私はアルバロンの傷に触れて、傷一つ無い綺麗な腕の状態をイメージしながら
「彼の者の傷を癒し給え
傷口に触れた私の手が『パァーッ』と発光すると、徐々に傷口が閉じていくのが判ったので、その状態を維持しながら魔術を発動し続けた。光が消えるまで維持し続けて最後にゆっくりと手を離すと、アルバロンの腕は傷跡もなく綺麗に治っていた。
「ふぅ、終わりました」
「素晴らしい!傷を治すだけではなく、傷負った者へ対して慈悲まで与える。あぁ、本当に素晴らしい治療でした! よって、先ほど笑った者は不合格とする」
「!?」
アルバロンは私の
「先生、彼等は将来有望な国の宝です。今は未熟かも知れませんが、先生の下でしっかり学べば素晴らしい癒し手になるはずです。どうかこの件で不合格にせずに、正当な評価を下してくれませんか」
「当事者の貴女がそう言うのなら、私の独断で不合格にすることはできませんね。お前達、レイバック辺境伯令嬢の慈悲に感謝し、必ず期待に応えてみせるんだな」
アルバロンは、私の言葉を聞いて不合格を取り消しすと、笑った者へ厳しい口調で言い放った。
「「はい、レイバック辺境伯令嬢、貴女の慈悲に感謝すると同時に、必ずご期待に応えてみせます」」
「えぇ、貴重な癒やし手と成られるように頑張ってくださいね」
「「はい」」
魔術試験はこれにて終了。ファビオ達の試験はまだ終わっていないので、食堂の個室でみんなを帰りを待つことにしたの。
§フランチェスコ視点§
会場で試験の開始を待っていると、桃色の髪をした令嬢が入ってきて、すれ違う時に『チラッ』と僕へ視線を向けてきた。確かに容姿もスタイルも抜群に良いが、僕の好みではなかった。
治癒を披露するこの会場に、彼女が現れることはないだろうと思っていると、また1人会場に入ってくる者が居たので、視線を向けると僕の視線が釘付けになった。
翡翠色の髪に同じ色をした瞳、全てが完璧と思える顔立ちは、肖像画で見たアルテイシア叔母様そのものだった……。彼女が祖父が言っていたリディアーヌで間違いない、そう確信したのだった。
彼女の属性は無と光だと聞いていたので、治癒の魔術が使えるのか不安に思っていたが、
(あぁ、この完璧な聖女リディアーヌを僕のものにしたい)
神の意思に背くことだと判っていても、僕はリディアーヌを欲しいと思った。そして婚約者からリディアーヌを奪い取って、必ず自分のものにするのだと心に誓ったのだった。