「今回レベル上がればセカンドスキルも解放できますね」
「まあでも今回一年はサポートだからな」
本来課外活動部での活動においてこの時期の一年生は二、三年生のサポートを任される。
トモナリのレベルを見ればもはやサポートなんて枠に収まらないことは確実だが、夏休みの最初に行ったNo.10ゲートでは二、三年生がサポートだった。
なので今回はトモナリも大人しくサポートに徹しようと思う。
「まあ、私が卒業する前にもっと強くなってくれると嬉しいな」
フウカは無表情のままジッとトモナリのことを見ている。
抱えられたヒカリはなんとか抜け出そうともがいているけれど厳しそうだ。
ヒカリがどうにかフウカの腕の中から脱出に成功した頃になると残りのみんなも集まってきた。
「ういっす!」
「うっす」
相変わらずのユウトはトモナリとハイタッチで挨拶を交わす。
「みんな集まっているな」
マサヨシがミクと共にやってきた。
「まずはホテルに行って荷物を置き、ミーティングを行う」
タクシーを使ってみんなでホテルに移動する。
意外と良いホテルでトモナリはユウト、マコト、コウと一緒の部屋であった。
とりあえず荷物だけ部屋に置いてホテルで貸し出している会議室に集まる。
「それではミーティングを始めます」
会議室にはスクリーンがあって画像が映し出されている。
まず映し出されたのは地図だった。
ミーティングを主導して説明をしてくれるのはミクである。
「今回攻略するゲートはこの町から二時間ほど行ったところにある湖のほとりに発生したものです。ダンジョン階数は一階、ダンジョンの難易度はE+……Dに近いと思われます」
次に映し出されたのはダンジョンの情報だった。
ダンジョン前で見られるダンジョン情報のステータス表示に似た形で書いてある。
「最大入場数は三十人。問題ないでしょう。入場条件はレベル10以上、60以下となっています。攻略を行う人の中で引っかかっている人はいません。そして攻略条件ですが全てのモンスターを倒せとなっています」
基本的に入場条件や最大入場数は厳しくないことの方が多い。
どういう基準で設定されているのか分からないけれど、今回のゲートは入る条件として全く厳しくなかった。
つまり全員普通に入れるということである。
「事前調査で確認されたモンスターはレオンコボルトです」
映し出された画像がモンスターのものに変わる。
コボルトといえば犬頭人身、犬のような頭を持った二足歩行のモンスターである。
普通のコボルトならF級相当の弱いモンスターであるけれど、今回発見されたモンスターは正確にはコボルトではない。
レオンコボルトはまるで獅子のような立髪を持っている。
故にライオンを表すレオンとついているのだ。
顔立ちもコボルトは犬っぽいがレオンコボルトはやや猫っぽい。
能力もコボルトより強い。
コボルトだからなんて名前だけで油断すると痛い目を見ることになる。
「ただ気をつけてください。全てのモンスターを倒せとなっているので他のモンスターやボスモンスターが出てくる可能性があります」
レオンコボルトを全て倒せではなく全てのモンスターを倒せとなっている以上他のモンスターの存在も考慮に入れるべきである。
事前にゲート情報を見てこうした予想をしておけばレオンコボルト以外のモンスターが現れても驚くことなく対処することができるのだ。
「レオンコボルトは食用になりませんし素材として有用なところがありません。魔石だけ回収して死体はそのままでも大丈夫です」
モンスターの回収もゲート攻略には重要な要素である。
今回のレオンコボルトは素材として利用されないので死体を持ち帰る必要はなく魔石だけ取り出して持ってくればいい。
「そして肝心のゲート内の環境ですが森林となります。鬱蒼とした密林ではなく明るめでやや視界が確保できる森となります。ですが木々が多いので奇襲には十分気をつけてください。説明は以上です。何か質問等はありますか?」
一通り説明を終えたミクがみんなのことを見回す。
無駄のない説明だった。
トモナリも聞くことはない。
「質問がないようでしたら攻略計画について皆さんで話し合ってください」
何かもをやってもらうわけではなく、実際の攻略は生徒に任されている。
どうゲートを攻略していくのか、それは自分たちで決めるのだ。
「それじゃあまず……攻略メンバーは二、三年生で構わないね?」
部長であるテルが場をリードする。
従来通りに攻略のメインメンバーは二、三年生で編成することにした。
戦力や職業を勘案し、攻略の効率を上げるために二つのグループに分ける。
「一年は外で準備組と中でサポート組に別れよう」
全員が中に入って攻略すればいいというわけではない。
外は外ですることもある。
中で攻略する人たちがいつ出てきてもいいように出迎える準備が必要だ。
近くに町がないならテントなどを張って食事の用意をしたり、着替えやタオルなどをすぐに渡せるようにしておいたりもする。
他にも他人がゲートに近づかないようにしたりゲートがブレイクを起こしてモンスターが出てきた時に対処したりと外だからと決して気を抜いていていいわけでもないのだ。