そして11月の第3日曜日、レイと
午後3時に吉祥寺駅の公園口と呼ばれる南口で待ち合わせをすることになっていたが、東京都内の駅前繁華街近辺だけあって、周辺には溢れるような人、人、人といった有様であった。
街に張り巡らされた道には人の切れ間は殆どなく、高校生だか大学生だかの大勢のカップルや友達の集まり、夫婦や家族などが、あるものはゆったりと、あるものは語らいながら行き交っている。
待ち合わせ時間は、午後3時。映画館はその吉祥寺駅南口から少しばかり南の方角に歩いたところにある。
そして今、
「レイくん、まだ来ないな……? この前は15分以上前から待っててくれてたのに……?」
今、駅前南口の大きな円柱状の柱の近くで待っている
眼鏡は外してコンタクトにしているため、その際立った大きな瞳は街の光を反射してキラキラと輝き、ウィッグではあるものの高級感あふれる長い髪が魅力的に垂れ落ち、ドーランではなくファンデーションでのナチュラルメイクを施したその美少女然とした様子は、道行く人の注目を集めていた。
そして、頭頂部にはその黒髪ロングのウィッグが本来の頭から外れないように中にプラスチックバネが入っていて、頭を押さえてくれる格好となっている、それなりに幅がある紫色のヘアカチューシャが取り付けられている。
――もしかして、レイくんが本当は女の子だってことが
――せっかく、頑張ってお化粧して、お洒落してきたのに。
その通知を開いてみると、このようなメッセージが届いていた。
レイ『吉祥寺駅の公園口にいるけど、いまどこ?』
――え?
なぜなら、今まさに
遍『僕もいま、公園口だけど? もしかして近くにいるの?』
そう打って、送信してレイの既読が付いたのはわかったが、しばらく何も返ってこなかった。
次いで、メッセージがレイより送られてくる。
レイ『これ、タップしたら位置情報共有するから拡張機能インストールお願い』
そのレイからのメッセージ内容に、
――
――
――でも……大丈夫だよね? レイくん? 信じるよ?
少女らしい私服姿をした
OKボタンをタップし、次いでスマホの本人確認パスワードを入力し、コミュニケーションアプリである
すると間もなく、マップが新しく画面上に小さく現れてそれをタップすると拡大され、そのマップ上にピンが二つ刺さっているのがわかった。
片方は吉祥寺駅南口、すなわち公園口にいる
しばらくそのマップを眺めていると、レイの位置を示すピンがどんどん移動し、
そして、
「お待たせ。ごめんごめん、待ち合わせ場所間違えちゃった」
「いえいえ、レイくんが時間通りに待ち合わせ場所に来ようとしてくれていたようで良かったです。もしかしたら、すっぽかされちゃったのかと不安に思っちゃいました」
そんなことを頬を赤らめて照れながら言う
「安心してもらえたようで良かったよ。それに、ボクとのデートのためにそんなに可愛くお洒落してくれている
「褒めてくれて有難うございます。さっきまでちょっと憂鬱な気分だったんですけど、いまはとても嬉しいです」
「じゃあ、映画に遅れるといけないから行こっか。この町は詳しくないから、一緒に歩いて案内してくれる?」
そんな、高校生の少女らしからぬボーイッシュな言葉遣いで接してくるレイに、美少女の格好をしているが本当は中学生の少年な
そして、
その途中で色々と穏やかな感情で、取り留めない会話をしていると、レイは吉祥寺の駅の北口を公園口だと勘違いしていたということがわかった。
少女らしくお淑やかな佇まいで歩いている
「吉祥寺の公園は、駅から南側にあるんですよ。だから南側の出口の方を公園口って呼ぶんです。
「そうなんだ。じゃあさ、今日は映画観終わったらもう暗くなってて時間的に間に合わないと思うけど、また日を改めて一緒に公園行こうよ」
レイはそう応える。
既に11月の半ばを過ぎている時期なので、午後5時前くらいにはかなり薄暗くなっている時期なのであった。
レイの、再び会って今度は公園を歩くデートをしようか、という提案に
――もう、
この時の
しかし、その思いはこれから数時間後に、神が定めた運命であるかのようにすぐに綻ぶことになってしまうのであった。