲劇の始まりだった。なんて滑稽な結末だろうか。





 あの日、私は死んだ。




 しずかにゆられながら悪夢をみる。



 しずかに――しかしそれはいきなり騒音に変わる。




「うぉー見ろよ少年。でっかいくじら泳いでるぞ! あーくじらの刺し身食いてえ」


「おじさんうるさい。少しは静かにできないわけ?」


「あのぅ、寝てる方もいるので……」


「にゃにゃにゃー」





 にぎやかな会話に導かれるように目を覚ましたものの、目の前の光景に余計混乱してしまう。一体何があって、どうすればこんな状況になるのだろうか。きょとんとした様子の私に気づいた少年だったが、すぐ視線は車窓の方にそらされてしまう。




 すると真向かいに座っていた気弱そうな女の人がすみませんと、なぜか謝る。




「いえ……あのこれは一体――」



 しかし答えたのは別の人だった。



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