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第1話 楽しい旅

真夏の炎天下という言葉に相応しい今日。正午頃、アメリカ・フロリダ州にて、ルーカスはビーチの近くのホテルに到着した。


「やっと着いたか」


ルーカスはこの間大きな事件を解決したので、連邦捜査局からの依頼はほとんど入っていない。(本業のバウンティハンターでの仕事は少々あったが)なので、一息つこうかとビーチが綺麗なフロリダ州に旅行にきていた。

泊まるホテルは少し古く、設備がとても綺麗な訳では無いが、どうやらご飯が美味しいと聞いた。食事が好きなルーカスは楽しみにしていたようだ。

だらだらと汗を流しながら、スマホの地図を元に足を進める。ようやくホテルの扉を開くと、前には受付があった。


「あら、ようこそ!  お伺いいたします!  」


受付のお嬢さんは健康的で若そうで、愛嬌もある。こんな真夏に働かせられ、こんなに元気なんて、彼女は女神なのだろうか。なんて思ってしまう。


「チェックインです。ルーカスという名で一泊予約しているんですが」


「ルーカスさんですね…はい、ご確認できました!  106のお部屋にどうぞ」


そう言ってルームキーをもらった。受付のお嬢さんはしっかりしていそうだ。


部屋に入ると、綺麗に整えられている真っ白なベッド、クローゼット、テレビ、ソファ、そして別室にシャワールームとトイレ、洗面台などがあった。古いと聞いていて期待はしていなかったが、申し分ない設備だ。

荷物は一泊分と少ないが、キャリーケースから取り出すのは面倒でとてもやりたい気持ちにはなれず、後回しにした。

そしてルーカスは廊下へと出て、和気あいあいで楽しそうな声が聞こえてくるフリースペースへと向かった。


ルーカスがたどり着くと、そこには若い男性、若い女性二人組、老夫婦、子連れのお母さんが居た。若い男性は1人でビールを飲んでいたので、雑談でもしようかと話しかけた。


「やぁ、一緒に座っても?」


「あぁ!  構わないよ。休日に一人で旅行に来たって、くつろぐにも暇すぎるからね」


優しそうな男性はそう言って苦笑しながら、話し相手になってくれた。


彼はどうやら、ドイツ出身のハンス・フィッシャーというらしい。ドイツから一度も出たことがなく、初めてアメリカへ旅行に来たと話していた。


「うわ!  そうだった…すまない、ブーツに忘れ物をしてしまったみたいだ」


「おや、ブーツ?」


「ああ!  言い間違えたよ、トランクさ!  済まない、酔っ払っていてね。トランクに荷物を忘れてしまったみたいだ笑」


「トランクか。それは取りに行かなくてはね!  では、私は部屋に戻るよ。荷解きをしなくてはならない」


そうして、彼はトランクへ荷物を取りに、私は部屋へとお開きになった。



荷解きを済ませると、ドアがコンコンと叩かれた。ホテルマンか?  なんてルーカスは思いながらドアを開けると、そこには先程フリースペースで見た、子連れのお母さんが。



「こんにちは。どうかしましたか?」


「こんにちは!  突然すみません、このハンカチ、違いますかね?  私の部屋と貴方の部屋の前に落ちていたんですが…」


「いえ、私は違いますね。受付のホテルマンの方々に届けてみては?」


「そうします!  失礼しました」


「えぇ、良い一日を!」



お隣さんは子連れのお母さん達だったのか、いい人そうで何よりだ。そんなことを思いながら、ルーカスはディナーまで部屋でゆっくりと寛いだ。



気がつけば時間が経っていたようだ。夕食の時間、ルーカスはディナー会場のテーブルに1人で座っていた。

バイキング式のディナーはどれをとっても美味しく、一つ一つが丁寧に作り込まれてあった。どこのシェフを雇っているのだろうか?そんなことを考えていると、


「やぁ、ルーカスさん!」


昼に親しくなったハンスさんがこちらへ来て、一緒に座らないかと提案してきた。私たちは2人とも1人旅なので、勿論返事はイエスで、共に食事を楽しんだ。


ハンスは育ちが良いのか、肉に魚、ジャガイモなどの野菜だって綺麗に切り分けて食べていた。慣れていないルーカスは少し崩してしまっていたが。



ディナーが終わり、二人は解散した。

ディナーの時に近くの席に座っていた女性二人組は少し喧嘩をしていたが、特に大きな問題になることもなさそうで、仲裁はせず部屋に帰ってきた。彼女たちの喧嘩は大丈夫だったのか?なんて思うも、ルーカスには関係が無い。


そして、暫くしてルーカスは、ふかふかのベッドで眠りについた。

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