「うぅ……ひどい目にあった……」
配信に乗らないところで、正座させられて≪セリー≫にめちゃんこ叱られた……。
悪いのは全部≪サポちゃん≫なのに……。
「お姉さま! 私は別にエッチなことが嫌いなわけじゃないの」
「えっ、どういうこと……?」
≪セリー≫ったら、急に何を言い出したの?
【≪アルミちゃん≫もエッチな同人誌を読むのが趣味ですし、きっと気が合いますね】
シーッ!
≪サポちゃん≫はちょっと黙っていて!
「えっとね……お姉さまが教えてくれたエッチなバストマッサージだって嫌いじゃない、よ?」
「こらこら、人聞きの悪いことを言わないの。あれは由緒正しい医学的にも根拠のあるリンパマッサージだから! これっぽっちもエッチじゃないから!」
さすがに裸になって行うマッサージの様子は映像に映せないし、そんな言い方したらこれを見ている人が勘違いするでしょ! ≪セリー≫がお母さんみたいに大きくなりたいって泣くから教えてあげたのに!
「それに……お姉さまにならたくさん見られても……いいよ?」
頬を赤らめてそういうことを言うんじゃありません。
≪セリー≫って、やっぱり≪サリー≫さんの子なんだわ……。そっちの属性の人なんだ。
「わたしにそっちの属性はないんだって……。わたしは普通に男の人が好きなの。≪セリー≫のことはきれいだしかわいいって思うけど、そういう対象には見られないっていうか……ごめんね?」
こういうことは最初にはっきりと。
なんとなく言えずに、なあなあで過ごしていて、あとでそのことに気づいてショックを受けられると困るし。なんかほら、そういうマンガってよくあるじゃない? すれ違いのジレジレ的な。でもああいうのって、押しに負けて最後くっついちゃう展開が多いし、わたしはさすがに百合に押し切られたくはないので……。
ちゃんと結婚したいんです!
もう29歳だしギリギリなんです!
「お、お姉さま……」
ごめんね。
恋愛対象には見られないけれど、義妹としては好きだよ? これからも仲良くしてね。
【≪アルミちゃん≫、アイドルが配信で男好きをアピールするのはどうかと思います。勝手ながらピー音を入れさせてもらいました】
「えっ、ちょっと!……まあいいか。配信には乗らなくても≪セリー≫には伝わったよね。それでいいや」
別に男好きを視聴者に向けてアピールしたいわけじゃないし……。
あーでも、普段から「男の人好き好きー媚び媚び♡」な感じで配信していたら、ギフトたくさんもらえるかもしれない? そうなるとお小遣いがたくさんに⁉ えっ、待って、それってめっちゃ良くない?
【≪アルミちゃん≫におかしなストーカーがつくかもしれませんね。そしてリアルを特定されて眠ったままの体にいたずらを……考えただけでも恐ろしい……】
それはだいぶ困るんだけど……。
でもそうならないように≪サポちゃん≫が万全を期してケアしてくれている約束だよね? 無防備なわたしの体はちゃんと守ってくれないと困るよ?
【全力は尽くします。しかし何事にも想定外というものは存在します。すべてにおいて100%ということはありえないのですよ】
そりゃそうだろうけどさー。
【ですから、自らストーカーを作りに行くような、メリットよりもはるかにデメリットが大きいキャラ作りはやめてくださいね】
う、うん……。
気をつける。
【それに、≪アルミちゃん≫はこの世界の頂点に立つアイドルになるべき存在です。同性も異性も、同種族も異種族も、人も妖も神さえも、みんなが崇め奉るような存在を目指してください】
急にハードル高いって……。
最初に≪サポちゃん≫が説明してくれた時の『
【≪アルミちゃん≫は唯一無二の存在です。人類最後の希望なのです。それを忘れないでください】
人類最後の希望って何よ。
わたしにかかる期待が大きすぎない?
【大丈夫です。≪アルミちゃん≫にならやれます。全身全霊で≪サポちゃん≫がサポートしますから】
それは助かるけれど……。
このテンションで、いったいわたしは何をやらされるの?
【それでは今日の日程を発表します】
変わり身の速さよ!
ま、まあ聞きましょうか?
【≪セリー≫さんもこちらへ。配信中です。≪アルミちゃん≫のパートナーを務めるつもりがあるなら、しゃきっとしてください】
うずくまってめそめそしている≪セリー≫に容赦ない一言が浴びせられる。
「パートナー……。私がお姉さまのパートナー……ふふ……ふふふふふ♡」
いや、その表情で笑うと怖いって。
ヤンデレじゃん。
百合ヤンデレ義妹。
属性盛り過ぎだからちょっと落ち着こう?