「じゃあ、また何か困ったことがあればいつでも声をかけてくれ」
そう言った。
そして彼、ちゃがわさんはボクの傍を離れた。
あの女の人と肩を並べて外に出ていく背中を、ボクは見送った。
「……あの人が、ちゃがわさん」
姿が見えなくなって暫く。
ボクは溜息と一緒に声が漏れる。
「ちゃがわつづと……せんせい」
ボクには、好きな人がいる。
それはただの漫画家じゃなくて、エロが付く漫画家。
昨日、ボクは二人に助けられた。
その時、下の名前を耳にしてピンときた。
だからすぐに聞いた。
受付の人に、あの人の名前を聞いてみた。
個人情報だから教えてくれなかったけど、代わりに女の人の方はすぐ分かった。
そこから調べていくと、先生の名前も簡単に出てきた。
あの人が、ボクの推し……。
大好きなちゃがわつづと先生だったなんて……。
喜びも束の間、ボクは不安要素に気付いた。
あの女の人は、裏で人気がある。非公認のファンクラブもあるらしい。
だからクランメンバーの先生には敵が多い。
危険だ。
ボクが先生を守らないと。
でも、もっと危険なのは、あの女の人だ。
初めて見た時から、分かってた。
あの女の人は、先生を誘惑してる。
そのくせ勿体ぶってる。もうおばさんなのに。
嫌ならモデルなんて引き受けなければいいのに。
ボクならどんなポーズでもするのに。おばさんなんかに負けないのに。
だからこれは運命だと思う。
きっと、先生がボクに見つけてほしいと願った結果なんだと思う。
先生は、また明日と言ってくれた。
だからまた明日、会いに行く。会って先生の手を取る。
ちゃがわ先生を守ることができるのは、ボクしかいないから。
ちゃがわ先生はボクのものだから。