目次
ブックマーク
応援する
いいね!
コメント
シェア
通報

二つ目のスキル6

「それじゃあ先輩、俺が守るんで魔法をお願いしますよ」


「周りは任せたよ」


 やはり対多数における殲滅力が高い攻撃といえば魔法である。

 カエデは風の魔法を得意とする。


 本来風は目に見えないが魔法で発生した風は魔力の影響を受けてうっすらと緑色に見える。

 カエデの周りをエメラルドグリーンの風が渦巻く。


 周りの状況を確認して魔法を放つことができる場所を素早く把握する。


「ヒカリ、帰ってこい!」


「ダハハー! 分かったのだー!」


 トモナリはヒカリを呼び戻す。

 カエデが魔法を放つなら敵の中をビュンビュン飛び回るヒカリが邪魔になる。


「いい判断ね!」


 カエデが魔法を発動させる。

 レオンコボルトも気にしないようなつむじ風が巻き起こる。


 しかしつむじ風は瞬く間に大きさを増していき、レオンコボルトを巻き上げるサイクロンとなる。


「おおっ……!」


 迫るレオンコボルトを切り捨てながらトモナリはカエデの魔法に感心してしまう。

 広範囲の魔法はコントロールも難しい。


 カエデは魔法を発動させるだけでなくしっかりと魔法をコントロールしている。


「できるだけ早く終わらせてAチームと合流するぞ!」


 決してBチームと比較してAチームが劣るとは思わないが何があるか分からないのが戦いである。

 できるならレオンコボルトを倒して合流して安全を確保することも大切な考えだ。


 それぞれスキルを発動させて戦う。

 トモナリは発動させるようなスキルはないのでヒカリと連携を取りつつレオンコボルトを倒す。


「サードスキル……シャドーブレード」


 フウカが闇の斬撃を飛ばす。

 まとめてレオンコボルトが真っ二つになって一気に数が減る。


 最初こそ減っていないようにも感じられたレオンコボルトであったが、だんだん目に見えて数が減ってきた。


「この調子ならAチームの方とも合流できそうですね」


「あっ、バカ! そういうこと口に出すと……」


『レオンコボルトたちの王が出現しました!』


「ほらね……」


 トモナリは別にフラグを立てたつもりじゃなかったのだけど、どうにもこのゲートは声を聞いているように反応する。

 トモナリたちの前に表示が現れてカエデはため息をついた。


「なんかデカいの来たのだ!」


 空を飛んで状況を見ていたヒカリがトモナリのところに飛んできた。

 ヒカリの尻尾が指している方を見ると森の木々の間を何か大きなものが駆け抜けていた。


「来るなら来てみろ!」


 森の中から現れたのは巨大なレオンコボルトであった。

 表示からするとレオンコボルトの王、つまりはキングレオンコボルトだろう。


 キングレオンコボルトに一番近いのはタケルだった。

 タケルは拳を構えてキングレオンコボルトを待ち構える。


「オラっ!」


 キングレオンコボルトは武器を持たずタケルに向かって取りかかると爪を振り下ろした。

 タケルはサイドステップで爪をかわすと拳をキングレオンコボルトの腹に叩き込んだ。


 普通のレオンコボルトなら骨が砕けて内臓にも大きなダメージが入る一撃である。


「おっと!」


 けれどもキングレオンコボルトはなんともないように反撃を繰り出した。


「へっ、なかなかやるじゃないか!」


「ヤマザト、下がって」


「えっ、あ……はい」


 キングレオンコボルトのさらなる攻撃をフウカの闇の魔力が受け止めた。


「チェ……」


 自分でもやれるのになと思いながらも今は迅速さと安全に戦うことが求められるのはタケルも理解していた。


「流石E+だね」


 フウカの闇の魔力が作り出した二本の腕とキングレオンコボルトの腕とで押し合いになる。

 わずかに押されているのはキングレオンコボルトの方だ。


「でもごめんね。さっさと終わらせるから。セカンドスキル:闇の支配者」


 フウカがスキルを発動させる。

 闇の腕が一回り大きくなりキングレオンコボルトの方が明らかに押され始めた。


 キングレオンコボルトが牙を剥き出しにして抵抗しようとするけれど上から押さえつけられるような感じにまでなってしまった。


「えいっ」


 闇の腕がギュルンと回転した。

 魔法で作られた闇の腕にはなんともなくともキングレオンコボルトの腕はそんなに回転するものじゃない。


 骨が砕ける音がしてキングレオンコボルトの腕がねじれる。


「そしてえいっ」


 腕がねじ砕かれた痛みに叫ぶよりも早くフウカはキングレオンコボルトの腕を引きちぎった。


「バイバイ」


 フウカの闇の腕の一本がキングレオンコボルトの胴体を掴み、もう一本の腕が頭を掴んだ。

 ゴキンと音が音がしてキングレオンコボルトの首が逆方向を向いた。


 フウカの闇の腕によって首の骨が折られたキングレオンコボルトはゆっくりと倒れる。


「終わり」


「圧倒的だな……」


 E+級のボスモンスターならD級の下の方にも匹敵するボスだろう。

 にもかかわらずフウカは圧倒的な力で危なげなくキングレオンコボルトを倒してしまった。


 強いとは分かっていたけど想像よりも能力が高そうである。


「これで最後なのだー!」


 ヒカリが最後のレオンコボルトを切り裂いて倒す。


「モンスターの魔石を回収する時間はないからこのままAチームの方に向かうよ」


 幸い怪我人もなくすぐに動ける状態だった。

 表示を確認するとまだあと50匹ほどレオンコボルトが残っているのでAチームはまだ戦っていることが分かる。

この作品に、最初のコメントを書いてみませんか?