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二つ目のスキル7

「トモナリ? いかないのだ?」


「もちろん行くさ」


 トモナリは投げるように置いたサポート用のリュックをゆっくりと拾い上げる。

 もう他のみんなは北の方に向かっていて、ヒカリは不思議そうにさっさと動かないトモナリを見ている。


「ふふ……」


 トモナリはパチンと指を鳴らした。

 そして先に行ったみんなのことを追いかけ始めた。


「……むむむ? まあいいのだ」


 ヒカリはトモナリの行動に一度首を傾げたけれど、トモナリの行動には何か意味があるとすぐに追いかけて背中にしがみついた。


 ーーーーー


「だいじょぶそう」


「まあAチームも強いからな。こっちはお前やフクロウもいたし殲滅力が高かったってだけだな」


 BチームがAチームを見つけてみると、Aチームも危なげなく戦いを続けていた。

 Bチームの方がレオンコボルトを倒すのが早かったのはフウカやカエデという広範囲の攻撃も得意とする攻撃力の高い覚醒者がいたからである。


 一方でAチームはテルを始めとして防御力もある編成だったので確実にレオンコボルトの数を減らしていた。

 Bチームがついた時にはもう残り20匹で助けに入るまでもなかった。


「マコトも戦えてるじゃないか」


 Aチームの方も流石にマコトをサポーターとして守っている余裕まではなかったようで、マコトもリュックを下ろして戦っていた。

 邪魔にならないように必死に立ち回ってレオンコボルトを倒している。


 二、三年生に混じりながらも上手く動けている。

 自信のなさがマコトの弱点であり、もっと自分の能力に自信を持てばもっと強くなれるはずだとトモナリは思っていた。


「ハァッ!」


『ゲートが攻略されました!

 間も無くゲートの崩壊が始まります!

 残り00:10』


 テルが最後のレオンコボルトを切り裂いた。

 どうやらボスはBチームに現れた一体だけのようで、Aチームの方には最後までボスは出現しなかった。


 最後のレオンコボルトを倒した瞬間表示が現れた。

 モンスターウェーブのモンスターを全て倒すことで攻略を終えたようである。


「テル!」


「見てたなら助けてくれてもいいんじゃないかな?」


「その必要なさそうだったからな」


 Bチームはモンスターを倒し終えたAチームに近づく。

 テルはタンクとして多くのレオンコボルトを引きつけながら戦っていた。


 リーダーとしてもみんなを率いるために引くわけにもいかずテルの消耗は大きく、肩で息をして汗だくになっていた。

 Bチームの三年生がテルにタオルを投げ渡して他のみんなの具合を確かめる。


「疲れはあるようだけど怪我はないな」


「後十分。みんなインベントリにモンスター入れて外に出るよ」


 ひとまず大きな怪我をしている人はいない。

 ただ疲れているところ悪いが余裕もない。


 ゲートが攻略されたことによりクローズする時間が迫っている。

 今回のゲートは閉じてしまうまでの時間が十分しかなくかなり短かった。


 十分以内にゲートから出なければならないのだ。

 この際解体なんてしている場合じゃない。


 みんなはできるだけレオンコボルトをインベントリに詰め込んでゲートに向かう。

 インベントリの容量は個人によって違うが、150のレオンコボルトでも一人当たり10も詰め込めれば持っていけるので分担して持っていくことができた。


「みんないるな? 忘れ物や落としたもの……何か残してしまったものはないか今一度確認するんだ」


 ゲート前までやってきて一度立ち止まる。

 まだ五分残っているので荷物を確認する。


 時々投げナイフを回収し忘れたとか後で取りに戻るつもりの素材を置いてきたなんてことが発生することもある。

 ゲートを出る前に忘れ物がないか確認することは大切なのだ。


「大丈夫そうだな。じゃあゲートを出るぞ」


 みんなが大丈夫そうなことを確認してゲートを出る。


「あっ、出てきた」


 サポートとして待っていた一年生のみんなは想定していたよりも二、三年生が戻ってくるのが早くて驚いていた。


「攻略終了しました」


「思っていたよりも早かったな」


 待っていたマサヨシも少し驚いたようだった。

 テルの性格なら慎重に攻略を進めるはずなのでこんなに早く終わるとは思っていなかった。


「中でモンスターウェーブが起こったのです。そのために早く終わりました」


 テルが簡単にゲートの攻略について報告する。


「なるほどな……そうしたことがあったのなら早くてもしょうがないな」


「一年! モンスターの解体をお願いするよ」


 中で解体できなかったモンスターは外で解体する。

 売れるモンスターならそのまま持ち帰って売ることもあるが、今回は経験も兼ねて一年生が持ち帰ったモンスターを解体することになった。


「こうなるとボスモンスターを持って帰れなかったのは少し痛いかもな」


 お金は目的でないがやはり持ち帰るものは持ち帰りたい。

 ボスモンスターの魔石は通常モンスターよりも価値が高いので持って帰りたかったところである。


「あっ、それなら」


 トモナリは自分のインベントリの中からボスレオンコボルトの死体を取り出した。


「あの状況で持ってきたのか?」


「実は……全部持ってきたんです」


「えっ!?」


 Bチームとして倒したレオンコボルトを実はトモナリが全部インベントリに入れて持ってきていた。

 あの状況では誰のインベントリに余裕があって入れられるかなんて考える暇がなかったのでモンスターの死体は無視したが、トモナリのインベントリの容量はかなり大きくてその場にあった死体全ても収納できた。


 だからこっそりと持ってきていたのだ。

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