少しの休憩を挟んでから、明日のことを話し合うために集合する。焚き火を囲んで簡単な料理を作って、夕食を取り始めたところで話し合いが始まった。
「悪いけどさ、ハッキリと言わせてもらうね。みんなはぬるま湯で育っているから弱い。今日みたいな戦い方だと、また怪我人が出るのは間違いないね。何も考えずに魔法をブッ放す殲滅戦なら、問題なく合同演習を進められるからそれで良いよね?」
「言ってる意味がよく判らないんだが?」
デッカードは理解できなかったようだ。私が答える前に、ゼシカは苛立った様子をみせながら口を開いた。
「無様に魔物と戦わずに、無駄な魔力を消費して魔法のみで討伐をするということだ。それがお前たちにとって最も安全なのだ」
「うん、ゼシカの言う通りだよ。みんなは対人での戦闘訓練しかしてないからさ、綺麗な動きにしか対応ができていないの。魔物ってそれぞれ特徴が違うからさ、その変則的な動きについていけないでしょ? だから個別対応をせずに、相手の気配に向けて魔法を撃ち込むのが安全かも知れないってことだよ。元々の合同演習はそういうものだからね」
「なぁ、最初からそれをしなかった理由はなんだ?」
「集団でのみ戦うならそれでも良いけどさ、もし少人数で戦うことになったら死んじゃうからさ、ちょっと戦闘訓練でもしてみようかなって思ったんだけど、短期間で鍛えるのは無理だったね」
「……」
英雄志望のデッカードは言葉を失って項垂れる。大草原の魔物は決して弱いわけではないけど、英雄と呼ばれる者ならこの程度は敵ではないからね。周りのクラスメイトも、彼を慰めようにもかける言葉が思いつかないようだった。みんなもグリエル英傑学園に入学したことで、強さについてはそれなりに自信があったと思うけど、グラスウルフとの戦闘で自信は『ポキリ』とへし折られたからね。
そんな重い雰囲気の中、クラスメイトの中で私たちと魔物討伐の経験を積んでいるマリアンヌが口を開く。
「確かに短期間で鍛えるのは無理だと思いますが、経験者の戦い方を見て学ぶことは可能です。アリス様たちに面倒をかけるのですが、殲滅をしていく合間に手本を見せていただけませんか?」
マリアンヌの言葉を聞いた他のクラスメイトは、『はっ』とした表情になり互いに顔を見合わせ頷いた。そして同時に私に顔を向けて深く頭を下げたの。
「「アリスの戦い方を学ばせて欲しい!」」
普段なら絶対に頭を下げることがない面子だ。そんな彼等になりふり構わずに頼まれると、それを無下にすることはできないよね? 3人の従者たちに視線を向けると『コクリ』と頷いた。
「仕方ないね。基本的な立ち回り方を見せるよ」
「「ありがとう!」」
私たちの戦い方というか、対魔物の基本動作を見せてあげることにしたの。