彼女は凛とした態度で答える。

　そんな姿を見て他の2人も背筋を伸ばした。

　するとリズはポケットから紙を一枚取り出し伯爵に手渡す。

　「村長から貰った討伐の書類です」

　それを渡された伯爵はゆっくりと目を通す。

　それからしばらくの間、部屋に沈黙が流れる。

　数分後になって伯爵は資料を机の上に置くと立ち上がり、窓の方へ向かった。

　「君たち4人が無事帰ってきてくれて私は本当に嬉しく思う、ありがとう」

　彼は外を眺めながら私達に感謝の言葉を言ってきた。

　しばらく外を眺めているように見せていたヘスターだが不意に口を開く。

　「……ここからは私の独り言なんだが……原因は魔物だけだったのかい？」

　彼の一言によって一気に場の空気が変わる。

　その言葉の真意を知ろうと思い伯爵の方へ目を見やると、彼は私たちに視線を置いてい　る。

　そんな伯爵は言葉を繋げていく。

　「正直に言うと魔物に関しては大したことは無いと思っていたんだ……私の結界を破らない限り村に被害はないからな、ただ……なにか嫌な予感がしていてな……」

　そこまで言ってヘスターは再び窓から外を眺める。

　そんな姿になんと声をかければいいのか迷っていると、リズが口を開いた。

　「龍神教の仕業です」

　リズの言葉を聞きへスター伯爵は振り返る。

　彼はゆっくりとこちらに戻ってくると、改めて質問してきた。

　「龍神教……あの1000年以上前から存在すると言われる宗教団体のか？　そんな集団がなぜこんな辺境の村に……」

　伯爵の疑問に対して私は口を開いた。

　「白龍を崇めし権利者、ヨルフ・シルキー」

　私の発した単語に伯爵はピクリと眉を動かした。

　「もしやそいつと遭遇したのか？」

　私はヨルフに会ったことについて事細かに説明をした。

　説明を終え伯爵はゆっくりと椅子にもたれかかった。

　「そうか……君たちはそんな奴と対峙したのか」

　「はい」

　私の返事を聞くとへスター伯爵は大きく息を吐き出す。

　「よく生きて帰ってこれたものだ……」

　確かに彼が言うことはごもっともである。

　私は龍神教について詳しくは知らないけど話を聞く限りでは相当やばい集団のようだしな……。

　「龍神教について君たちは詳しく知っているか？」

　伯爵は真剣な表情を浮かべて私たちに尋ねてくる。

　そんな伯爵に対し、私たちは首を横に振って答える。

　それを見たヘスター伯爵はさらに質問を重ねた。

　「そうか……なら教えてあげよう」

　彼は息を吐いて一度間を置くと言葉を紡いでいく。

　「白龍は西の大陸を支配する龍神の座であると世間一般的には知られているだろう」

　その言葉に私たちは頷いた。

　すると彼は続きを話すため口を開く。

　「龍神王はこの世界の歴史を作り出したと伝えられている伝説上の存在であり、現在存在しているかも怪しいと言われてしまっているらしい」

　龍神王という言葉を聞き私は驚いた。

　龍神王などの歴史については架空だと思っていたんだが、まさか本物が存在している可能性があるとは。

　そんな考えを巡らせているとヘスター伯爵は近くの本棚に向かう。

　そして一冊の分厚い本を取り出した。

　その本をめいっぱい開き、あるページを私達に見せてきた。

　「今分かっている情報はこの本に書いてある、見てみなさい」

　彼は本を丁寧に広げると私たちに差し出してきた。