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第34話 お金がない……

 遠目にポロ村が見えたことで、私達の足取りが軽くなった。


 あと少しで到着だというのに魔物の気配を感じる。草原狼グラスウルフ灰色狼グレイウルフの群れみたいなので、気にせず進んでると当然のように周りを囲まれた。


 急いではいるんだけど、目の前の経験値を無視する訳にはいかない。そんな訳で、ゼシカの経験値になってもらうために、狼の群を討伐することにした。


「ゼシカ、狼が6体だけど全て任せるよ」

「はい、お任せ下さい!」


 私はゼシカのサポートで、指先から魔法を発動させて動きを止める。早くポロ村へ行きたかったので少しズルをすると、ゼシカは安心しながら1体ずつ魔法を駆使して倒していく。


「〚風刃ウインドカッター〛!」

『ザシュッ』

「キャン」

「〚水弾ウォーターバレット〛!」

『バシュッ』

「キャウン」


 次々と狼達を倒してアッサリと戦闘終了。


「はぁっ、はぁ~、アリス様やりましたよ!」

「うん、頑張ったね。さぁ、町へ行くよ〜」

「はい!」


 戦闘後は、ゼシカが狼達の毛皮と牙を回収したところで、再び町を目指したの。その後は、魔物に襲われることもなく順調に進んでいくと、石の壁に囲まれたポロ村に到着することができたの。


 村へ入るには門で入村の審査が必要みたいなので、今は審査を待つ列に並んでるの。待ってる間に入村審査の内容等をゼシカに聞くことにした。


「ねぇ、入村審査ってどんなことをするの?」

「えっと、身分証明書があれば無料で入村することが出来ます。この冒険者ギルドのギルドカードは身分証明書にもなるんですよ」

「おっ、そのカード良いね。それで、身分証明書がない場合はどうなるの?」


 私は当然そんなカードは持ってないので、ない場合の入村方法を確認する。


「ない場合は入村税として銀貨5枚を徴収されて、入村証を渡されます。半年間は何度でも入村証を見せれば入村できますね」

「参ったな……、お金なんて持ってないや」

「えっ……、私も持ってません……」


 私もゼシカも身銭を持ち合わせて居なかった。このままだと入村できないと困ってると、並列思考セラフィムが解決策を教えてくれたの。


『アリス様、ゼシカに手持ちの素材を売らせれば、金銭を手に入れることができるので問題ありませんよ』

『流石は並列思考セラフィム! 本当に頼りになるねぇ〜!』

『お褒め頂きありがとうございます』


 私は並列思考セラフィムから聞いた内容を、そのままゼシカに伝える。


「ゼシカ、狼から回収した素材を売ってきてくれる? そのお金があれば入村税を払えると思うの」

「なるほど! かしこまりました」


 暫くすると素材を売ってきたゼシカが、お金を手にして戻ってきたので、再び入村審査の列に並び直したの。程なく私の審査の順番が来たので、受付で審査官から入村の目的等の質問を受ける。


「ようこそポロ村へ、来村の目的を教えてもらえますか?」

「私は隣に居るゼシカと一緒に、このポロ村で冒険者になる為にまいりました」

「女の子が2人で冒険者になるかい?」

「はい、こう見えて私達は魔法が使えるので」

「そうですか、身分証明書はあるのかな?」

「彼女はギルドカードがありますが、私は持ってないので入村税を支払います」


 そう言ったあとに審査官へ銀貨5枚を支払うと、入村証を渡されたので入村審査は無事に終了したの。


「審査は以上で終了です。お嬢ちゃん達、冒険者として頑張るんだよ」

「はい、ありがとうございました!」


 審査が終わりポロ村の中へ入ったけど、特に目的も決めずに村へ来ただけなので、何をするか悩んでるとゼシカが私に声をかけた。


「アリス様、身分証明書になるギルドカードはとても便利なので、冒険者ギルドて冒険者登録をして、ギルドカードを作られませんか?」


 ゼシカの提案は正しい、確かに身分証明書があると便利なので、早速冒険者ギルドへ向かうことにした。


 私には並列思考セラフィムにゼシカという頼りになる仲間がいることを、とても頼もしく思ったの。

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