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第18話 特別な存在

 アルバロンがレイバック辺境伯家にやって来た翌日から、魔術の授業が始まった。


 彼の役目は私の魔術属性の解明になるの。授業というよりも無と光の属性について、彼なりの見解を聞くことだった。なのでアルバロンとの授業がある時だけは、ファビオとは別々の授業になる。


「無という属性については謎が多過ぎますが、光はある程度の予測ができます」

「それはライトのようなもの?」

「その通りです。奥方様の発想からライトを発動させたのなら、似たような発想転換をすることで、新たな魔術を発動させることが可能でしょう」


 流石は賢人、初めて授業から理論的な話をしてくる。昔の私ならすぐに授業を投げ出していたに違いないと思った。今はファビオと両親の為に努力すると誓ったので、逃げ出さずに真面目に取り組む。


 私の中でボンヤリと浮かぶイメージを伝えて、どのように魔術を発動させるのかを、今日の授業で議論し合う。


「属性にはそれぞれ特性がありますよね。例えば水や土は質量が重くて、火や風は質量が軽い。黒は身体強化系で、白は身体治療系。全ての属性の発動イメージを、光で変換できないか試していくということ?」

「お嬢様の考え通りです。ライトに関しては比較的イメージし易いものでしたが、これからは変換イメージが難しくなるかと思います」

「私は他の属性を使えないので、発動させるイメージが沸かないから、ここからは苦労しそうですね」

「それについては、私の魔術論を参考にしながら考えていきましょう。お嬢様は魔術の基礎を理解されているので、基礎魔術論は飛ばしても問題なさそうですね」


 お母様との勉強である程度の基礎魔術論は学んだけど、どんなことでも基礎が大事なので、アルバロンが作り上げた基礎魔術論から学ぶべきだと考えたの。


「いいえ、賢人と言われるアルバロンの基礎から学びたいと思うから、ゼロから基礎魔術を教えて欲しいわ」


 私の返事聞いた瞬間、アルバロンは目を大きくして驚きの表情を見せた。


「かしこまりました。今日の授業はここまでにして、明日から教える基礎魔術論の準備をしたいと思います」

「ありがとう。私はママのところで学んでくるわね」


 アルバロンとの授業が終わったので、お母様とファビオに合流することにしたの。


§アルバロン視点§

 お嬢様は本当に天才だと思う。12歳の子供にはかなり難しい話をしたつもりだったが、噛み砕いた説明をする必要もなく、普通に話を合わせてきた。基礎は十分に理解していると判断をしても、基礎の重要性を理解しているようで、私の基礎魔術論をセロから学びたいと言ったのだった。


 このことからリディアーヌ様は、間違いなく特別な存在だと認識させられた。これまで人に対して興味を持ったことは無かったが、初めて人に興味を持ったのだった。



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