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第54話 魚に飽きたら肉を食べればいいのに

 黒い影こと≪ニャントリン≫さんの周りには、同じ黒ネコさんがいっぱい……。

 えっ、全員同じ顔だわ……。


 誰が≪ニャントリン≫さんなのかわからなくなっちゃった。


【≪アルミちゃん≫、ぼんやりしていると、せっかく注文したパフェのアイスが溶けますよ】


「おっとと……って悠長に食べている場合じゃなくない? あっちで黒ネコ集会が始まっちゃってるんですけど!」


【猫獣人が7人も集合したんですか。猫獣人の国はとても遠いので、この辺りでこんなに多くの猫獣人が集まるのはとても珍しいことですね】


 そうなんだ?

 ≪ニャンニャン姫≫に≪ニャンチル≫さん、≪ニャントリン≫さんもいるし、普通にメジャーな種族なのかと思っていたよ。そっか、遠い国からきているんだー。大変だね。


【『猫の眼』ギルドは姫が立ち上げたギルドですから、同郷の猫獣人が集まっているのは当然のことかと思います。むしろ『猫の眼』ギルドメンバー以外の別の猫獣人を見かけたことに驚きを覚えます。猫獣人は本来自分たちの縄張り――領地を出ない種族ですから】


 そっか。ネコさんたちは引きこもりなんだ?

 だとしたらたしかにこんなに猫獣人が集まっているのはすごくレアなのかもね。


 まあ、それはさておき。


「わたしたちは特殊クエストの最中なんだし、≪ニャントリン≫さんと話をしないとダメだよね。どの人が≪ニャントリン≫さんなのか特定したら、この2番目のクエストはクリアってことになるんだよね、きっと」


【あちらもドリンクが来て宴会の真っ最中ですし、私たちも注文したものを食べてからでも良いんじゃないでしょうか。フードロスはよくありませんし】


 と、サービスのミルクが入ったお皿をペロペロと舐めだす。


 まあ時間はまだまだあるから少しくらいなら良いかな……。

 ちょっとだけ……。


 フルーツてんこ盛りのパフェ! あ~最高♡ アイスもうまうま~♡

 半分くらい知らないフルーツだけど、甘いしすっぱいし、バランスが絶妙すぎる!


【魚肉ソーセージトッピングがあるだけで、贅沢度が違います。王族になったような気分です】 


 魚肉ソーセージってそんなにおいしいっけ?

 魚のすり身? 普通のソーセージのほうがおいしいと思うけど。


【これだから素人は……】


 めっちゃ深いため息吐いてきた!

 魚肉ソーセージの素人って何……。まあ、はい。たぶん素人ですけども。


【ネコ缶は魚のフレークですからね。ほぐした身をしっかりと味わうことができるんですよ。食感も楽しめます。しかしこれだけでは少し物足りないのです……】


 ネコ缶3個も平らげるネコが何を言って――。


【シャラップ! 量ではなく、バランスの話を言っているのです。ネコ缶のフレーク部分は確かにおいしい。しかし、単一の味では飽きてしまうのです。そこで、魚肉ソーセージの登場です。多種類の魚がすりつぶされて入っている雑多な味、そしてプリプリとした食感がさらに1つ世界を変えてくれるのです。……と言っても、これはネコ用の魚肉ソーセージなので、人が食べるものよりもかなり塩分は控えめです】


 へぇー。

 ……としか言えないけど。


 結局どれも魚じゃん。

 魚に飽きたら肉を食べればいいのに。


【あなたはマリーアントワネットですか。魚と肉を混ぜたらおいしくないでしょう。魚は魚、肉は肉だけで食べたいのです】


 まあそりゃそうか。

 わたしも肉と魚は同時に食べたくないな。なんか適当なこと言ってごめんね。


【わかれば良いんですよ、わかれば。≪チムチェ≫さん、魚肉ソーセージ2本追加でお願いします】


 あっ、どさくさに紛れて何追加注文してるのさ!


【ここの特製魚肉ソーセージは大変美味です。≪アルミちゃん≫も人間用の魚肉ソーセージを注文したほうが良いですよ】


 パフェ食べているし、パフェの後に魚肉ソーセージはいらないかな……。


【魚肉ソーセージは別腹ですよ】


 別腹でも順番の問題だから。

 甘いものを食べた後にそういうのはいらない派なの。


【甘いものでお腹に蓋がされるというやつですね。知っています】


 知ってて言わないでよ。

 好みを何でも知られているとやりにくくてしかたないなあ。


 あ、ちょっと待って!

 ≪ニャントリン≫さんたち猫獣人の集団がお会計してるぅ!

 もう宴会終わり⁉ 猫獣人の食事、めっちゃ速いっっっ!


【こうしている場合じゃないですね。≪チムチェ≫さん、さっきの魚肉ソーセージはお持ち帰りに変更でお願いします】


 持ち帰るんかいっ!

 まあ良いけどさ。


 ……まだ?


 あー、もう早くして!

 ≪ニャントリン≫さんたちが行っちゃうじゃん!


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