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夏目漱石『吾輩は猫である』から見る文章の構成

~テキスト分析から見える文体の特徴~

1. 作品紹介

『吾輩は猫である』は、夏目漱石による1905年発表の長編小説で、日本近代文学の金字塔とされます。「吾輩は猫である。名前はまだ無い。」という有名な書き出しから始まり、人間社会を猫の視点から風刺的に描いています。


2. テキスト分析の概要

(1)語彙・フレーズの頻度ランキング

デジタルデータ(青空文庫より)をもとに、文章全体を形態素解析・頻度分析しました。


最も頻出する単語:


「吾輩」


「人間」


「先生」


「何」


「事」


など、語り手=猫自身を示す「吾輩」と「人間」、また「先生」や「何」「事」など日常的な語が多く登場します。


頻出フレーズ・構文:


「~である。」(例:「吾輩は猫である。」)


「…と思う。」


「…の如く」


「…かも知れぬ」


「…であろう」


文末に断定や推量の表現が頻出します。「~である」「~と思う」「~であろう」は漱石作品らしい文体の特徴ですね。


(2)構文や文章のリズム


一文がやや長く、挿入句や修飾語が多用されている。


説明・比喩・例えが多く、語り口は饒舌でユーモラス。


(3)特徴的な表現


擬人法:猫が人間と同じ目線で考える構文が多い。


皮肉や諧謔(ユーモア)表現:「…とは感心しない」「…とは困ったものである」など。


3. 分析結果の考察

猫視点という語り手の特異性から、「吾輩」という一人称と「人間」という他者指示語が突出して多く用いられています。


「~である」体の文末が反復されることで、語りの断定性と皮肉めいた雰囲気が強調されています。


作品全体を通して、長い修飾文や比喩、諧謔的な語り口が「漱石らしさ」を醸し出しています。


4. 他作品との比較

たとえば森鴎外『舞姫』では「私」「彼」などが多く、文体もやや文語調で短い文章が中心。


『吾輩は猫である』は、ユーモアと批評精神を「猫」の独自視点で表現し、口語と文語の中間的な文体が特徴的です。


5. まとめ

テキスト分析から、『吾輩は猫である』の文体は「~である」体と一人称「吾輩」の多用、修飾語の豊富さ、ユーモラスな断定口調に支えられていることがわかります。

この特徴的なスタイルが、読者に独特の親しみやすさと知的な愉しさを提供し、日本文学における名作の地位を不動のものとしています。


現代の小説やファンタジーと違い文章の移り変わりを感じました。(今の時代あえて夏目漱石風に執筆するとZ世代の人に受けるか気になるところです。)



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