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二つ目のスキル3

 一方でゲートの中に入って行うサポートもある。

 インベントリがあるとはいっても中に入れられる量には限界がある。


 トモナリなんかはインベントリがかなり大きい方であるが、それは割と特殊な方で自分の装備でいっぱいであるという人も珍しくない。

 そうなると必要になるのが荷物持ちである。


 自分のインベントリに物を入れたりリュックなどを背負って一緒に入っていく。

 他にも倒したモンスターの素材やゲートの中で拾えるものの回収なんかもやったりする。


 基本的にサポートを行う人は攻略を行う人よりも弱い人がやる。

 そのためにしっかり守ってあげなきゃいけないなどのルールも存在している。


「トモナリ君はサポートとして連れてく」


「えっ、俺ですか?」


 外で大人しくテントでも立ててようと思っていたトモナリのことをフウカが推薦する。


「……そうかではヤナギのチームにはアイゼンがサポートにつくように」


 トモナリがいいのかと問いかけるような視線をテルに向けたけれど、テルは困ったように笑ってフウカの推薦を受け入れた。

 テルが部長であるけれども課外活動部の中で一番強いのはフウカである。


 フウカが部長を嫌がったからそうしたことも得意なテルが部長をやっているのだ。

 普段からフウカがわがままを言うことはないが時としてしっかりとした主張をすることがあり、そうなるとテルも弱いのである。


「それじゃあもう一人誰か中に入ってのサポートをしたい人はいるかい?」


 一人はトモナリで決定してしまった。

 フウカは満足げに微笑んでいて、テルは一年生を見回す。


「……えっ、僕?」


「おっ、ミナミ君やってくれるか?」


「えっ、あの、えっ……あ、はい……」


 外も外でやることがあるとはいってもやはり外の方が楽ではある。

 みんなサポートなら外の方がいいなと黙っていたのだが、声を出してしまったマコトがテルに目をつけられた。


 なぜ声を出してしまったのか。

 それはトモナリがジッとマコトのことを見ていたからだった。


 嫌ですとも言えない。

 仕方なくマコトはサポート役を引き受けた。


「なんで僕なの?」


 攻略の計画についてテルが主導して話し合って決めた。

 攻略そのものは次の日なので解散となって各々部屋に戻ろうとしていた。


 マコトがトモナリに近づいてどうして自分のことを見ていたのか問い詰める。


「戦わなくても経験値は入るからな」


 マコトはほんの少しトモナリたち特進クラスと合流するのが遅かった。

 そのためにちょっとだけレベルの上がりが遅い。


 もはや気にするような差もないが、こうした機会には差を埋めるチャンスとなる。

 戦わずともサポートとして同行するだけで経験値が入る。


 レベルアップできるほどではないだろうけど、戦いを見学する経験とレベルアップのための経験値はマコトの差を埋めてくれるだろう。


「うぅ……」


 ちゃんと考えてのことだった。

 マコトのためを思ってのことなので反論することもできずにマコトは小さくうなる。


「マコトも犠牲……サポートとしてがんばれよ」


「今犠牲って言わなかった?」


「気のせいだ」


「気のせいじゃないよー!」


「まあいいじゃないか。外いたって暇なだけだ」


「はぁ……やるなら頑張るけどさ」


 暇な方がいいなとマコトは思う。

 けれどももう逃げられないのでサポートを頑張る方向で思考を切り替えようと努力するのであった。


 ーーーーー


「みんな準備はいいかい?」


 ゲートの前でテルが最終確認を行う。

 二、三年生のみならず万が一に備えて一年生も装備を身につけている。


 加えてトモナリとマコトはサポートのために大きなリュックを背負っている。

 見た目ほどのものは入っていないがサポートの荷物持ちとして大きな容量のリュックは必需品なのだ。


「準備万端なのだ!」


 ヒカリもヘルムをかぶってやる気満々である。

 油断するとフウカに捕まるのでヒカリはフウカを避けるように警戒している。


「一番最初は僕が入って安全を確認する。それから攻略開始だ」


 事前に中の状況は分かっているが、何かのきっかけで環境が変わる可能性やモンスターが待ち受けている可能性も排除できるものではない。

 タンクでもあるテルが最初に入って中の様子を確かめる。


 テルがゲートの中に消えていって、程なくしてまた出てくる。


「安全は確認できた。中に入ろう」


「みんな頑張ってくださいねー!」


 幸い今回ゲート周りに危険なことはなかったようである。

 サポートであるトモナリとマコトは一番後ろからゲートに入る。


 ゲートの中は事前に聞いていた通りの森の中である。


「信号を設置するぞ」


 今時技術も進歩している。

 周りの変化に乏しい環境の中ではゲートの位置が分からなくなってしまうこともある。


 そうならないために色々な対策が編み出されてきた。

 今主流なのは信号を発する機械を使うことである。


 地面に埋め込むものでモンスターにもバレにくく専用の端末を使えばゲートの方角と距離が分かるようになっている。


「向こうの木の方を北側として固定しよう」


 端末を操作して仮の北側を決める。


「ゲート地点から北をAチーム、南をBチームで攻略していこう。時間は昼までの四時間。四時間後一度ゲートに集合だ」


 流石にテルは慣れているなとトモナリも感心してしまう。

 ベテラン覚醒者みたいに進めていく。

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