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12

 涅下の館を包む静寂。そこに動くものは無かった。

 館の主人も、使用人たちも、主人の友人たちも、招かれた大学生たちも、皆、密やかな涅の感触に呑まれ、瞳を閉ざしていた。

 各人が行儀よくそれぞれの居室で眠りにつく中、ただ二人だけ、居間のL字のソファの一辺ずつを占拠している。互いに頭を突き合わせ、規則正しい寝息はほど近い。

 南国の島、灰島の夜が皆に一様に訪れる。涅上涅下問わず流れゆく時は、ただ静かに、館を見守り続ける。

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