§ファビオ視点§
リディとお義父様がダンスをしていると、四男爵家の4人が僕に話しかけてきた。
「おい、ファビオ!あれは本物のリディアーヌなのか? 替え玉を用意したのかよ?」
義兄のアンドレアスが話しかけてきたが、余りにも無礼な言葉だったので無視をすると、僕の肩に手を当て執拗に話しかけてきたのだ。
「おい愚弟、辺境伯家の養子になったからって調子に乗るなよ? 俺達、四男爵家が支えてやってるからこその辺境伯家なんだからな?」
「「その通りだ!」」
「四男爵家を敵に回せばどうなるか判ってるのか? なぁ、あのリディアーヌは替え玉なんだろう? なぁ、本物は地下牢へ監禁したか教会送りにでもしたのかよ? しかし、あの替え玉は良い女だよな。俺達にも味見をさせてくれよ?」
「「おぉ、それは良いな」」
アンドレアスが次々と無礼なことを言い続け、他の3人は頷いて同意する。お披露目会という大切な場なのだが、無礼を働く3人に対してキレそうになる。僕のことをとやかく言うのならどんな罵声でも我慢できるけど、僕の大切なリディに無礼を働かれて、黙っているほど人間はできていないからだ。
「お前達、いい加減にしろよ?」
「はっ?」
僕がアンドレアス手を払いのけ、怒気を含めて声をかけた後に胸ぐらを掴もうとすると、僕より先に義父の補佐官のケントが動いていた。
「ファビオ様、ここは私にお任せを」
「判った。任せるけど判ってるよね?」
「はい、お嬢様に対する無礼は全て確認済みです。ミゲール様と奥方様は、そのことを決して許されることはないでしょう」
ケントは返事をすると、四男爵家の令息達に殺気を漂わせながら睨みつける。補佐官でありながら、レイバック辺境伯軍の将軍でもあるケントに睨まれると、4人は顔を青ざめながら腰を抜かしたのだった。
「さて、お嬢様から名で呼ぶことを許されていない分際で、呼び捨てしただけで万死に値する。それ以上の無礼を口にしていたようだな。下手をすれば四男爵家は脱爵だと思え」
「「そ、そんな……」」
お義父様とリディのダンスが終わると、ケントは目線で人を呼び4人を立ち上がらせる。周りの参加者達も異変に気づいて、全員の視線が4人に向けられるなか、ケントはお義父様の元へ連行していった。
「ミゲール様、奥方様、お耳を」
「うむ」
ケントが両親に近づいて、四男爵家の令息の無礼を報告すると、会場の温度が一気に下がった。お義母様がお怒りになったのだと判ると同時に、先程のケントとは比べ物にならない凄まじい殺気が発生して、来場者の全てが膝を落とす。凄まじい殺気を放った状態でか口を開かれた。
「私のリディを侮辱しただと!」
リディが侮辱されたと聞いたお義父様は、声を荒げると同時に4人を睨みつけたのだった。