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第48話 私が陛下に試されてる?

 とてつもない緊張感で手に汗をかくのを感じる。


 「お前たちは龍神教と接触したと聞いたが本当か?」


 ここで私は顔を起こし陛下を見る。


 その問いにどう答えるか一瞬戸惑ったがゆっくりと口を開く。


 「はい、龍神教と接触しました」


 龍神教は各国で犯罪行為を起こしている危険な集団だ。


 そんなのと接触したなどと聞けば一瞬で軍隊が動き出すであろう。


 龍神教の人間を見かけたら必ず殺せとまで言われている。


 それほど警戒されている存在である。


 「戦ってどう感じた?」


 陛下はとんでもないことを聞いてくる。


 そりゃ普通に怖かったに決まっているしあんな禍々しい人間見たことないんだから。


 ただ禍々しいだけじゃなく能力もかなり強かったし。


 リズ達は緊張のためか口を開く事ができない。


 なんとか私が伝えなければ、と思い口を開く。


 「今回対峙した敵は龍神教の中では下の方であろうと考えます」


 私は感じたことを正直に伝える。


 たしかに能力は強かったが使いこなせていない感じがしたからだ。


 それに精神が幼いということもあって上手く制御できていなかったのも察することが出来た。


 その言葉を聞き、陛下は険しい表情から一転してフッと笑う。


 「下の方か......実に面白い回答をしてくるな」


 どこか楽しんでいるような、そんな顔だった。


 「ではこの4人の中で一番強い者は誰か?」


 その質問に私達は静まり返る。


 正直私ではないだろう、私はリズやエリックのような剣技は使えないし、レズリタのように様々な魔法も使えない、はっきり言ってこの4人の中で私が一番弱い。


 それに経験値も圧倒的に3人の方が積んでいるのだから。


 そう思っていた時、横にいたリズが口を開く。


 「ラゼルです」


 え?今なんて? 思わず口に出してしまうところだった。


 リズは顔色を一切変えずに陛下の方を見ている。


 本気で言っているのだろうか......。


 私は外れスキルを持ち家から追放をされるような、落ちこぼれなのに......。


 だがエリックとレズリタも大きく頷いている。


 混乱して呆然としていると陛下が私の顔を見て口を開く。


 「そうか」


 少し嬉しいような、なんとも言えない気持ちになり私の中の時間が止まったように感じられた。


 すると陛下が口角を上げ言葉をさらにかける。


 「お前の実力がどんなものか見せてみよ」


 今ここでか?正直に言ってスキルを発動すると疲れるから使いたくないんだが……そんなことができる状況ではないのだと思い私は仕方なく口を開く。


 「分かりました」


 そう言うと陛下は扉の近くにいた2人の兵に呼びかけをする。


 陛下の言葉を聞いた兵は慌てながら私と対峙するような位置へ移動する。


 リズ達とリスタは少し離れ、私を見守っていた。


 「では試合を始めよ」


 兵士は腰にさしている剣を抜き私に向けて構える。


 陛下の掛け声と共に試合は始まり兵が私に襲い掛かってくる。


 兵の動きはとても早く、並みの人間じゃ目が追いつけないスピードで迫っていた。


 流石陛下を守っているだけある。


 私は兵が近づく直前に手を挙げスキルを発動する。


 《ダークネス》


 スキルを発動すると兵2人の動きを影が覆う。


 その光景に陛下やエリック、リズ……そしてリスタまで驚いた表情をする。


 こんな得体の知れない影を突然出したんだから当然の反応だな。


 そのまま私は影で2人の動きを封じる。


 「なんだこれ!?」


 兵士はその場で動けずに騒ぎ出していた。まあ当然の反応だろう。


 突然影に包まれ身動きができなくなったのだ、これで落ち着いていられる訳がない。


 すると笑い声が聞こえてくる。陛下が笑っているのだ。


 「さすがへスターからの報告通りの実力だな」


 陛下は満足げな顔で私を見た。そんな中、私は思う。


 いつへスターから報告がされていたんだと。


 そんな疑問を感じていると、レズリタが手を挙げる。


 「あのう……影で覆われた兵士さんの方は大丈夫ですか?」


 その言葉を聞き私はハッとする。


 影で包んでしまっているから今すぐ解除してあげないと。


 私は急いでスキルを解除して二人を元に戻す。


 体が自由になった二人はその場で呆けている様子だ。


 まあ突然影に体が覆われたのだから無理もないだろう。


 そんな私を見ながら陛下は口を開く。


 「お前たち4人には期待をしている、今後も龍神教が現れるかもしれん。その時は協力を願いたい」


 「はっ!」


 国王陛下直々の言葉に私たちは礼節の姿勢になる。


 すると国王は目を緩め優しく言葉を告げる。


 「では下がって良いぞ」


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