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第10話 無と光

 朝食を取ったあと、私は両親に連れられ大叔父の部屋を訪れたの。これから私とファビオを鑑定してもらう。本来は初等科学園に入学してから魔術の適性を調べるんだけど、高位の聖職者である大叔父様が特別に鑑定してくれるの。


『コンコン』

『ガチャ』


 お母様がドアをノックすると、直ぐにドアが開けられて大叔父様が笑顔で挨拶をして、部屋に招き入れてくれた。


「シア、待ってたよ」

「叔父様、リディとファビオを連れてきてわ。2人の鑑定をお願いするわね」

「任せておくれ。さて、誰から鑑定しようかな?」


 大叔父は私に視線を向けたけど、私はそっぽを向いてお母様に抱き着いて、耳元で囁くと私の代わりに話してくれた。


「ファビオからお願いするわ」

「大叔父様、よろしくお願いします」

「うむ、こちらへ」


 ファビオが一礼してから大叔父様の前で片膝をつくと、頭の上に手を乗せて鑑定を始めたの。


「ほほぅ、流石はレイバック辺境伯家の後継者候補だね。火・風・土・黒のクアドラプルで、全ての適性が9とは桁違いに素晴らしい才能だね」


 巻き戻り前のファビオはトリプルだったのに、今回はクアドラプルって更に天才になってるじゃない!義姉として本当に鼻が高いわ!


「凄いわ!ファビオが居ればレイバック辺境伯家は安泰ね。魔術の練習も一緒に頑張ろろうね!」

「うん! 姉様の期待に応えてみせるよ」


 頬を朱色に染め笑顔で返事をするファビオ、常にこんな笑顔でいられるように、私はこれからもフォローを心掛けるのよ。


「さぁ、次は小さなレディだね」

「はい、よろしくお願いします」


 ファビオの時と同じように片膝をつこうとすると、お母様が声をかけて止めたの。


「リディが膝をつく必要はないわ。私は鑑定で膝をついた記憶なんてないもの」

「あ、あの時はヴァレンティ聖教国の姫だったからだよ。あのローソン帝国の皇子でも鑑定する時は膝をつくんだよ?」

「リディはレイバック辺境伯家の姫なのよ?私の天子が片膝をつくなんて屈辱は、絶対に嫌よ!」


 過保護なお母様は、私が膝をつくことを断固拒否したの。そんなお母様の態度に、大叔父様はため息をついた後に折れたのだった。


「判ったよ。小さなレディ、そのままで良いよ」

「はい」


 私が膝をつかずに直立していると、大叔父様は私に歩み寄ってから、頭に手を乗せて鑑定を始めたのだった。


「な、なんだこれは? 無と光……、こんな属性は知らないぞ!」


 大叔父様が大きな声を出すので、思わず驚いてお母様の元へ駆け寄って抱きつく。


「あっ、済まない。たくさんの人々を鑑定してきたけど、全く知らない属性だったから驚いたんだよ」

「まぁ、流石は私のリディね!」


 待って、巻き戻り前の私は水属性のみのシングルだったはず。それが大叔父様も知らない無と光のダブルなんて絶対にありえない!


「何かの間違いだよ。もう1度鑑定をし直してください」

「間違える訳がないけど、そこまで言うのならもう1度鑑定をしよう」


 そう言うと、大叔父様は手を私の頭に乗せて鑑定を始めたのだった。



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