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ギルド研修付き添い2

「他には……クロハ先輩も……」


 テルもトモナリを付き添いに指名していた。

 リーダー的な立ち回りをしているトモナリのことは現在部長として活動しているテルも目をかけていた。


「八菱重工業覚醒者チームか」


 覚醒者ギルドの中には覚醒者ギルドとして独立しておらず、企業の中の一部署のような形で覚醒者チームが運用されているところもある。

 企業の力を後ろ盾にしているので規模が大きく、強い資金力を持って活動しているような企業ギルドも少なくはない。


 中でも八菱重工業の覚醒者チームはトップクラスの覚醒者ギルドと同じくらいの規模を誇る。

 八菱重工業そのものが世界に誇れる大企業であるし、研修先としてもかなりいいところである。


 ついでに企業系覚醒者ギルドは覚醒者を引退した後もそのまま企業に所属できたりということもあるので卒業後の進路としても人気が高い。

 そんなところに一番目に研修に行けるのだからテルも高く評価されていることの証左である。


「ご指名ありはどーよぅー?」


「悩みどころだな」


 ユウトがトモナリの肩に腕を回して指名者が書かれたプリントを覗き込む。

 フウカとテル以外にも数人、トモナリを指名してくれている人がいた。


 知らない人たちであるがどこの人も行き先は割と良いところだ。

 誰かからトモナリのことを聞いて指名したのかもしれない。


 あまり知らない人の付き添いに行くつもりはないが、良いなと思う研修先もある。


「さすが人気者は違うなぁ〜」


「ふふん、トモナリはすごいから当然なのだ!」


 ヒカリがドヤ顔で胸を張る。

 トモナリが褒められるとヒカリも嬉しい。


「まあお前の人気もあるかもしれないがな」


 トモナリは膝に座るヒカリを撫でる。

 多くの指名があったのはトモナリの実力の高さもあるが、ヒカリという存在も大きいかもしれない。


 今やドラゴンを連れた覚醒者であるトモナリはアカデミーの中では知らない人はいないぐらいになっている。

 しかしながらヒカリの存在は割とベールに包まれていた。


 なぜならトモナリがあまり外に出ないから。

 仲間たちといれば食堂に行くこともあるが、ヒカリが結構量も食べるので寮で宅配してもらうことも多い。


 後はトレーニングするぐらいで、特進クラスは他のクラスと関わることも少ない。

 三年生はより実戦的な戦いを始めるし一年生との関わりは薄く、こうなるとヒカリのことを意外と見かけないなんてことになる。


 もしかしたらヒカリに会いたくて指名した可能性もあるのだ。


「どこに行くつもりなんだ?」


「まあどこでもいい……だから知ってるヤナギ先輩かクロハ先輩のところかな」


 実力を買ってくれているのか、ヒカリが目的か、冷やかしか。

 何が目的か分からない以上は知らない先輩たちの誰が良いかなど判断しようもない。


 ならば知り合いか、指名を避けるか、行きたいギルドに行くかである。

 特にどこのギルドでもいいかなと考えているトモナリは今後の関係性も考えて指名を受けてしまおうかと思っていた。


 フウカがいく五十嵐ギルドもテルがいく八菱重工業覚醒者チームも最上位に良いところだ。

 どちらに行っても間違いはない。


「俺なら……ヤナギ先輩かな」


「なんでだ?」


「ヤナギ先輩がいいっていうより……クロハ先輩は……めんどくさそう」


「はは、なるほどな」


 ユウトがわざとらしく肩をすくめた。

 テルは悪い人ではない。


 ただし若干面倒な人ではある。

 良く言うなれば几帳面なのである。


 周りを良く見ていてみんなをまとめ上げる能力があるのだが、それは基本的にテルが几帳面であるという性格も大きく寄与している。

 悪く言ってしまえば細かいところがあるのだ。


 細かいことにも口出しして、部室が常にキレイなのもテルが目を光らせているからだった。

 対して副部長でもあるフウカは緩い。


 大雑把な性格をしていて細かいことは気にしない。

 よくテルに怒られているのもフウカであるのだが、フウカは怒られても一切気にしない人である。


 テルに付き添えば全部自分でやるのでそこの苦労は少ないかもしれない。

 ただし細かなことで色々と言われたり怒られたりする可能性がある。


 一方でフウカの方は身の回りの世話をしなければいけない可能性はあるけれど、何かを言われることはテルに比べて少ないだろう。

 むしろ何も言われないぐらいのことありうる。


 どっちがいいかとユウトが考えた結果、ユウトの場合は雑なところも多いのでテルについていくと苦労しそうだと判断したのだ。

 言わんとしていることはトモナリにも分かった。


「どっちがいいかね……迷うな」


「俺はどこがいいと思う? できるなら緩いところがいいよな〜」


 ーーーーー


「トモナリィ〜どおしてぇ〜」


「すまないな、ヒカリ……」


「ん、ヒカリちゃんは私が持ってる」


 結局トモナリはフウカを選んだ。

 別にユウトの意見に左右されたわけではなく、トモナリなりの考えがあってのことだった。


 フウカはトモナリだけでなくヒカリのことも気に入っている。

 何かとヒカリのことを抱きかかえようとするのでヒカリはフウカのことが苦手らしいが、残念ながらヒカリもフウカから逃げるほどの力はない。


 だから捕まって抱きかかえられたら諦めるしかない。

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