「……えっ、みんなも?」
トモナリが訓練室に移動するとユウトたちだけでなくフウカをはじめとしてみんながゾロゾロとついてくる。
ユウトたちだけだと思っていたトモナリは驚く。
「お前のセカンドスキルは気になるからな」
「良いものを手に入れる可能性が高いっていうなら尚更気になるでしょう?」
レイジやカエデもトモナリがどんな力を手に入れるのか興味があった。
「アイゼン」
「おっと、ありがとうございます」
マサヨシがインベントリから箱を取り出してトモナリに投げ渡した。
トモナリが箱を開けてみると三つの魔石が入っていた。
「B級の魔石だ」
「本当にいいんですか?」
「もちろんだ。持っていたが使わなかったしな」
トモナリはスキルを解放するにあたってマサヨシにお願いをしていた。
モンスターの死体、魔石、あるいは使わないアーティファクトなどあればスキル解放に使いたいと。
マサヨシは快諾してくれて、多少足しになるような魔石でもあればいいと思っていたのにまさかB級の魔石を貰えるだなんて思ってもいなかった。
B級の魔石を捧げられるなら確率変動を起こせる可能性も高まる。
確率変動までいかなくとも良いスキルを手に入れられる確率も高くなるだろう。
回帰前は万年貧乏で弱い覚醒者だったのでスキルのために何かを捧げる余裕なんてなかった。
あの時に初めて見た確率変動とやらをまた引き起こせるかもそれないと期待もできる。
「回帰前はEXスキルなんてものも出たな」
EXスキルというものはトモナリでも知らないものだった。
こうして過去に戻ってきて調べてみたけれどトモナリが調べられる限りではEXスキルの情報はなかった。
確率変動を起こせばまたEXスキルを手に入れられるかもしれない。
トモナリはもらった魔石をインベントリに入れる。
「えーと魔石、モンスターの死体を投入してランダムスキル抽選っと」
トモナリはインベントリのウィンドウを表示させて投入するものを選ぶ。
マサヨシからもらった魔石、レオンコボルトの死体、それだけではなくトモナリ個人が持っている魔石も投入する。
トモナリは覚醒者協会に協力する見返りとしてお金以外に魔石やモンスター素材を要求していた。
この時のためにコツコツと溜めてきた。
『ランダムスキルの抽選を行います』
スキルにも分類がある。
分類する人によって多少の違いはあるけれど攻撃、防御、支援、特殊の四つが基本で、それに加えて職業によるスキル、スキルのためのスキルがある。
攻撃スキルは文字通り攻撃に関するスキルだが、単に攻撃するだけでなく自分の能力を上げるスキルも攻撃スキルに分類される。
ユウトの二連撃やフウカのサードスキルであるシャドーブレードなんかはわかりやすい攻撃スキルであるが、レイジの迅雷加速やタケルの拳闘之体も能力アップ系の攻撃スキルとなる。
防御スキルはそのまんま防御に関するスキルである。
サーシャの光の加護、テルの絶対防御が防御スキルとなっている。
支援スキルは周りにいる仲間に対して適応されるスキルで仲間の能力を上げたり状態異常に対する免疫をつけたりする。
あまり支援系のスキルに覚醒する人は多くなく珍しいスキルなのである。
治療系も支援スキルに分類されている。
そして特殊スキルは三つの枠に当てはまらないもののことを指す。
トモナリの魂の契約もそうであるしマコトのインザシャドウ、フウカの闇をまとうファーストスキルも特殊スキルだ。
そして特殊スキルであると同時にトモナリのスキルは職業スキルでもある。
特定の職業にしか出てこないスキルで、おそらくフウカのファーストスキルも職業スキルであるとトモナリは思っている。
最後にスキルのためのスキルとはスキルの効果を向上させたり、あるいは他のスキルがあることを前提としたスキルのことをいう。
フウカのセカンドスキルは魔力の消費が激しくなる代わりにファーストスキルを強化する効果を持っている。
職業スキルもスキルのためのスキルも四つの類型に当てはめることもできるので、この二つを別枠にしない考え方も存在している。
『スキルの抽選が終わりました!』
「……確率変動は起こらなかったか」
確率変動が起こることなくスキルの抽選が終わってしまった。
残念だとトモナリは目を細める。
『スキルドラゴンズコネクトを獲得しました!』
「ドラゴンズコネクト……」
見慣れないスキルであるとトモナリは思った。
ドラゴンとついていることから職業スキルの可能性が高い。
トモナリはステータス表示を開く。
『力:83
素早さ:87
体力:82
魔力:79
器用さ:86
運:58』
まず目に入るのは自分の能力値である。
No.10ゲートのおかげで各能力値が大幅に向上した。
一般的なレベル20ではとてもじゃないが太刀打ちできない能力値である。
ただNo.10ゲートにおいては能力値が倍になるという恩恵があった。
レベルそのものはゲートに入った時の倍になっているが、能力値は倍になった時に及ばないのでやっぱり能力値が倍になるという効果はかなり大きかったのである。