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第39話 どうしてこうなる!? アデル視点

「どうしてこうなるんだ……」


僕は一人そう呟く。


 あのロランという男、あいつは一体何者なんだ?


 神玉を取り込んだ?


 それにあの魔法は一体……。


僕はそんなことを考えていると、横でアリスが口を開く。


「あれは恐らく炎書よ」


「炎書? それってあの有名な魔法書か?」


炎書とは、先人の魔法使い達が残した書物だ。


だがその本は誰も手に入れることが出来ないと言われている。


「元々炎書は『火の賢者』が所持していた魔法書よ。それをあのロランが所有しているんだわ」


アリスは焦ったような、悔しそうな声を上げる。


「くそ、神玉も持っていかれてしまったし……」


神玉は今後魔王との戦いで、重要な武器になるはずだ。


 その神玉がロランの手元に渡ってしまったのはかなりマズイ。


 そう思っているとアリスはため息混じりに呟く。


「もうこのダンジョンに用はないわ。帰りましょう」


「分かった、それじゃあ転移石を使って帰ろう」


「何を言っているの?」


するとアリスは目を見開いて、驚いている。


 僕は今、何かおかしいことを言ってしまっただろうか?


 だがその考えはすぐに消え失せる。


 アリスの一言によって。


「転移石は貴重なものなのよ? 歩いて帰るに決まっているわ」


まさかと思い僕は耳を疑った。


 いや、確かに原作ではアリスは意外と真面目な性格だった気がする。


「ふざけるな! 神玉が取られたんだぞ!? 早く学園に戻って対策を立てなければ……」


僕はそう言って、転移石を取り出そうとするが、アリスに腕を捕まれてしまう。


そして彼女は冷たい目をして僕に告げる。


「それともここで、死にたいの?」


僕は思わずたじろぐ。


 当然だ、僕は今魔力も体力も消耗しきっている。


「しっかり案内しなさいよ」


「わ、分かった」


 ここで言い争っていても仕方がないと思い、僕は渋々了承するのだった……。

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