ふと声が聞こえたような気がして目を開ける。
あれ、ここはどこかしら? と私は思った。それもそのはず。見覚えのある病室ではなく、周囲は闇に呑まれている。唯一あるものといえば、白い扉と自分が寝ているベッドだけ。なぜこんな場所にいるのだろうか……と首を傾げた。
――藤原
二十代でお見合い結婚し、娘二人と息子一人を育て上げた後、長女の家族と同居して暮らしていた。
夫は十年前に亡くなっている。お互いお見合いなので、恋愛感情と言うよりは情が強かったと思う。けれどもやはり彼が亡くなった時には、ぽっかりと心に穴が空いた時期はあった。
それを埋めてくれたのが、娘息子と孫達だ。夫が亡くなった後も新たな命が誕生。私は最終的に孫七人に囲まれ、心穏やかに暮らしていた。長女夫婦が共働きという事もあり、家事は私の担当。午前中は家事をし、午後は孫が帰ってくるまで趣味の裁縫やテレビを見て……孫が帰ってきたら、遊んだり宿題をしたり。
今思えば、私は充実した日々を送っていた。
けれども今年の冬、私は流行病に罹った上、それが重症化してしまい病院に入院する事となった。入院中も子ども達や孫達が代わる代わるお見舞いに来てくれ、手紙や絵などを沢山もらったのだけれど……。
そこまで思い出して、ふと自分の手が目に入る。私はその手に違和感を感じた。
手が、綺麗。そして皺がない。
どういう事だろうか、と首を傾げていると、目の前にある白い扉がギギギ、と音を立てて開いた。
『あ、ミヤちゃん。起きた〜?』
私は聞き覚えのあるその声に、耳を疑う。
「えっ?」
そして入ってきた人の顔を見て、目を丸くした。だって、
「あなた……ハル……ちゃん……?」
小学生の頃の大親友であるハルちゃんが……