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第96話 深夜にこの百合百合しい映像はとてもセンシティブで良いですよ~

 わたしと≪セリー≫さんが資料管理室のドアを開けると――。


「ま、眩しい!」


「ここはいったい……」


 左には金貨の山。右には銀貨の山。

 正面には雑多に積まれた宝飾品を数々。


 その輝きは執務室以上――。


「執務室に飾り切れないお宝が置かれている部屋ってことなんですかね……」


 インベントリーに収納せずにわざわざこんなところで保管を……?

 ちょっと物騒じゃない?


「ギルマスはお金を持っているとは聞いていたけれど、ここまでの資産家だったとは……さすがに驚いたわ……」


 ≪セリー≫さんもこれほどの財宝の山を見たのは初めてだったのか、目を丸くして立ち尽くしていた。


「ここにあるものもわらわの資産のごく一部じゃ」


 何の前触れもなく、ひょっこりと≪ニャンニャン姫≫がお宝の陰から姿を現した。


「あー、≪ニャンニャン姫≫だ! こんなところにいたんですねー!」


 さらにこの後、謎解きがあるのかと思っていたらこれで終わりなんだ?

 ラッキーラッキー♪


「はいはい姫じゃよ。わらわの特別クエストは楽しんでもらえたかの?」


「んー、楽しかったですよ? ちょーっと大変でしたけどねー。でも、いろいろな人と触れ合えましたし、このギルドで働く人たちがどんな人たちなのか少しわかった気がします」


 チラリと≪セリー≫さんのほうに視線を向ける。


「なによ?」


「なんでもないでーす。一緒に≪ニャンニャン姫≫を探してくれてありがとうございました!」


 お礼を言って頭を下げる。

 夜中なのに連れまわしてごめんね。ありがとう。


「べ、別に……。い、依頼書に一緒に探せって書いてあったから! 仕事! そう、これは仕事だから!」


 頬を赤く染めながら、しどろもどろで。

 そんな真面目でやさしい≪セリー≫さんのことがけっこう好きですよ。


【≪アルミちゃん≫本人確認を。残り2分です】


「あ、そうだった。では≪ニャンニャン姫≫。この依頼書に書かれている人物は、あなたで間違いないですか?」


 最後の儀式。

 依頼書を見せての本人確認だ。


「間違いなくわらわじゃ。≪アルミちゃん≫、クエスト達成おめでとうなのじゃ」


 ≪ニャンニャン姫≫は微笑んだ。


「ありがとうございます! ふぃー、長かったよー」


 うれしさ半分、どっと疲れが……。

 時限クエストはもうコリゴリだなあ。


【≪アルミちゃん≫、お疲れ様でした。1分を残して特別クエストのクリアを確認しました】


 ≪サポちゃん≫が空中を走り回り、喜びを表現していた。

 ありがとねー。≪サポちゃん≫がいてくれたからここまでがんばれたよー。


「≪セリー≫もお疲れなのじゃ。どうじゃ?≪アルミちゃん≫とは仲良くやれそうかの?」


 ≪ニャンニャン姫≫はネコミミをピクピクと動かしながら≪セリー≫さんに近寄る。


「さ、さあ……。普通よ……」


 プイ、とそっぽを向く≪セリー≫さん。


「そうかの~。これからはよくよく≪アルミちゃん≫の話を聴いて、年下のお姉さまにかわいがってもらうと良いのじゃ♪」


「っ!」


 ≪セリー≫さんの顔が一瞬にして真っ赤に染まる。


 年下のお姉さま。

 そうだった。


 なりゆきとはいえ、ロザリオを渡して姉妹スールの契りを……。

 まあね、実際はわたしのほうがずっと年上ですし、別に姉妹でもおかしくはないんですけどね? いや、百合展開はおかしいですけれども……。


「≪アルミちゃん≫、しばらくの間≪セリー≫の指導をお願いしたいのじゃ」


「あ、はい。それはもう、任せておいてください!」


 ずっと配信を見てくれていたなら、さすがに≪セリー≫さんの問題には気づきましたよね。というか、≪セリー≫さんの事情はもともと知っているだろうし、きっと悩みのタネの1つだったでしょうね。高レベルの『高位神官ハイプリースト』があんまり使い物にならないのは、ギルドとしてはかなりの痛手でしょうし、ここは1つ、元『高位神官ハイプリースト』の≪アルミちゃん≫にお任せくださいな!


「≪セリー≫。しばらくの間、≪アルミちゃん≫とパーティーを組んで指導を受けるのじゃ。これはギルマスとしての命令じゃ」


「わ、かったわ……。がんばります……」


 ≪セリー≫さんが素直に頷く。


 自分に問題があることを認められれば、もう問題のほとんどは解決したようなものですからね。あとは時間をかけて立ち回りの訓練するだけ。文字通り、がんばっていきましょー♪


「これで特別クエストは終了じゃ。改めてお疲れ様じゃの。報酬の件じゃが……今夜は遅いし、また後日ゆっくりと時間を取って、わらわの故郷の話をするとしようかの」


 ≪ニャンニャン姫≫は目を細め、小さく何度か頷いた。


「そうですね……。さすがにちょっと疲れました……。今日は帰って寝て良いですか?」


「それが良いのぉ。わらわも忙しいゆえ、すぐに明日というわけにはいかんのじゃ。日程についてはまた別で知らせるのでしばし待つのじゃ」


「はーい。ご連絡お待ちしておりまーす。それでは失礼します!」


「失礼します」


 わたしと≪セリー≫さんは、頭を下げてから資料管理室を後にする。

 ≪ニャンニャン姫≫は笑顔で手を振ってお見送りをしてくれた。


 いやー、なんとかクリアできて良かったよ。

 ずっと綱渡りの展開で大変だったけれど、見ている人には楽しんでもらえたのかな?


【大満足の結果でした。ギフトもたくさんいただきましたので、明日改めて祝賀会を開きましょう】


「お、いいね。じゃあ≪セリー≫さんも一緒にね!」


「わ、私も⁉」


 油断していたのか、≪セリー≫の声が裏返った。


「当然でしょー。わたしたちは姉妹なんだから♡」


 ≪セリー≫さんが1人前の冒険者になるまではしばらく一緒に行動しましょ。


「お、お姉さま♡」


「ちょちょちょ!≪セリー≫さん!」


 距離感!

 急に抱き着いてくるのはノーノー!


「≪セリー≫さん、だなんて他人行儀な。≪セリー≫とお呼びください♡」


「じゃ、じゃあ……≪セリー≫?」


「お姉さま好き♡」


 いや……距離感……。


【2人とも良いですよ~。目線をこちらにください。とても良い絵ですね。深夜にこの百合百合しい映像はとてもセンシティブで良いですよ~】


 センシティブに深夜も早朝もないでしょ……。

 ていうかなんでちょっとうれしそうなの? アカウントBANされたいの?


 もういいや……ホントに疲れて脳がバグりそうだから早く部屋に帰って寝よう……。

 明日のことは明日考えるわ……。


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第三章 アルミちゃん、ギルド生活始めました 編 ~完~



第四章 アルミちゃん、義妹とパーティーを組む 編 へ続く


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