「どうしてこうなるんだ……」
僕は一人そう呟く。
あのロランという男、あいつは一体何者なんだ?
神玉を取り込んだ?
それにあの魔法は一体……。
僕はそんなことを考えていると、横でアリスが口を開く。
「あれは恐らく炎書よ」
「炎書? それってあの有名な魔法書か?」
炎書とは、先人の魔法使い達が残した書物だ。
だがその本は誰も手に入れることが出来ないと言われている。
「元々炎書は『火の賢者』が所持していた魔法書よ。それをあのロランが所有しているんだわ」
アリスは焦ったような、悔しそうな声を上げる。
「くそ、神玉も持っていかれてしまったし……」
神玉は今後魔王との戦いで、重要な武器になるはずだ。
その神玉がロランの手元に渡ってしまったのはかなりマズイ。
そう思っているとアリスはため息混じりに呟く。
「もうこのダンジョンに用はないわ。帰りましょう」
「分かった、それじゃあ転移石を使って帰ろう」
「何を言っているの?」
するとアリスは目を見開いて、驚いている。
僕は今、何かおかしいことを言ってしまっただろうか?
だがその考えはすぐに消え失せる。
アリスの一言によって。
「転移石は貴重なものなのよ? 歩いて帰るに決まっているわ」
まさかと思い僕は耳を疑った。
いや、確かに原作ではアリスは意外と真面目な性格だった気がする。
「ふざけるな! 神玉が取られたんだぞ!? 早く学園に戻って対策を立てなければ……」
僕はそう言って、転移石を取り出そうとするが、アリスに腕を捕まれてしまう。
そして彼女は冷たい目をして僕に告げる。
「それともここで、死にたいの?」
僕は思わずたじろぐ。
当然だ、僕は今魔力も体力も消耗しきっている。
「しっかり案内しなさいよ」
「わ、分かった」
ここで言い争っていても仕方がないと思い、僕は渋々了承するのだった……。